表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

160/238

160 親友に・・・拗ねられた? その3

聞き出した千鶴が表情を柔らかくして、でも意味ありげな視線を私に寄こした。


「それで、なんで和彦にバレたわけ」


千鶴の容赦のない尋問は続いた・・・。


「えーと、ホテルを出た後すぐに別れて、まだ朝の早い時間で・・・寮に帰るわけにいかなくて・・・午後に約束していた人の住んでいるそばに移動して・・・バッタリ会っちゃって・・・」


うん、不覚にも駅のホームで時間潰ししようとしたのが悪かったのよ。新宿か渋谷辺りで時間を潰せばよかったのよね。そうしたら朝帰り(友人たちと朝まで飲んでいたそう)の和彦たちとバッタリ遭遇してさ。有無を言わさずに和彦のアパートに連れていかれたんだよね。

そこで脅されて洗いざらい話すことになったのよ。

和彦の彼女がいなかったら、どうなっていたことか。それくらい怖かったのよね。


千鶴は抱えたクッションを横に置くとため息を吐いてから言ったの。


「麻美のバカ・・・。そこはしらを切りとおしなさいよ」


呆れたように言われたけど、仕方ないじゃない。本当に怖かったんだから。


ムウっと黙ったら、向かいから千鶴の手が伸びてきて、私の頭を撫でてきた。


「まあねえ、仕方ないか。和彦も心配したんだろうし。・・・でもなあ~、なんで和彦は麻美のことを囲い込まないわけ。絶対に気があるんだとばかり思っていたのに」

「だから、なんでそうなるのよ。千鶴が一番知っているでしょう。そんなわけないことは」

「そう・・・なんだけど、でもねえ、どうしても和彦の行動に説明がつかないのよ。麻美が和彦の弱みを握ったとしても、あんなに大切にするわけないもの」

「いやいや。大切にされてないって。どちらかというといじめられているもの」

「それって小学生が好きな子に振り向いてほしくていじめるってやつでしょ」

「だから、ちが~う!」


だんだん堂々巡りな会話になってきて、叫んだ私は大きく息を吐き出した。


「ねえ、千鶴。なんで今更和彦を応援するようなことを言うのよ。さんざん私と和彦が話すのを邪魔していたよね」

「そりゃそうでしょ。麻美を和彦に取られるなんて面白くないもの。でもねえ、昨日の修二の言葉で私も反省したのよ。私が邪魔をしなければ、今頃二人はうまくいっていたかもしれないわけでしょ。そう思ったら悪いことしたな~って」

「待って。根本的なところを間違っているから。千鶴が邪魔をしたのは、みんなで集まる飲み会の時だけでしょ。それ以外で私達は会おうと思えばいつでも会えたから」

「あっ、そうか」

「それにね、昨日和彦が言っていたけど、私が手相占いをできる時点で、対象外なんだって」

「対象外?」


千鶴は瞬きを繰り返して、少し考えていた。


「ああ、そういえば麻美は言ってたわね。自分のことは占えないって。それと自分に近い人は占えないとも言ったわね」

「そう。私に関りが深い人ほど占えなくなるのよ。だからさ、占うことが出来たみんなのことは対象外だって・・・」

「う~ん、わからないな~。それを言ったのが和彦なら、なんで麻美のことは特別視しているわけ。いつも飲み会の時はいつの間にか麻美の隣にいて、二人で話しているじゃない」

「そんなことないでしょ。千鶴とだってよく話すじゃない」

「それは仕事の関係が大きいわよ。でも、和彦は菜穂子と華子にはあまり話し掛けてないのよね。・・・というかさ、私さ、なんで和彦がこのグループにいるのかわからないのよ」

「ええっ? え~と、隼人と仲が良かったからじゃないの」

「それがさ、それほど仲がいいわけでもないみたいなのよ。中学の時に気がついたらよく話すようになったって、隼人が言ってたのね。和彦が一人暮らししていることも知らなかったようだし」


千鶴の言葉に中2のことを思い出そうとしてみる。中2の2学期にはこのメンバーで輪になって話していたのよね。その前は・・・あっ!


「千鶴、このグループが出来た原因はあなたよ」

「えっ、私?」

「そうよ。中2の1学期の中間テスト後、私があの兄の妹だってばらしてくれたじゃない。それで、智樹と隼人が興味を示して、私に話し掛けてくるようになったのよ。おかげで、周りの女子の目が怖かったんだから」

「ええっと、そうだったかしら」

「そうなの。もともと菜穂子と恭介とは1年の時も一緒のクラスだったから、よく話をしていたわよ。そこに部活で一緒の千鶴が加わって、華子女史も出席番号の並びで加わるようになったのね。あと、修二が恭介と一緒の野球部で、それでつるむことが多くなって自然と話すようになったぐらいよ。でもね、私は智樹も隼人も苦手だったんだから」

「ええっ! うそ~。麻美でも苦手なタイプってあったんだ」

「だって、智樹は千鶴と一緒にクラス委員やるくらいだったし、隼人はなんて言うか、話しかけにくい感じだったから・・・」

「あ~、そういえば隼人って、中学の時には無口で何を考えているかわからないようにみえたよね。ただ単に面倒なことをしたくなくて、おとなしくしていただけだったそうよ」


うん。それはあとから聞いた。親が教師で学校で問題を起こすなって言われていたことを。だけどさ、あの頃、智樹だけでなく隼人も女子に人気だったんだよ。そんな二人がいきなり私なんかに話し掛けるようになったのよ。いくら兄のことがあっても、女子達が面白く思うわけないじゃない。おかげで、ぶりっ子やかまととや媚売り女なんて、嫉妬した子たちに言われたのよね。・・・うん、いい思い出だ~!(怒)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ