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205 下平家の親戚宅へ

下平家の三人に集まった沢木家の親戚を紹介し、それが終わるとすぐに浩二さんたちは立ち上がった。実はこのあと、下平の親戚の家に新年の挨拶に行くことになっているそうなの。こちらも毎年のことだそうだけど、先にうちの親戚に顔見世に来てくれたのよね。


それで、私も一緒についていくことが決まっているのよ。だから、気合を入れて着物を着ることにしたのだけど、つい気になって台所でちょろちょろし過ぎたのよね。本当にお姉ちゃんず様様です。


私は着物に合わせて用意した手提げを部屋に置いてきたことに気がついて取りに行った。下に戻ると、下平家の三人はもう靴を履いていた。


「お邪魔いたしました。慌ただしくて申し訳ございませんでした」

「いいえ、こちらこそ来ていただいて、申し訳なかったです」


泰浩さんと父が言葉を交わしていた。私が来たのをみて、泰浩さんが微笑んだ。


「それでは麻美さんをお預かりさせていただきます」

「はい。どうぞよろしくお願いいたします」


私も草履を履いてから、父に向き直った。


「行ってきます、お父さん。後のことは」

「わかっているから心配するな。それよりもお前のほうこそしっかり挨拶してくるんだぞ」

「わかってる」


私と父の会話が切れたところで泰浩さんが再度言った。


「それでは失礼いたします」

「なんのお構いも致しませんで」

「行ってきまーす」


父が言いかけたのを遮るように私は言って、玄関から外に出た。後ろから「こら、お前は」という声が聞こえてきたけど知らないもの。このままだと挨拶合戦で時間ばかりが過ぎていくだけだと思うのよね。ここから下平の親戚の家まで1時間はかかると聞いている。一度家に戻ってからその親戚の家に行くというから、早くした方がいいに決まっているもの。


私に続いて浩二さんも出てきて、そのあとすぐに泰浩さんと博美さんも外に出てきた。車へと歩き出そうとしたら、私を呼ぶ母の声が聞こえてきた。玄関に顔を覗かせたら、手招きをする母。そばに寄ると、ポチ袋を差し出された。


「お兄さんに子供さんがいたよね。これを持っていきなさい」

「あっ。ありがとう、お母さん」

「いいんだよ。それよりも大丈夫なのかい。顔色が悪いみたいだけど」

「緊張しているだけよ」

「そうなのかい。だけど、きつかったら無理せず着替えてから帰ってきなさいね」


そう言って母から紙袋を渡された。その中はどう見ても風呂敷だけ。


「これは?」

「着物を脱いだらこれに包んで持って帰ってきなさいね」


えーと、いいのか、これは? いや、いいんだよね。


そこでハッとした。由美子姉さんに渡された紙袋がないことに。


「着替え!」

「先に浩二さんに渡してあるから。安心しなさい」

「それって」

「ほら、お待たせしているんじゃないよ。父さんも焦れた顔をして待っているから」


言われて後ろを見ると、車が来ないか見るために父が道のほうに歩いていくのが見えた。私は慌てて車へと近寄り、助手席へと乗り込んだ。


「すみません。お待たせしました」

「大丈夫よ、麻美さん。それよりも座席は大丈夫。遠慮なく倒してね」


博美さんの言葉に、帯のせいで少し狭く感じていたので、遠慮なく座席を倒させてもらう。


「いいか」


と、浩二さんが聞いてきた。私が頷くと浩二さんは車を発進させたのでした。



下平家に着き、待っていたお義兄さんたちにご挨拶。真佑美ちゃんにお年玉を渡したら、ピョンピョンと飛び跳ねて喜ばれた。隆政くんはまだ1歳半ということもあり、不思議そうにポチ袋を見ているだけだった。


軽く昼食を食べて、祖母の登美さんも含めて下平家の全員で家を出ました。もちろん車は二台です。最初に行ったのは登美さんの実家。皆さんが挨拶をした後、私のことも紹介された。「よろしくお願いします」の一言だけで、そこをあとにした。


次は下平の亡くなっている祖父の実家。そちらが本家で、祖父は登美さんと結婚していまの家を建てたとか。なので泰一さんと浩二さんは三代目なの。こちらでも私の紹介をして「結婚式を楽しみにしているよ」と、言われたのよね。そしてすぐにこちらもあとにした。


さあ、メインの泰浩さんの実家です。泰浩さんは六人兄弟の末っ子だと聞いています。母親が泰浩さんを産んでしばらくして亡くなったので、姉たちに可愛がられて育てられたと聞きました。


うん。わかっていましたとも。うちだって親戚が集まりましたものね。こちらも同じですよね。うん。


普段は集まらないといういとこさんたちが、何人か顔を見せているそうです。二番目のお姉さんの三番目の息子の渉さん。浩二さんと同い年なんですって。ここ何年か、顔を見せなかったそうなのに、浩二さんの結婚が決まったと聞いたから来ることにしたと言っていました。高校の教師をしているそうで、なかなか大変らしいです。


そして末っ子の宿命とかで、運転手をする羽目になったとかで、浩二さんと二人お茶を飲んで話をしています。お義兄さんの泰一さんは飲んでいるのに。


えっ? 車ですか。


ここに着いてすぐに家に置きに行きましたよ。渉さんと一緒に。そして渉さんの車に乗って戻ってきたのでした。チャンチャン。


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