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173 女だけのランチの席で その1

ドレスと小物が決まり、あとは靴です。ハイヒールもいろいろ種類があるのね。

・・・って、これって何センチあるのよ。10センチって転びそうだから履きたくないです。7センチも足に負担がかかるよね。5センチ・・・まあ、妥当かしら。それに浩二さんとの身長差もちょうどいいと思うのよ。


白いハイヒールなら両方のドレスに合うということなので、白いハイヒール一択になりました。


お姉さんがサイズを用紙に書き込んで、ニッコリ笑顔で言われました。


「はい。これで大丈夫です。ですがお嫁様、2月の終わりに最終チェックをしますので、それまでお気をつけてお過ごしくださいね」


・・・つまり体型に注意しろということですね。はい、了解しました。


係の方に見送られて式場をあとにしたのは12時30分を過ぎたところだった。


「いっけな~い。遅れちゃう」


腕時計で時間を確認した千鶴が慌てだした。駐車場に向かってこの車と案内されたものを見て、私は首を傾げた。これって誰の車?


見ている間に運転席に華子女史が乗り込んで、助手席には菜穂子が座った。私は千鶴に促されて後部座席に並んで座ったのよ。


車が動き出して私は華子女史に話しかけた。


「この車に乗っているなんて意外だね、華ちゃん」

「そんなに意外? ・・・麻美、華ちゃんって言うなといったでしょ」

「いいじゃん。華子女史よりかわいいもの」

「私にかわいいは似合わないから。かわいいは麻美と菜穂子に任せているからね」

「そんなことないと思うけどな~」


そんなことを言う華子女史は、一見クール系の美人風。前に美人と言ったら怒られたのよ。私は大和撫子な美人だと思っているけど、華子女史はそう思っていないようなのね。一重で少し細めの目をしているからとかいうけど、狐目に近いキリッとした感じで、黒髪ストレートと卵型の顔にとても良く合っていると思うんだけどな。


その華子女史の車は・・・えーとこれってジープタイプでいいのかな? 車高が高くてごつい感じの車なのよ。う~ん、車種なんて詳しくないからわからないよ~。


「そう言ってくれるのは麻美くらいよ。ああ、この車は私の車じゃないわ。今日は私の車を母が使ってしまったから、借りたのよ」

「借りた? って、レンタカー?」


最近は気軽に車を借りることが出来るようになってきたと聞いているけど、わざわざ借りてもらったのなら申し訳ない事を・・・。


「ねえ、麻美。なんか誤解してない? 華子がレンタカーを借りるわけないでしょう。そんなことをさせるのなら、私が車を出しているから」

「それか、私が父から借りるよ」


千鶴と菜穂子の言葉に確かにと思う。

・・・ん? 何か含みでもあるの? この言い方って。


「ところで麻美、あなたって好き嫌いはなかったわよね」

「うん? 食べるもののこと? それならないよ」

「少し離れたところに行くことになるけど、いいかしら」

「それはいいけど、この方向だと山のほうに向かってない?」

「まあね。30分くらいで着くから、それまでドライブを楽しみましょう」


そう言われて窓から外を見て、少しぎくりとする。見たことがある家並に、こんなところでまたすれ違うわけがないと思いながらも、少し気持ちが落ち着かなくなった。


けど、菜穂子が結婚式の準備のことについて聞いてきたから、すぐにそのことは忘れてしまったの。



着いたところはロッジ風のお店だった。実はペンションをしていますと言われても、信じてしまいそうな佇まいのお店。


千鶴を先頭に扉をくぐった。千鶴は少しキョロキョロとしてから、そばに来た店員に言った。


「予約をしてある香滝ですけど」

「はい、承っております。お連れ様は先にいらしていますよ。ご案内しますね」


店員の言葉に首を傾げる。急に連れ出されたのに、予約って何? それに私達以外にまだ、誰かいるの?


千鶴と菜穂子は店員の後をついて歩きだしたけど、私は考えてしまって歩き出すのが遅れたの。その私の背中に華子女史が手を添えた。


「行きましょう、麻美」

「うん」


少し間が空いたけど、二人の後を追いかけるように歩き出した。案内されたのは、奥のほうにある小部屋みたい。


部屋の中に入って、先に来ていた人を見て、息が止まりそうになるくらい驚いた。


「久しぶりね、麻美」

「京香さん・・・」


私が部屋の入り口で固まったら、華子女史に背中を押された。


「まずは席についてからね」


華子女史に促されて、私は頷いて席に座った。それから千鶴が「よろしくね」と店員に言った。もう料理も注文済みだったもよう。店員が出ていき、扉が閉まると、隔絶された空間に切り替わった。


私は京香さんの顔を見たけど、言葉が出て来ない。それに何故、京香さんがここにいるのかもわからない。私はすっかり困惑してしまったのでした。



竹下京香さんは私と小学校が一緒だった。うちの小学校では全学年を班分けする、縦割り活動があった。京香さんと私は同じ班になり、それからかわいがってもらっていたの。京香さんが中学に入ってからも、私の友達のお姉さんと仲が良かった関係から、何度か顔を合わせる機会があったのも、つき合いが続くことになったのだろう。そんなことがなければ、京香さんと私には接点はなかったのだもの。なんといっても京香さんと私は5歳も年が離れていたのだから。



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