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201 従姉妹たちと

星子ちゃんは少し困ったような顔をした。


「えーと、私はいいかな。着物を着たら動けなくなりそうだし。何より汚すのが怖くて動けなくなるもの」


星子ちゃんの言葉に笑い合うみんな。口々に同じようなことを言っている。あんまり会う機会がなかったと思うのに、うちの親戚って仲がいいよね。


「でも、久しぶりよね。前に集まったのはおばあちゃんの古希だったかしら」

「違うわよ。古希じゃなくて喜寿だったでしょ。傘寿は集まらなかったもの」


晴子姉さんの言葉に、すぐに笑子姉さんから訂正が入った。そう言われれば、前に集まったのは祖母のお祝いの時だった。祖母の子供7名にその連れ添い6名と子供が14名。笑子姉さんの旦那様と子供が1人。祖母を入れて総勢30名が集まったのよね。あの時は。

あれから8年。笑子姉さんにはもう1人。由美子姉さんにも子供が1人生まれているの。


だけどこの間に他のいとこたちはまだ結婚していなかったのよ。一番上の晴子姉さんと私は8歳離れている。だからじゃないけど、少し申し訳なく思ったんだよね。伯母さんに。


そんなことを考えていたら、お姉ちゃんずの会話は晴子姉さんの結婚話へと向いていた。


「で、晴子さんは? さすがにそろそろ決まりなんでしょ」

「・・・」

「えっ? まさか、別れたとか」

「そのまさかよ。プロポーズを断ってんのよ、この人!」

「晴ちゃん、何しているのよ~」


それにモゴモゴと言い訳をする晴子姉さん。どうやら彼氏に仕事を辞めて地元に帰るから、ついてきてほしいと言われたらしいの。でも仕事を辞めたことと、実家がリンゴ農家と聞いてしり込みをしたらしいのよね。


「あのねえ晴子さん、私だってミカン農家に嫁いだのよ。農家を手伝わなくていいと言われたんでしょ。私だって同じなのよ」

「でも私は由美ちゃんと違うわよ。由美ちゃんは地元を離れなかったわけでしょ。彼の実家はこっちじゃないのよ。実家に帰って来るにしても、4~5時間かかるのよ。何かあった時に頼れないじゃない」

「姉さん、まだそんな甘えた考えでいたの。姉さんも本家の長女だという自覚はないの」

「うちはそんなに続く家じゃないでしょう。だいたい私にも笑子にも家を継げだなんて言わなかったし」

「それが甘えているっていうのよ。そこは婿に来てくれる人を探し出すか、お嫁に行っても実家のことは任せろくらい言って欲しかったわよ」

「だって~」


・・・う~ん。晴子姉さんの気持ちはわからなくもないんだけどさ。


晴子姉さんも大学に行くために家を出てから、東京方面で働いているの。それから実家には帰省しかしていなくて、おばさんは跡継ぎのことはあきらめていると言っていたのを、聞いたことがあった。


まあ、その家それぞれに事情はあるんだし。などと思っていたら、姉妹喧嘩に発展した二人を放っておいて、今度は星子ちゃんたちに由美子姉さんの関心が向いたようだ。


「じゃあ星ちゃんはどうなの」

「私、ですか? えーと、残念ながらまだ彼氏もいないです」


星子ちゃんは苦笑いを浮かべて答えた。


「章ちゃんは?」

「あ、あの、一応付き合っている人はいます、けど」


恥ずかしそうに頬を染めて答える章子ちゃんがかわいい。2歳下の章子ちゃんと4歳下の昌代ちゃん姉妹は、もともとはうちから歩いて3分くらいのところに住んでいたの。それが私が高校生になった頃に、いまのところに家を建てて移り住んだ。だから小学生のころまではよく遊んでいたんだよね。その章子ちゃんに彼氏がいるのかと思うと、何か感慨深いな~。


「じゃあ、まーちゃんは?」

「え~、私も答えるんですか~。私はまだ21歳ですよ。結婚なんて早いですよ~」

「あら、私は20歳で結婚したわよ。全然早くないわよ」

『え~! 本当なんですか。知らなかった』


笑子姉さんの言葉に素で驚く三人。どうやら知らなかったみたいね。でも仕方がないか。お姉ちゃんが結婚した時って、私が中学3年の時だもの。章子ちゃんは中1、星子ちゃんは小6、昌代ちゃんも小5だった。親が結婚式に出ても、子供の私達は行ってなかったものね。というか、歳の差がいくつあるのかをわかってないのかもしれないかな。


笑っていた由美子姉さんが鏡越しに私のことを見てきた。今はお化粧が終わり髪飾りをつけてくれていたの。


「そういえばね麻美ちゃん、沙綾(さや)が言っていたのよ。旦那のいとこさんの元気がないって。原因を麻美ちゃんなら知っているんじゃないかな、とも言っていたんだけど、どうなの」

「ええっ、まあ・・・」


一瞬動揺しかけて、やはりとも思ったのよ。去年のクリスマス近辺のこと。和彦は克義おじさんからのプレゼントをうちに届けに来たらしいけど、私は会っていなかった。浩二さんとデートに行った日に届けに来たんだよね。


ふむっ、と考える。やっぱり後々のためにも何とかしないとまずいか。


「そうなの?」

「はい。今度話してみます」


半分うわの空で答えていたので、私は気がつかなかったの。何かを感づいたのか、他の人たちがお姉ちゃんにコソコソと話しかけていたことに。私は使わなかったものなどの小物を片付けながら、どうやって和彦をうちに来させるかを考えていたから、みんなが話していることに注意を払っていなかった。


なので、聞こえてきた声に目を瞬いて、みんなのことを振り返ったのでした。


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