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164 隼人の家で・・・ 


12月2周目の土曜日は午前は結婚式場、午後は隼人の家に行ったのよ。いつものメンバーが集まっていたのよね。もちろん浩二さんも一緒に来ています。


修二は私の顔を見ると膝をついて正座をしたと思ったら、潔く頭を下げてきた。


「先週はすみませんでした! 麻美の気が済むのなら殴ってくれて構わないから」

「・・・よーし、よく言った。顔を上げてもらおうか」


私は顔を上げた修二の前に立つと、右手を修二の額に近づけてデコピンをした。抵抗されないからクリーンヒット!


「いって~」


修二は額を押さえて涙目になった。デコピンって地味に痛いんだよね。一度だけで浩二さんのそばに戻る。


「一度だけでいいのか」

「うん。これでもう会うことはないだろうから」

「麻美?」

「そうか。麻美がいいのなら俺が何か言うことはないよ」

「それじゃあ、終わったから帰りましょうか」


にっこりと笑って浩二さんの左腕に自分の右腕を絡めると、歩きだそうとした。


「待って、麻美。もう会うことはないなんて言って、それって本気なの」

「本気だって言ったら?」


千鶴が聞いてきたから、真顔で返しておく。


「ええっ? 謝ったら許すんじゃなかったの」

「私、ここに来ることは了承したけど、許すとは一言も言ってないわよ」


千鶴は私との会話を思い出して、困ったように眉を寄せている。


「まあまあ、麻美。修二も反省しているんだ。許してやってくれよ」


恭介が取り持つように声を掛けてきた。それにチロりと視線を向けると、私はプイッとそっぽを向いた。


「い・や・よ。・・・先週、もし修二の思惑通りになっていたら、どうなっていたと思うのよ」

「どうって・・・」


恭介が困惑した声を出した。私は浩二さんの陰に隠れるようにして、みんなの顔を順に見ていく。みんなわかっていないようだ。千鶴は先週に話していたからか、渋い顔をしている。でも、私が本当に言いたかったことはわかっていないみたい。


「浩二さんに顔向けできない状態にでもなっていたら、どう責任を取ってくれる気だったの」

「えっ、あの・・・」

「いや、さすがにそんなことには・・・」


恭介と修二がチラチラと和彦のことを見ながら言った。和彦はわけがわからずにきょとんとした顔をしている。・・・うん、知らされてないのね、和彦。


私はハア~とわざとらしく息を吐き出した。


「やっぱり、そこまで考えてなかったか~。じゃあさ、もし破談にでもなったら、どうしてくれたの」

「破談って」

「大げさな」


隼人と智樹も私と視線を合わせないようにしながら言ったけど、なんか怯えが見えるのよね。

私は浩二さんの腕をもっとぎゅっと抱きしめて体を密着させてから、みんなのことを睨みつけた。


「なってもおかしくなかったでしょ。その場合私の不貞ってことになって、慰謝料を要求されたら、どうしてくれたのよ」


顔色を悪くして黙る彼らの中で、まだ、状況がわかっていないらしい和彦が言ってきた。


「落ち着けよ、麻美。なんか話が見えないけど、お前は誤解してないか」

「誤解なんてしてないもん。千鶴から先週のことについて聞いたんだもん」


あのアニメの最終回の場面を思い出して、少し目をウルッとさせて和彦のことを見た。一瞬動きを止めた和彦が、視線をずらして座り込んでいる修二や他のメンバーのことを見つめた。


「なんか、俺が知らないところで画策してくれたようだな。きっちりと説明してもらおうか」


和彦が修二に詰め寄って、修二があわあわしながら、何をしようとしたのかを、和彦に話していった。その様子を部屋の入り口の近くに立ち止まって、私と浩二さんは見ていた。浩二さんは私の顔を見て、頭を抱えるようにしてきた。


これは私のことを宥めようとしているように見えることだろう。


「麻美、その涙はやり過ぎだ」

「でも、これくらいしたっていいじゃない」


耳元で浩二さんが囁いてきたから、私も小声で返しておく。


フッ。そうなのよ。私はさっきから一芝居打ってます。もちろん浩二さんも承知しているのよ。だってさ~、簡単に許すなんて癪じゃない。それにこの後もみんなとのつき合いは続くんだから、遺恨は残したくないじゃない。


あと、本当にザルな計画通りなことが起こっていた場合の、どんな最悪の事態を招いたかもしれないことも認識させないとね。


それから、もう一つ。一番大事なことがある!


お前らな~、私の気持ちを無視するんじゃねえ~!


さて、手持ち無沙汰の私達は、宥める浩二さんに甘える私という図式で、部屋の入り口でイチャイチャしていた。たまにみんなから視線が飛んでくるけど、修二の言葉にいい笑顔で怒っている和彦を見守っているために何も言ってこない。


和彦が笑顔を消して修二の胸倉を掴んだ。


「この、やろう!」

「ひゃう」


そこに私の口から場違いな声が漏れた。浩二さんが私の好きな低い声で、耳元で囁いただけでなく、耳に唇を触れてきたから。


「おい、麻美。イチャつきたかったら家でしろ」

「え~、帰っていいの? 待ってって言うから待っていたのに~」


和彦がイラッだってだした低い声に、私は明るい声を出して答えてやる。和彦が私の顔を見て、力が抜けたのか修二から手を離した。


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