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167 隼人の家で・・・って、あれ。言ってなかったっけ? 

私を見ている男共を睨みつけたら、みんなは慌てて目を逸らしていた。


「そう、あなたは私より沢木さんのほうが良いと言うのね」

「だから、ちげーって。弓子は子育てで大変じゃないか。颯太だって動き回って言うこと聞かないって言ってたろ。疲れているから休ませてやりたかったんだよ」

「たしかにねえ、あなたってなかなか放してくれないものね。一度で終わったためしはないもの」


弓子さんがため息を吐きながら言ったけど・・・場所を考えてよね。菜穂子なんて真っ赤になっちゃったんだけど。


「だろ。こっちも久しくやってないから、ついムラムラッとしただけだって。本気じゃなかったんだよ」


スパーン


「あんたの下半身事情なんか知るか。浮気の言い訳にすんじゃねーよ。バカたれ!」


修二の言葉に頷きかけて、はたと気がついた私は、修二に向けて新聞をふりおろした。大して痛くないだろうに、修二は涙目で私のことを睨んできた。


「だけどよ、麻美だって紛らわしいことしていただろ」

「紛らわしいって何よ」

「いっつも飲み会の途中から、和彦と二人で話し込んでいるじゃねえかよ。二人が本を貸し借りしているのは知っているけどよ、それにしちゃあ間に入れない雰囲気を出してんだよ。これで勘繰らないほうがおかしいだろ」


修二の言葉に頷く、恭介と智樹と菜穂子。隼人と華子女史は頷かなかったけど、同意だと視線が物語っていた。


私はチラリと和彦のことを見た。和彦も私のことを見てきたから、軽く頷いて口を開いた。


「確かに本の趣味は近いものがあって貸し借りはしているけど、親戚としてはこんなもんじゃないの」

『えっ? 親戚? 聞いてないけど!』


私がこう言ったら、みんなが声を揃えて言ってきた。


「なんでそんなことを黙っているんだよ。もっと早く教えておけよ」(恭介)

「そうだぞ。もう10年以上の付き合いだろ。ここまで黙っているなんて水臭い」(智樹)


と、しばらくみんなに責められた。私はムッとむくれた顔で聞いていたのよ。一通りみんなが言い終わったみたいなので、反論をすることにしよう。


「あのさ、最初から親戚だってわかってたら、みんなにも話しているわよ」

「ということは何か事情でもあったのか」


さすが隼人。察してくれるじゃない。


「もちろんよ」


なので、和彦の母の実家の事情と私の祖母とその姉の関係を簡単に話した。そして3年ほど前にやっと親戚つき合いが始まったことを言ったのよ。


「でもさ、この話って一年前くらいにみんなにしなかったかしら?」


私は首を傾げてそういったら、千鶴がすかさず否定をしてきた。


「違うわよ、麻美。その話を聞いたのは私だけ。それも麻美が体調崩して寝込んだお見舞いに行った時に、和彦と顔を合わせた時に聞いたのよ」

「そうだっけ?」


う~んと首を捻りながら考えたけど、よく覚えていない。でも千鶴が言う通りなのだろう。


「えーと、じゃあ、黙っていてごめん?」

「なんで疑問形なんだよ」

「まあ、いいよ。そういった事情だったのなら、しかたないだろう」


恭介と智樹の言葉で場が和んで、これで今回のことは流して終わろうという雰囲気になってきた。いつものグダグダになるのかと思いながら、浩二さんのそばに行った。


「違うわよ。そこのアホが黙っていたほうが面白いと、麻美に口止めしたのよ」


と、千鶴が爆弾を投下した。途端にピリッとした空気が場を支配した。みんなの視線が和彦に集まる。


「へえ~、和彦。黙っていろって口止めねえ~」


不自然な笑顔を浮かべた隼人が、和彦のそばに近寄っていく。


「それも面白いからって? ということは、大元を糺せばお前じゃないか!」


隼人の言葉に智樹と恭介と修二が和彦のことを囲んだ。


「いや、ちょっと待て、千鶴。俺はそんなこと言ってないぞ」

「あんたはあの時に言わなかったけど、麻美から聞き出したわよ。そうしたら思い出したのよね。何度か麻美が意を決したような顔で言いかけるのを、絶妙なタイミングで話の邪魔をするあんたのことを。あれってさ、麻美がばらさないように話を逸らしていたんでしょ」


和彦は顔を引きつらせている。や~い。小細工するからだよ~だ。


「麻美、助けろ」

「やだよ」


和彦が言ってきたけど、私は一言で切って捨てた。そして手に持っていた新聞紙を修二に差し出した。


「思う存分~、やっておしまい!」

「お許しが出たことだし、覚悟しやがれ!」


嬉々として受け取った修二は、隼人と恭介に抑えつけられた和彦のお尻をめがけて、新聞を振りおろした。


しばらく和彦が遊ばれているのを見ていたけど、私は時計を見て浩二さんに言った。


「浩二さん、そろそろ行かないと」

「ああ、そうだな」


途中から呆れた視線を向けていた浩二さんは、私の言葉に時計を確認して言った。


「それじゃあ悪いけど、先に帰るね」

「ああ、用事があるんだったわね」


私が声を掛けたら千鶴たち女性陣がそばに来た。


「明日は式場に10時だったわよね」

「うん。千鶴も菜穂子も華子女史もよろしくね」

「ええ」

「明日ね」


明日の約束を確認した私と浩二さんは隼人の家をあとにしたのでした。


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