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215 悪友との話の行方は・・・

叩かれた頭をさすりながら和彦は言った。


(いて)ーな。怒るなって言っただろう」

「怒らないわけないでしょうが! あんたさ、私のことをバカにするのもいい加減にしてよね」


ガタッ


部屋の外から小さな物音がした。和彦にも聞こえたようで、思わず顔を見合わせた。けど、そのことを気にした様子もなく、和彦は言葉を続けた。


「別にバカにしてないだろ。俺の本心を言っただけだからな」


「本心って・・・。そんなこと今更言われたって困るわ」


「なあ、麻美。・・・考えてみてくれる気はないか」


「考えて・・・どうなるの?」


「麻美が考えてくれるのなら・・・説得するから」


「本気?」


「ああ、本気だ。だから麻美、俺と」

「待った、和彦君。麻美は・・・何をしているんだ」


ドアを開けて部屋に飛び込んできた浩二さんは、こたつで向かい合って座っている私達を見て目を瞬いた。


「何って、見てのとおり話し合いだけど?」


私は浩二さんに笑顔を向けた。


そうなのよね。和彦がこの部屋にきてから、部屋の外から時々微かな音が聞こえると言ったのよ。最初は気のせいだと思っていたのに、人がいる気配がすると再度和彦が言ってきたのよね。そうしたらあの物音だもの。


「それよりも、どうして浩二さんがここにいるの? まだ仕事をしているはずよね」


私が笑顔で言ったら、浩二さんは「えーと・・・」と頬を引きつらせたの。


「いや、麻美、どう見ても浩二さんはお前のことを心配していたから、ここにいるんだろう」


私が目をすがめて浩二さんのことを見つめていたら、フォローするように和彦が言葉を挟んできた。


「それはわかっているわよ。ただね、早くうちに来れたのなら、どうしてそのことを私に教えてくれなかったわけ。それなら一緒に和彦と話をしたのに。なんでこそこそと隠れてなんていたのよ」


そう言ったら、浩二さんがチラッと和彦のことを見た。和彦も浩二さんのことを見たので、まるでアイコンタクトをしているみたいだった。


アイコンタクト?


私はピンと勘に触るものがあって、まさかと思った。



先ほど系図を書けと和彦が言い、私が紙に系図を書きだしたら、別の紙に和彦が言葉を書いてきた。それを読んだ私は、系図を書きながら同じように言葉を書き込んだのよ。それがこれ。


『ところで、浩二さんはいるの?』

『いないよ。でも、今日和彦と話すことは伝えてあるよ』

『なあ、こっそり隣の部屋に隠れていることってないか?』

『まさかー。どうやって入るのよ』

『そうだよな。麻美が知らないのっておかしいよな。でも、さっきから人の気配がする気がするんだけど』

『やだ、泥棒?』

『こら、ボケんな。んん? 気のせいかな?』


系図を見せながら説明をしている時にまた和彦が紙に書いてきた。


『やっぱり気配がするけど。なあ、浩二さんじゃないのか』

『違うって。浩二さんはこのあと1時間だけ時間給を取って、少し早めにうちに来ることになっているのよ』

『心配性だな、浩二さんは。というか麻美。本来ならこの状況はやばいだろ』

『やばい? なんで?』

『お前は、婚約中なんだぞ。親戚とはいえ若い男女が二人っきりだろ』

『何をいまさら』


由美子姉さんの関係を話している時に、隣の部屋から音が聞こえた。和彦のことを見たら口に手を当てて少し考えて、こう書いてきた。


『やはり浩二さんがいるだろう』

『ということは父さんが手引きしたのね』


ムッとしながらそう書いたら、和彦がプハッと笑った。そして、ニヤニヤと笑って紙に書いてきた。


『それで、麻美はどうすんだよ』


私は友人が親戚の家のそばの家だったことを話しながら、考えた。隠れて聞いていることが許せなかったから。


『浩二さんを引っ張り出したい。少し芝居に付き合え』


と、書いた。


『芝居って?』

『さっき和彦が言った言葉を使う』


と、書きこんで、私は笑顔を見せた。



そこから、「でもさ、もし、私の気持ちが揺らいだらどうするつもりだったのよ。・・・」という私の言葉から、浩二さんをつり出すつもりで話を振ったのだけど、よーく考えたらおかしいじゃない。


ここにきてからの話の受け答えは、こいつの性格からしたらあり得ないことだ。筆談をしだしてから、浩二さんのことをしつこいくらいに聞いてきたのも、おかしいのよ。大体物音っていうけど、最初は私には何も聞こえていなかった。浩二さんだって見つかりたくないのだから、極力動かないようにしていたはずだ。それをいることを疑わせるようなことを何度も書いたのは、実はいることを知っていたのだとしたら納得が出来る。


そう、浩二さんと和彦は盗み聞きに来ることを、打ちあわせ済みだったんだわ。だから和彦は、あんならしくない態度と言動をしていたのよ。


からくりが見えた私はキッと二人のことを睨みつけた。


「二人して私のことをバカにしているの?」

「おいおい、なんのことだよ。浩二さんがいることに俺も驚いたってばよ」

「麻美、隠れていたことは謝る。麻美のことが心配だったんだ。馬鹿にしての行動じゃないから」


和彦は軽い調子で答えてきて、浩二さんはこたつのそばに来て座りながら言ったのでした。


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