表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

208/238

208 悪友との話し合い?

千鶴たちには日曜に会って招待状を手渡した。水曜日に会った高校の友人たちも「なんで早く教えてくれなかったのー!」と言われて、やはり浩二さんのことを根掘り葉掘りと聞かれたけど、みんな出席の返事を目の前で書いて、渡してくれました。


そうしてその週の金曜日。来週に私の誕生日が来るので、和彦が克義おじさんの使いでうちに顔を見せたのよね。かすかに聞こえるやり取りを聞きながら、私はいまかいまかと待っているの。


そうこうしているうちに階段を上がってくる音が聞こえてきた。私は息を殺して扉が開くのを待った。


軽いノックの後に和彦の声が聞こえてきた。


「麻美、入ってもいいか?」


返事がないからか、少しして扉がそっと開いた。


「麻美~、もしかして寝てるのか」


部屋の中に入って敷いてある布団に視線を向ける和彦。少し近寄り、ホッとしたような声が聞こえてきた。


「寝ているんじゃ仕方がないか。いつものやつだぞ。ここに置いておくぞ」


そうして紙袋を枕元に置いた。


「麻美?」


不審そうな声をだした和彦。


「いまだ!」

「えっ、うわっ。おい、何をするんだー」


ドタンと、倒れた音が響いたけど、家の外にいる家族には聞こえていないだろう。いや、聞こえても別にいいんだけどさ。


私は渾身の力で和彦にかぶせた毛布を抑えつけた。じたばたともがいている和彦に私は言った。


「こうでもしないと逃げるでしょ」

「ふざけんな! 麻美! いい加減にしろよ」

「いい加減にしろは、和彦に言いたいんだけど」

「だまし討ちにもほどがあんだろ! どけー!」

「どかせるものなら、どかしてみれば」

「言ったなー。こんのー」


その声と共に私は毛布ごとひっくり返されてしまった。


「いったー」


私は後頭部を打って顔をしかめて、毛布から手を離した。その手を頭に当てる前に、和彦に取り押さえられてしまう。


「なにしやがんだ、お前はよう!」


私の両手を押さえ付けて目を怒らせて見つめてくる和彦のことを、私もギッと睨んだ。


「和彦が逃げたからでしょう」

「誰が逃げたって?」

「逃げたでしょうが。クリスマスのプレゼント。私と会わないようにしたわよね」


そう言ったら気まずそうに私から視線を外す和彦。手首を押さえる力が弱まったから、右手を外してその手で和彦の胸を押した。和彦はそのまま尻もちをつくように私の上からどいた。


私は体を起こして座り直した。和彦はそっぽを向いて何も言わないでいる。でも、部屋から出て行く様子はないから、私と話をする気はあるみたいだ。


「なんか言うことはないの」

「なんかってなんだよ」


ガキみたいな返事に私の眦の角度が上がった気がする。


「ほう~、本気でそう思ってんだ。そうか、そうか」


腕組みをしながら背筋を伸ばした。若干和彦よりも目線が高くなる。そんな私にチラリと視線を寄越した和彦は不満そうに言った。


「なんだよ」

「なんだよじゃないでしょ。私はあんたに謝ってもらってないんだけど」


この言葉に和彦の肩がビクリと揺れた。


「俺は、浩二さんに殴られたけど」

「そりゃあそうでしょう。婚約者に手を出されそうになって、怒らない人がいると思うの!」


和彦はまだ不貞腐れた様にそっぽを向いていた。そしてポソリと言った。


「あの時は……抵抗しなかったくせに」

「ああー? まさか本気で言ってないでしょうね」


思った以上に低い声が私の口から出た。私のことをチラリとみた和彦は、ザザッと布団から降りて姿勢を正すと正座をした。神妙な表情にまでなっている。


「だけどあの後に俺、吊るしあげられたんだけど」


それなのにまだこんなことを言う和彦。


「それは違うことでよね。変な小細工をしなきゃ、尻叩きの目に逢わなかったはずよ。自業自得でしょ」


冷たい視線を投げかけたら、視線を下に向けたあと、しばらくしてまたボソリと和彦が言った。


「麻美ならわかってくれていると思っていたんだけど・・・」

「わかっていたって、気分は良くないわよ! というかさ、甘えないでくれる」


この言葉が意外だったのか、驚いたような目を私に向けてきた。


「なによ。おかしなことは言ってないでしょう」

「あ・・・麻美は・・・麻美なら・・・」

「私が何? 言いたいことがあるのならはっきり言ったらどうなのよ」


私の名前を繰り返すだけで、他のことを言おうとしない和彦に、きつい口調で言った。


「・・・だってさ、麻美は俺のことを好きなんだろう?」

「好き? 私が? 和彦のことを? いつそんなことを言ったのよ」


伺うように言われた言葉に、反射のように言葉が出てきた。いつもなら、言われた言葉を自分の中で反芻して、落ち着いてから答えるのに。


「言われてないけど、その雰囲気でわかるというか・・・」

「はあ~? 雰囲気? 冗談辞めてよ。なんで私が和彦のことを好きにならなきゃなんないのよ」


私の言葉になぜかショックを受けたような顔をする和彦。


「えっ? 俺のことを好きじゃなかったのか」

「もちろんよ。親戚じゃなきゃ頻繁に会いたいとは思わないわよ!」


ガ~ン という効果音がつきそうな、本当にショックを受けましたと表情で、青ざめていく和彦でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ