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161 親友に・・・拗ねられた? その4

「ええっ! そんなこと言われていたの。なんで教えてくれないかな。その子達に思い知らせてあげたのに」


千鶴、あなたにばれたら兄や先輩にもばれるだろうから、その子達も周りに人がいないところでこっそり私に言ってきたからね。その子達も強者は誰かわかっていたからさ。


「・・・麻美、口に出すならもう少し大きな声で言おうよ。というか、話がすり替わってない」

「それを千鶴がいう?」


私の指摘にタハハと笑う千鶴。


「ええっと、なんだっけ。・・・ああ、そう。和彦が麻美のことを好きなんじゃないか疑惑のことね」

「・・・疑惑ねえ」

「えへへっ、細かいことは置いておいて、でもさ、本当に和彦といい雰囲気にはならなかったの? 向こうで会った時とかに」

「なるわけないじゃん。その時には和彦のことは恋愛対象外だったから」

「ん? その時には? それって、麻美は和彦のことを好きな時があったの」


・・・やばい。今日はどうも墓穴を掘りまくりだ。言わなくていいことまで言っているよね。


「ねえ、麻美~」

「わかったわよ。言うから。でも、このことは内緒にしてよ」

「もちろんよ。それで」

「期待するような話じゃないのよ。ほら、高校に入ってからたまに会うとさ、背が伸びてかっこよくなっていくわけでしょ。だから、少し妄想してみただけよ。和彦が彼氏だったらって。でも、あのバカがそういう妄想を吹き飛ばすことしてくれて、そっからないわーとなっただけよ」

「それって詳しく」

「無理。和彦のプライバシーに関わることだもの。勝手に話せないよ」

「ヒントだけでも」

「えー、じゃあ、うちの兄を怒らせた案件」

「沢木先輩を怒らせたの。どうして」

「もう、言えません」

「そこをもう少し。気になって夜も眠れなくなりそうだから」

「・・・女の子に聞かせるような話じゃないことを、私と兄に聞かせたの」

「そりゃあ、先輩も怒るわね」


うんうんと頷いて納得しているみたいだけど、千鶴は本当にわかったのだろうか。


「ねえ、それって高校の時なんでしょ。もしかして和彦が暗黒に染まりかけてたときのこと」

「暗黒って・・・でも、千鶴にもそう見えていたんだ」

「私だけじゃないわよ。みんな気がついていたわ。でもさ、相談もしてくれないんじゃ、助言も何もできないでしょ」


やっぱりみんな歯がゆい思いをしていたんだね。でも、続けて言われた言葉に、内心ガクッとなった。ま~だ、そう思っているのかと。


「そっか~。それじゃあ、麻美への思いを封印するしかないか~」

「だ~か~ら~、違うから。和彦が好きな人って私じゃないから。年上の可愛らしい人なんだってば」

「・・・なんで麻美が知っているのよ」

「えーと、偶然知り合いだったのよ」

「そこんところ、詳しく!」


また、千鶴が身を乗り出して聞いてきた。これは話しても大丈夫かな?


「いや、駄目よね。和彦のプライバシーは話せないでしょ」

「そのことは関係ない気がするけど。じゃあさ、その人って麻美のどういう知り合いなの」

「え~・・・それは、またいとこ・・・になるのよ」

「またいとこ? 親戚なの」

「うん。もちろん血のつながりはないのよ。私の父方のいとこのいとこになる人だから」

「ううん? 麻美の父方のいとこのいとこ? それって麻美のいとこにとって父方のいとこと母方のいとこになるの? 麻美とその女性が」

「そうなの。それでその人は和彦のいとこの奥さんなの」

「・・・なんかごちゃごちゃしてきた。え~と、はい。書いて」


千鶴が紙とペンを寄こしたから、いま言ったことを簡単に系図っぽく書いてやる。それを見た千鶴が頷いた。


「あ~、こういうことか。麻美のいとこは麻美のお父さんの姉の娘で、その人の父方のいとこが、和彦の母の兄の子供の奥さんになったのね。ややこしいけど、確かに親戚になるんだね」


しばらくその系図を眺めていた千鶴がぽつりと言った。


「でも、皮肉よね。闇に落ちそうになったのを助けてくれた人が、手が届かない相手なんて。これじゃあ女遊びが激しいのも仕方がないのかもね」

「・・・千鶴も知っていたの」

「麻美が知っているほうが驚きなんだけど。ほら、うちの会社が和彦の会社の取引先なわけでしょ。入社1年目から先輩について、うちの会社に顔を出していたのよ。そのうちに和彦の担当になったみたいでね、私が配属された課が担当していたから、顔を合わせる機会が増えてさ。そのうちに和彦と私が知り合いなのがばれて、私も和彦の会社を担当することになったの。そうしたら和彦に懸想した女たちから橋渡しを頼まれてね。でも、和彦はすべて断っているから、気になっていつだか聞いたのよ。そうしたら『取引先の女とはつき合う気がない』っていうじゃない。じゃあ、どんな女とならつき合うのって聞いたら『しばらくは遊びで充分』なんて答えたのよ。一度さあ、女の私がいるのにキャバクラに行ったことがあってさ、そこでキャバ嬢が和彦に秋波送っているのを見てねぇ~。その中の誰かと一夜を過ごすなんてことはざらみたいだったのね」


千鶴の言葉に私は瞬きを繰り返したのよ。


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