表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/238

202 女子は恋バナに食いつくもの

「やる~! 麻美ちゃんってば!」

「はあ~?」

「はあ~、じゃないわよ。幼馴染みのイケメン君を振ってまで、選んだんでしょ。これは会うのが楽しみだわ」


幼馴染みのイケメン君? 誰のことだよ、おい!


じゃなくて!


「ちょっと待って。なんか変に話を盛られてない?」

「盛ってないわよ。沙綾から聞いたことをそのまま話しただけよ」


由美子姉さんが『それが何か?』という感じに首を傾けながら言った。ということは、沙綾さんの中では、私と和彦が・・・。なんだ、その思い違いは。この事を知ったら、和彦は泣くぞ。


じゃない!


「えーとねえ、盛り上がったところ悪いんだけど、そんな事実は微塵もないから」

「やだ~、照れなくていいのに。東京にいた時もわざわざ通って食事を作りに行っていたって聞いたのよ」

「麻美ちゃんってば献身的~」

「でしょ。それなのに、従兄弟くんは麻美ちゃんにそっけなかったみたいなのよ。それが麻美ちゃんの結婚が決まって、やっと気持ちに気が付いたんじゃないか~! と、沙綾が言ってたんだ~」

「え~、私は聞いてないわよ。そんな面白い話。姉さんばかりずるいわ」


佳子姉さんが由美子姉さんに抗議したけど、前提じたいがおかしいってば! 沙綾さん、妄想がひどすぎる。


「いや~ん。素敵~」

「もしかして奪い合いとか?」

「麻美は渡さない! なんて~、あったの~」


星子ちゃん達まで、妄想を広げている。もう、どうとでもなれという気分になったけど、それじゃいけないと思い直した。


「違うってば! 全部沙綾さんの妄想です。あのバカから、何を聞いてそう妄想したのかは知らないけど、事実とかけ離れすぎてます。ただの幼馴染みで親戚なだけです!」

「親戚?」


そう叫ぶように言ったら、由美子姉さんが呟くように言った。そういえば、克義おじさんのことはうちしか知らないことになっていたんだった。ああ、違う。おじおばには話してあるけど、その子供達まで話すことはないという判断だっけ。基本は本家であるうちと、克義おじさんとこの付き合いで納めると、言っていたんだ。


他の従姉妹たちも困惑したような顔をしている。これで何も言わないのは違うだろうと思い、私は克義おじさんとのことを簡単に話した。


「そうか、大浜のおばさん(・・・・・・・)にそんな事情があったのね」


由美子姉さんの言葉に頷くお姉ちゃんず。お姉ちゃんたちは夏にプールにきたときに、祖母の姉のところに寄っておでんを食べたことを覚えていたそうだ。章子ちゃんたちはさすがに記憶には残っていなかったそう。私だって幼稚園の時の記憶だもの。かわいがられたな~、くらいにしかもう覚えていないものね。


「そのおばさんの子供の腹違いの妹の子供が、沙綾の旦那の従兄弟くんなのね。世の中狭いわね」

「あのさ、由美子姉さん。あのバカよりも、沙綾さんの旦那さんとは私達、正真正銘のはとこになるんだけど」

「あら」


二重の意味での親戚関係に、由美子さんが口に手をあてて呟いた。佳子さんと目を合わせてお互いが目を丸くしている様子を見て、フッと笑い合った。他のみんなも新たな親戚に驚いた顔をしていた。


「で、でも、そんなにイケメンなら、麻美ちゃんは好きになったりしなかったの?」


昌代ちゃんが気を取り直したように訊いてきた。


「昌代ちゃん、私は身の程を知っているのよ。そんなイケメンと一緒にいて、女の嫉妬を身に受けるだなんて不毛なことはしたくないの」

「でも、イケメンなんでしょ」

「イケメンでも、性格が嫌」


私の返事にヒソヒソと従姉妹たちが集まって話している。どんな想像をしているのか知らないけど、大学の時に迷惑をかけられたことや、この間のことがあるから、和彦のことをみんながどう思おうが知るもんかという気分でもあったの。それにみんなは和彦と会う機会はないと思うのよね。


「まあ、そうよね。イケメンは観賞用よね」

「そうそう。触らぬイケメンに祟りなしよね」


若干変な言い回しがある気がするけど、気にしないことにしよう。


「あれ、じゃあそのイケメンさんは、何になるんですか。直接血は繋がっていないんですよね」


昌代ちゃんが気がついたようで、私やお姉ちゃんずの顔を順番に見ながらきいてきた。


「一応、はとこ(・・・)でいいと思うわよ」

「そうなんですか」

「そうなのよ。さっき話した私の父方のいとこの沙綾も、みんなにとってはまたいとこ(・・・・・)という立場になるしね」


由美子姉さんが答えたら、私以外のみんなが目を丸くしている。


「親戚って知らないところで増えるんですんですね」


感心したように章子ちゃんが答えたけど、由美子姉さんは私に視線をよこしてから言った。


「甘いわよ。結婚すると相手次第ではもっと増えるんだから。ねえ、麻美ちゃん」

「はい、そうですね。由美子姉さんとは母関連でも親戚関係になりましたものね」


そう言ったら、今度はみんなに不思議そうな顔をされた。佳子姉さんまで不思議そうな顔をしているけど、妹なのに知らないのかな。


ああ、そうだね。知らないよね。私も三日前に兄に親戚のことを聞かれるまでは、兄が知らないとは思っていなかったもの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ