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222 親友は最強!(状況説明!)その3

浩二さんと和彦は、千鶴の台詞に言葉もでない状態のようだった。それに構わずに千鶴はこれからのことを言いだした。


「もう一度みんなを呼び出して、きっちり修二を締め上げないとね。それでも麻美の状態が改善されなきゃ、もうあのメンツで集まることは出来ないわよねえ。まあ、それならそれでもいいか。これで心置きなく女子だけで集まれるものね」

「ま、待ってくれ、千鶴。なんだよそれ。もうみんなで集まれないって。なんの冗談だよ」


千鶴が楽し気に話すのを遮るように、和彦が言った。


「麻美にトラウマを植え付けたやつが何をいうのよ。男のことを怖がっているのに、あんたを含めて今までのように集まれるわけないでしょ」


冷たい声でバッサリと切り捨てるように言う千鶴。


「なんでだよ。麻美を怖がらせないように、優しくしたんだぞ」

「だからそれが悪かったのよ。あんたさ、本当に自分が何をしたのかわかってないのよね。いくら麻美を引き止めるためとはいえ、襲うようなことをしたじゃない」

「あれはフリだろ。麻美だってわかっているはずだぞ」

「そうね、わかっているでしょうね。でもね、頭でわかっていたって、心で恐怖を感じたら、フリだとしても実際は強姦されているような気分だったと思うわ」


(たぶん)顔を青くした和彦。


「香滝さん、麻美は俺のことも怖がっているのかい」

「それはないと思うわ。あの時に下平さんに麻美を任せることにした、こいつの判断は正しかったと思うもの」

「それじゃあ先週に震えていたのは? 俺に触れられるのが嫌だったのではないと」

「ええ。これは推測だけど、今日こいつと会うのための勇気を貰っていたんじゃないかしら。本当は一人で話すのではなくて、下平さんにもそばにいてもらいたかったのよ。でも、それを言えなかったから、甘えるようにくっついていたんでしょ」

「それなら言ってくれれば・・・」

「言えないのが麻美なんです。下平さんも何故、半日休みが取れたことを麻美に言わないで、こいつの企みに乗ったりしたんですか。麻美は時間休を取らせたと気にしてましたよ。そんな子が仕事を休ませるお願いなんてできると思います?」

「それはそうだろうけど・・・」

「もしかして麻美の気持ちを疑ってました? それこそ麻美に対する裏切りだわ。麻美はうかつなところがあるけど、気持ちは真直ぐよ。余所見なんかしないわよ」


またしばらく誰の声も聞こえなかった。


「まあ一応麻美からこのことは任されたから、なんでこうなったのか話すけど、私も簡単にしか聞いてないからね。いい?」


(たぶん)頷く浩二さんと和彦。


「麻美が最初に違和感に気がついたのは、下平さんとのクリスマスデートの時だったそうよ。男性とすれ違う時に必要以上に肩に力が入ったみたいで、家に帰ってから疲れてぐったりしたと言っていたわ。そのあと、年末の買い物でスーパーに行った時にも同じようになったみたいなのよ。そこでもしかしたら『自分は男性が苦手になってしまったのではないか』と、考えたのね。麻美は困ったそうよ。年が明けて二日の日には下平家の親戚に挨拶に行くのに、苦手になったから行きたくないなんて言えないでしょ。そこで苦肉の策として、着物を着るときにきつめに紐を締めてもらうことにしたんだって。従姉さんが美容師をしていたから、お願いをしたそうなの。従姉さんも快く了承してくれたそうで、手際よく着つけてくれたのね。ただ親戚の人達と会った時にわからなかったみたいなのよ。初めて会う方たちばかりだったでしょう。普通に考えれば緊張するわけじゃない。だから、男性のことが苦手になったのかどうか、確証が持てなかったようよ」


ここでため息を吐き出した千鶴。


「それでね、次は和彦とのことをどうにかしようと考えたわけよね。あんたもさっき言ったけど、麻美のことを避けたわけでしょう。よくわかんないけど、麻美は親戚としてのつき合いを希望していたって言ったのよ。友人としてのつき合いは無くなっても構わないような口ぶりだったわ。だから逃げれない状況を作って話しあいに持ち込んだのよ。時間がなくてその時の様子は詳細には聞けなかったけど、とにかく和彦が姑息な手を使って下平さんを味方につけたことが気に食わなかったようね」

「姑息なって、それは」


和彦がすかさず反応をして言葉を挟もうとした。


「だから和彦、私が話し終わってからにしてよ。私は麻美から聞いたことを話しているんだからさ。異論はあとで聞くわよ。でもねえ、本当に麻美の気持ちを考えなさいよ。どれだけの勇気を振り絞ったかわかる。私だってそんなことがあったと知っていたら、和彦と二人きりにはさせなかったわ。後、私が言いたいのは、昨日の夜麻美から電話が来て、今日の午後にうちに来れないかと言われたの。前日だし急には休めないと答えたら、不安そうな声で『そうだよね。急にごめん』なんて言うじゃない。何があるのだろうと聞いたら、『和彦と会って話す』とだけ言ったのよ。これは何かがあったんだと思って『時間休取って早めに行くから』と言ったら『ありがとう』って、安堵したような声をだしたのよ。だから、私は今日の夕方に麻美から聞くまで、何があったか知らなかったわ」


またしばし沈黙が続いた。


「本当にねえ、シャレにならないんだけど。で、どうするつもりなのよ。これで結婚を取りやめになったら、どう責任を取るつもりなわけ?」


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