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216 憤慨した私は・・・浩二さんと喧嘩になりました

「その態度が馬鹿にしているんだってば! おかしいと思っていたのよね。和彦があんなことを言うわけないじゃない。あれって私に揺さぶりをかけて動揺させようとしたんでしょ。その私の様子を浩二さんに見せて、私がチョロいかチョロくないかの賭けでもしてたのね」

「そんなことするわけないだろう。麻美の考え過ぎだって」

「そうだよ、麻美。賭けなんてするわけがないよ。純粋に麻美のことが心配だったんだ」


浩二さんの言葉に私は下唇を噛んで、上目遣いに睨んだ。浩二さんは宥めるように私の頭をポンポンと軽くたたく様に触ってきた。


「そんなに怒るなよ。和彦君と和解したんだろう」


のんきな浩二さんの台詞に、気がつくと私は頭の上にあった浩二さんの手を振り払っていた。


「わかってない。わかってないわよ、浩二さん。私が何に対して憤っているのかを」

「憤ってって。麻美は俺が和彦君との話を盗み聞きするようなことをしたから、怒っているんだろう」

「それに対しては怒ってないわよ。さっきも言ったけど、浩二さんが早く来れたのなら一緒に和彦との話を聞いて欲しかったもの」


浩二さんのことを私はじっと見つめた。浩二さんは戸惑ったように私のことを見つめている。その様子にわかってくれないことがじれったくなる。


「えーと、それじゃあ何が麻美の癇に障ったんだい」


ピキリとこめかみに青筋がたったと思う。


「本当にわからないわけ?」


目を細めて浩二さんのことを見たら、浩二さんの顔が引きつってきた。和彦も笑顔から微妙な表情に変わっていた。


「おい、麻美、浩二さんは心配したって言ってんだろ」

「うるさい! 和彦は黙ってろ! ねえ、本当にわからないの、浩二さん?」

「えーと・・・」


私の剣幕に浩二さんは口ごもった。


「そんなに私のことは信用できないんだ」

「信用って、大げさな」

「口を挟むな! 和彦!」


和彦は私の怒りの矛先を自分の方に向けようと口を挟んでくるけど、私は一言で黙らせた。その様子に浩二さんの眉間にしわがよった。


「そういうけどな、和彦君と二人きりでいるんだぞ。今までのことから情に絆されて、焼け木杭に火じゃないけど、気持ちが揺れることがあるかもしれないじゃないか」

「だからそれが馬鹿にしているというのよ。なんでこいつに絆されなきゃならないのよ。私は迷惑しか掛けられてないって言ったわよね。絆される情なんて持ち合わせてないわ。なんでこいつの口車に乗るのよ。コソコソするなんて、男らしくないわよ」

「男らしくないだって。それじゃあさっきの会話はなんだよ。いかにも和彦君に言い寄られて、気が変わったみたいなことを言っていたじゃないか」

「それは隠れている浩二さんを引っ張りだすための会話よ。本心じゃないわ」

「どうだか! 案外心の底に思っていたから、スラスラと言葉が出てきたんじゃないか」

「スラスラなんて出てきてないわよ。大体浩二さんは和彦のことを気に食わないんじゃなかったの? なんで口車に乗って盗み聞きしたのよ」

「だから、別に口車になんか乗ってないぞ。それにな、おかしいのは麻美の方だろ。あんなことがあって、なんで平気で和彦君と会えるんだ。親戚、親戚って、親戚であることを口実にしてもそばにいたいのかと勘繰ったって、可笑しかないだろう!」


お互いの言葉にヒートアップして、浩二さんの本音が漏れてきた。私は拳を握ってうつむいた。


「浩二さんはそんな風に思っていたんだ。私、言ったよね。こいつのことはどうでもいいけど、克義おじさんにいい顔をしたいって。その言葉を忘れちゃったんだ」

「あっ」


浩二さんが小さく声をあげた。私は顔をあげて正面から浩二さんのことを睨みつけた。


「よーくわかったわ。浩二さんは私の言葉なんて聞いてくれてないのね。それに私より男同士のほうがいいんでしょ。私は行くから、二人で仲良く話でもしてればいいじゃない!」


そう言ってこたつから出て立ち上がろうとしたら、浩二さんに手を取られた。


「麻美、悪かった。話を聞いてなかったわけじゃないんだよ。ただ和彦君のことを親戚として大事にしたいというのが、彼のおじさんと結びつかなかっただけなんだ」

「結びつかないって……。浩二さんだっておじいさんの親戚のところに行っているじゃない。それと一緒よ」

「一緒なもんか。うちは所詮出た家なんだ。本家の大変さなんか、わかっているようでわかってないよ。せいぜい付き合いが多くて大変なんだと思うくらいだったんだ。沢木家の親戚がこんなに多いとは思わなかったんだ」


浩二さんは私が書いた系図に視線を落として言った。その様子に浩二さんに悪気がないことがわかった。


そうよね。やはりうちみたいに本家と呼ばれる家で育ってないと、わからないわよね。


私は言い過ぎたと謝ろうと口を開こうとした。


「だけどさ、解れってほうが無理だろ。立場が違うんだからさ。麻美も大げさに考えすぎだろ。これがずっと続くわけじゃないんだし。時代も今は平成なんだしさ。そのうち付き合いも簡略化するかもしれないだろう」


のんきな和彦の言い分に下がった眦が、上がっていくのがわかりました。


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