表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

157/238

157 話したつもりはないことで・・・

他に何か話してない事ってあるのかしら? もう、眠くて考えが纏まらないんだけど・・・。


「麻美、ここで眠っちゃ駄目だよ」


浩二さんの声がするけど、目が開かないわ。このまま眠ってしまいたいのに・・・。


「しかたがないな。眠るのならベッドに行こうな」


この言葉と共に体がふわりと持ち上がる。せっかく暖かいところにいたのに、12月の冷えた空気に「やだ」と、抗議の声をあげた。浩二さんの苦笑を含んだ声が聞こえてきた。


「麻美、駄々っ子かい」


そんなんじゃないもの。温かい炬燵から移動したくなかっただけだもん。


そっとベッドに降ろされて布団を掛けられた。毛布は暖かいのだろうけど、温もりがなくてムッと眉間を寄せた。そこに何かが軽く触れて優しく頭を撫でられた。

そして浩二さんが離れていく気配がした。


そうか、浩二さんは行っちゃうんだ。


少し寂しく思いながら、意識が闇の彼方へと落ちていこうとしたら・・・。


「・・・んん?」


布団がめくれてひんやりとした空気が入り込んだと思ったら、体の上に重みが加わってきた。ついでに唇に触れた柔らかいもの。

うっすらと目を開けたら、浩二さんと目が合った。浩二さんが笑ったけど・・・あれ? なんかヤバイ気がする。


「麻美、いくつか聞きたいんだけどいいかな」


私はコクリと頷いた。浩二さんは私の顔の両側に肘をつくようにして見ているから、距離が近い。・・・というより、拘束されている感が半端ないんですけど。逃げられないよ~。


「和彦君にされた優しいキスって、どんな感じだった」


・・・はい? なんでそんなことを聞かれなきゃならないの。


眠気が吹っ飛んで目を大きく開けて浩二さんのことを見つめたの。浩二さんは真面目な顔で見つめてくるけど。・・・なんだろう、今すぐに逃げ出したいんだけど。


浩二さんの顔が近づいてきて、軽く啄むようなキスをされた。


「これとは違うのかな」


・・・って、怖いんですけど。真面目に考察しないでください。

何度か軽く触れるキスを繰り返したあと、浩二さんが笑った。


「どれも違うみたいだな。意外と難しいものなんだな~」


などと、しみじみ言うけど・・・私の顔色を見ながら何してんの! 

でも、怖くて言えない。


「あとさ、和彦君に本気で怒られたのって、何をしたんだ?」

「え~と、その・・・たいしたことじゃ・・・」

「麻美、嘘は駄目だよ。本気で怒ったということは、それだけ心配させるようなことをしたんだろう。麻美が自分で馬鹿なことをしたって言ったじゃないか」


視線を逸らしたくても近すぎて逸らせない。というか、逃げ道を塞がれているよね。


「あの・・・浩二さん。いま話すようなことじゃないよね」

「別の日にしたら麻美は答えてくれないだろう」


まあ、そうかもしれないけど・・・。というかなんで尋問されているの私? 体制もおかしいよね。


「あと、和彦君に泣かされたのって何回あった?」

「・・・えー、あの、泣かされたのって、・・・色っぽいことではなくて、物理的だったというか・・・」


しどろもどろに言ったら、浩二さんがニッコリと笑ったの。


「それはわかってる。彼が麻美とそういう関係になっていたら、俺とは出会ってないだろう。それより、他の女の子にしたような優しいキスをされて、腹立たしいと言ったよな。やはり嫌い嫌いも好きのうちということで、本当は彼のことが好きだったのか」

「そんなことあるわけない・・・って、私そんなこと言った?」


半分眠りながら話していたから、自分の言葉に自信が持てない。なんか、余計なことを言ったかな。

・・・というか、やらかしたか、私。


「・・・自分で話したのに覚えてないのか。和彦君が彼女と別れた後の1年間。相当彼は遊んだようだね。来るものは拒まずだったんじゃないかと言っただろう。その女たちが麻美に言ったって話していたじゃないか」


・・・ああ、そうだった。和彦と寝た女たちが、私に見せつけるように囁いたのよ。和彦のキスが・・・って。でも、恋人気どりで和彦のそばにいようとしたけど、和彦は一度だけで見向きもしなかったんじゃなかったっけ。それで大学を卒業して地元に戻ったから、女たちは諦めるしかなかったんだよね。

・・・って、この部分を話した覚えがないんだけど。あれ? 


「あと、彼に前に泣かされた時に、キスマークつけられたのはどっち」


・・・ええっ? なんで知って・・・。えっ? 私、これも話したの?


「まあ、いいか。今からじっくり話し合うことだし」


はい?


「やっぱり優しいキスは性に合わないわ」


えっ? えっ?

って~、唇をふさぐな~。



結局、言わされましたよ。本気で怒られた時に何があったとか、キスマークつけられた時の事とかを・・・。

『夫婦に隠し事は無しだよ』なんて言ったけど、まだ結婚してないやい!



服を着替えて送ってもらいましたよ。千鶴のところに。泊まる予定だったから、着替えを先に置いておいたんだよね。このまま家に帰ったら両親になんかあったと思われちゃうものね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ