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213 改めて、私が把握している親戚のこと

書いている系図を食い入るように見ている和彦をしり目に、私はもう少し書き込んでいった。祖父の兄弟、弟のところの『広野』妹のところに『石部』と書いた。それから父の一番上の姉の横に『双葉町』と書いて他5人も姉、妹、弟と書いた。母の方も線を引いて母の兄弟5人を書き込んだ。それから2枚目の紙を取り、双葉町の系図を書き始めた。


「麻美? なんで父親の姉の嫁入り先まで書き出すんだ」

「これを書かないと説明できない村の親戚がいるのよ。あっ、もう一軒書き忘れていたわ」


私は一枚目のほうの紙に祖母の母の系図を足した。祖母の母の兄の孫が、祖母の仲介で近所にお嫁に来ていたのだ。父とはとこになる人。私のことも小さい時からかわいがってくれて、母とも仲がいい人だ。『げんさん 嫁入り』と屋号を入れる


もう一人『おおまさ』のところから線を引いて二代下がって、やはり父のはとことなった人が村の中でお嫁に行っているからその家『ほかしや 嫁入り』と書き足した。


「これも親戚か」

「そうよ。父とはとこになるのよ。これだけで済んでいるから、まだいい方なのよ、うちは(・・・)


双葉町の系図。長男長女の結婚だったと聞いている。男が3人女が5人だったそう。この家の次男が『丸子』に婿に入った。その丸子の家の父の横に『しげさん 婿入り』と書いた。そして注釈として『しげさん 沢木家の二軒隣』と書き込んだ。


そこまで書いて和彦のほうに向きを変えた。


「さっき言った村の親戚ね。『おおまさ』さん『こまさ』さんと『ほかしや』さんが沢木家から出た人の親戚で、『げんさん』には祖母側のはとこが嫁に来ての親戚。『弥太さん』の家から祖母の兄嫁が出ていて父とまたいとこの関係で、『しげさん』は『双葉町のおばさん』からの周っての親戚ね。関係は義理のいとこの兄弟かな」

「おっ前、よくこんがらないな」

「だから、まだ、序の口だって言っているじゃない。もっといろいろあるんだからね。えーと、祖母の実家以外の兄弟のことを書かないと、わからないわよね」


私は今度は祖母の兄弟のことを書き始めた。『西島』『宮竹』『用宗』『吉田』『藤枝』『大谷?』『大浜のおばさん』『祖母』と書いていく。別の用紙に『用宗』と書いてそこから女、男、女と書いた。女の横に『籠上』と『広野』とそれぞれに書いた。『籠上』の夫から線を書いて弟、妹と書いた。その横に線を引きそこに父の次姉と書いて子供、女が2人と書いた。『籠上』の妹の方にも子供がいる線を書いて、次姉の子供の横にまた線を引いて結婚をしていることを書き込む。『小坂 沢木母の実家のある村に嫁ぐ』。ついでに妹の子供にも線を引いて『克義おじさんの息子と結婚』と入れた。


「はっ?」


和彦が変な声を出した。奪うように紙を持ち、食い入るように見つめている。


「えっ? 嘘だろ。本当に麻美と沙綾さんは親戚になるのか」

「そうよ。この『用宗』の家から嫁に行った人が、自分の従妹に夫の弟を紹介したのよ。その従妹というのが父の次姉。そしてなんの偶然なのか、私の従姉になる由美子姉さんが、母の実家がある村にお嫁に行ったのよ。私はたまたま由美子姉さんの結婚式に出たから、そこで由美子姉さんの従姉妹である沙綾さんと会っていたのよ。この時には克義おじさんのことは知らなかったから、沙綾さんとはまたいとこ(・・・・・)なんだと思っていたのよ」


茫然とした顔で私のことを見つめていた和彦は、ハッとした顔になり聞いてきた。


「まだ・・・麻美はまだこれ以上の親戚をおぼえているのかよ」

「う~ん、覚えようと思って覚えたわけじゃないけどねえ。あとは母の実家関係だけよ」

「いや、さっきの口ぶりだとまだあんだろ」

「う~ん、あると言えばあるのかな。母の兄弟は6人で家を継いだ兄、母、弟、妹、弟、妹の順だったそうよ。ただ、すぐ下の妹は3歳で病気で亡くなってしまったそうなのね。でさ、母の兄弟はいいんだけど、こっちの祖父母がねえ。長男長女で結婚したから、叔父叔母がすごく若くてさ、皆さんすごくお元気なのよ。母さんと3歳違いの叔母がいると聞いているわよ。まあ、基本は実家の伯父さんが対応するからいいんだけど、この前も(母の)叔父さんが入院したとかで、私が運転手でお見舞いに行ってきたのね。そうすると、お見舞いに来た(母の)叔母さん達と顔を合わせて、私も挨拶しないわけにはいかないでしょう。おかげで覚えちゃったわね。祖母の方の叔母さんも、偶然にも双葉町の叔母さんの三軒隣に嫁いでいてね、ここでも薄い付き合いは出来ないじゃない。私もさ、ここまで把握するつもりはなかったんだけど、両親と行動していれば自然と覚えていくわけよ。まあ、家を継ぐわけだし、これくらいは当たり前よねえ」


和彦はハア~と、長く息を吐き出した。


「何代も続く家って、半端ねえな。自分の家だけでなく、おじおばの婚家のことまで覚えなきゃならないなんてな」

「そんなことはないんだけどさ。たまたま別の方でも親戚関係が重なったから、記憶に残っただけよ。うちなんて親戚が少ない方だと思うわよ」

「嘘つけ。どこがだよ。こんだけでも多いって」


私は『小坂 沢木母の実家のある村に嫁ぐ』を指さした。


「この従姉が嫁いだ家というのが、あの村で一番力がある家系なのよ。お姉ちゃんのところは本家ではないけど、本家の次の一番目の分家になるらしいのよ。粕谷家っていうんだけどさ、村の半数がこの苗字で全部親戚になるんだって。でね、その分家にも格というものがあるらしいのよ。それに配慮しないと大変なことになるみたいよ」


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