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155 悪友に起こったことの思い出話

和彦の父親はその時には課長をしていたかな。年齢は40歳くらいだったと思うの。仕事はできる人だったみたいね。見た目が歳より若く見える人だから、女性に言い寄られることが多かったみたい。そこいら辺の事は、本当によくはわからないのよ。わかっているのは、父親に懸想した女性が、ストーカーまがいのことをして家を突き止めて、和彦のことを知ったのよ。何を思ったのかその女性は和彦に近づいたの。最初は家族を壊して自分が成り代わろうと思っていたみたいだけど、振り向いてくれないからその息子にターゲットを変えたようで・・・。


えーと、その、つまり・・・まあ、そういう関係になったんだって。和彦は一度で終わるだろうと思っていたようだけど、その女性は和彦に何度か関係を迫ったそうなの。そのうちに女性のほうが和彦に落ちたみたいで、尻尾を振ってくるようになったのね。・・・えーと、和彦がそういう言い方をしたのよ。本人に言わせると、欲を覚えさせたんだから処理につき合わせていただけだったとか。


えーと・・・それで、この話を聞いて兄が和彦のことを怒ったのよ。声を荒らげたりしなかったけど、あの言い方じゃあ和彦も身に染みたと思うわ。話し終えた和彦に冷たい声で兄は言ったわ。


『君はその話を聞かせてどうするつもりなんだ。羨めとでもいうのか。大体勘違いしているようだが、私は君の友達ではない。君の友達なのは妹だろう。だけど、この話を妹にした時点で私は君を軽蔑している。女性に聞かせていい話じゃないだろう。勘違いも甚だしいな。気分が悪いから、もううちには来ないでくれ。出来ることなら妹にも関わるな』


兄の言葉を聞いていた和彦は顔を蒼ざめさせて帰って行ったの。この後、私も兄に言われたのね。


『麻美は彼とこれからどうつき合うんだ。今までの様なつき合いが出来るのか』

『つき合うも何も、多分これだけ言われたらうちには来なくなるでしょ。そうしたら、仲間内で集まる時に顔を会わせるかどうかよね』

『彼とつき合っていないのか』

『つき合うって、カレカノってこと? ないない。そんな関係じゃないもの』

『・・・そうか。それならいいが・・・。だが、つき合いを残すのなら覚悟してつき合えよ』


この時の兄の言葉がね、残っていたと思うのよ。


和彦はその後一度謝りに来て、そこから家には来なくなったの。後はみんなとの集まりで会ったくらいで、その時は相変わらず和彦は暗い顔をしていたかな。私は極力関わり合いにならないようにしたのよね。でも高3の時に会った時には、表情が明るくなっていたから少しホッとしたのよ。不毛な関係を終わらせたのだと思っていたの。


そうして高校を卒業して、私は仲間内にも就職先を話さずに東京に行ったの。だけど、神様は縁を結びたがったのかしら。東京でこれで最後にしようと行ったコミケで知り合った人が、まさか和彦の大学の知り合いだと思わなかったの。たまたまね、学園祭があるからって誘われてね。そんなところに行く機会なんてこれを逃したらないだろうと思ったから行ったのよ。誘ってくれた人のサークル名と販売しているものを聞いていたから、他にふらつく前にブースについたのよ。その人を呼んでもらおうと思ったら「あっ!」という声が聞こえてきたのね。


見たら和彦じゃない。私もつい和彦のことを指さして「あ~~~!」と叫んだけど、悪くないわよね。そのまま、なんとなくそのサークルのところにいて・・・気がついたら作るのを手伝っていたの。だってね、見ちゃいられなかったのよ。生焼けでお客に渡そうとするんだもの。えっ? 何を作っていたかって? お好み焼きよ。なんでそんな時間がかかるものにしたのかしらね。私ならホットドックぐらいにするのに。あと、気温にもよるけど、スープもいいわよね。・・・って、これが2年目に採用されて、また手伝う羽目になったのよ。キャベツの千切りを頑張ったのよね。


・・・そんな話はいらないわよね。まあ、そういうわけで、終わった後の打ち上げに誘われて、なし崩し的にとも君のお気に入りになってしまったのよ。あー、とも君は女の子よ。ヅカに行ったら人気がでそうなカッコイイ女の子。名前は朋子さんね。


それで、ここから帰る時に和彦が寮まで送ってくれたのよ。でも、まあ、気まずいこと気まずいこと。話すことなんてないもの。でも、とりあえず連絡先の交換はしたわ。さすがに寮に電話は掛けにくいのか、和彦じゃなくてとも君が掛けてくることが多かったかな。


何回か会った後に、あれからのことを聞いたのよ。あの女性とは高3まで関係があったそうなの。でも、大学に進学が決まったことでこっぴどく振ってやったのですって。あと、好きな人が出来たと恥ずかしそうに報告もされたわ。


その人がまさか知り合いだとは思わなかったのと、人妻だなんて、知るのはもう少し後だったけどさ。


でも、暗さが無くなっていたから良かったと思ったのよ。

とにかくこれで、なんとなく和彦との付き合いが再開されちゃったのよね。


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