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159 親友に・・・拗ねられた? その2

「でもさ、麻美も何気に酷いよね」


千鶴は喉が渇いたからと新しく紅茶を入れてくれた。それを一口飲んだところでこう言われたの。


「何がよ」

「だって、肝心なことを話してくれないじゃない。和彦には話せて私には話せないって、おかしくない」

「そんなことないけど」


千鶴が何のことを言っているのか、思い当たらない。勘違いにしては意味深だ。


「和彦の事情を知っているんでしょ。なのに教えてくれないじゃない」

「あのね、千鶴。それって軽々しく話せることじゃないでしょう。プライベートなことだし」

「でも、親戚だったのも黙っていたじゃない」

「それはわかったタイミングが微妙すぎて、言い出しにくかったの」


それはわかっていたのだろう。頷いてくれた。頷いてくれたけど「私には教えてくれてもよかったんじゃない?」と言われたのよね。でも続けて言われたことで、もう少しで紅茶を吹き出すところだったのよ。


「だけどさ、初体験のことを和彦に話せて、私に話せないってのは、ないんじゃないの」

「・・・な、何を言い出すのよ、千鶴は」

「だってそうでしょう、本当のことじゃない」

「いや、待って。そのことはたまたまバレただけだから。・・・いや、違う。そんな話はするものじゃないでしょう」

「そうだけど・・・和彦に話せて私に話せないということが、癪なのよ」

「だから、話すような内容じゃないでしょ。私だって千鶴のそういう話は知らないもの。・・・というか、なんなのよ。なんで千鶴がそれを知っているのよ!」


叫ぶように私が言ったら、千鶴はそばに置いていたクッションを掴むと、胸元に抱え込んだ。視線を合わせないようにしながら、呟くように言った。


「麻美は覚えてないかー。えーともう、3年前かな。それとも4年前? 夏にみんなで集まった時のことよ。菜穂子がある雑誌を持ってきたのを覚えてない? その時は智樹の家に集まったんだけど」


その言葉にギクッとなる。あの時のことは覚えている。女性向けの雑誌の特集で、いろいろな占いのことが乗っていたやつ。その中にチャート式の占いがいくつかあったんだよね。それをみんなで楽しんでいたんだけど、ある占いが私の心を抉ってくれたのよ。自分の顔が引きつっていくのがわかったけど、動揺しすぎて挙動不審になっていた覚えがある。


「麻美がある占いをした後、泣きそうな顔したじゃない。それを見て和彦が雑誌を取り上げて『くっだらないことしてんな~』って言った後、動物占いのページを開いて『これのほうが面白そうだろ』ってしたよね。そのあと、麻美が席を外した時に、さり気なく和彦もいなくなってさ。私達は麻美が動揺した占いのページを見て、結果を読んだのよ。それで、てっきり和彦と何かあったと思ったのね。あの占いって性に関することだったじゃない。だからね、和彦の友達が無理やり麻美を襲って、それを和彦が気にしているのかと思っていたんだ~」


えーと、あれで気がついたんだ。・・・じゃなくて。


「えっと、和彦と何かあったとは思わなかったの」

「あのねえ、麻美と和彦がそんな関係になったのなら、和彦は顔を見せないか、逆にあそこに来てから麻美のことを離さないかのどちらかでしょう」


顔を上げた千鶴が私のことを真剣な顔で見つめてきた。


「麻美ってさ、いつも肝心なことは話してくれないよね。そんなところが和彦と似ているのよ。私、麻美のそんなところが嫌いよ。でもさ、言えない理由もなんとなくわかったかな。あの後しばらくしてから気がついたけど、麻美からある奴の名前がでなくなったでしょ。だから何かあったとしたら、そいつとよね。そのまんまの占い結果も書いてあったし」


私はポーカーフェイスを作れないで、千鶴の顔を凝視していた。私の顔をじっと見ていた千鶴が笑った。


「なんだ、当たったんだ。和彦がいて、その友人たちが麻美に何かできるとは思ってなかったのよ。でも、部活の後輩だった奴が相手じゃ、和彦もガードのしようもないわね。接点ないもの」


私はごくりと唾を飲むと千鶴に言った。


「なんでわかったの」

「麻美って隠し事をするのが下手よね。奴だけでしょ、東京に行ったのは。寮に電話してきたって麻美が教えてくれたんじゃない。一浪して予備校通いを親戚の家にお世話になりながらしているって、話していたでしょ。翌年に合格したって教えてくれたあと、合格祝いをねだられたって言っていたじゃない。何にするか悩んでいたよね」


確かにそれは相談したけど、結局無難に財布にしたのよ。一緒に出掛けてその場で選んでプレゼント。すごく恐縮していたわ。


「まさか、麻美をねだると思わなかったけどさ」

「いや、合格祝いにねだられてないから」

「じゃあ、どうしてそういうことになったのよ。まさか占い通りにからかっていた責任を取ったなんて言わないわよね」

「えーと、それは・・・」

「それは?」


その通りだなんて言えるかい! 


そうよ。後輩の反応が面白くて、わざとノーブラで会ったとか、腕を絡めて胸を押し付けて、その赤くなる反応を見ていたとか、ボタンをわざと第2ボタンまで開けて胸の谷間を見せつけたりとかしていたなんて、言えるわけがない。


でも、鋭い視線を寄こす千鶴に負けてしまったのよね。


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