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154 悪友の変化についての思い出話

中学3年になるまでは、和彦は背が低くて私と変わらないくらいだったの。それが中学を卒業して高校に入った1年間で急激に伸びたのよ。それに合わせて顔も長くなって。小さい頃の面影を探すのが難しくなったわね。


和彦と仲良くなった・・・と、いうと語弊があるけど、よく話すようになったのは、中学を卒業して以降よ。きっかけは卒業して最初にみんなで集まった時ね。その時に私は先に本屋に寄ってから、恭介の家に行ったのよ。それで買った本をたまたま見た和彦がその本を読み終わったら貸してほしいと言ってきたの。妹が買って読んでいたけど、成績が下がって父親に本を買って読むことを禁止されたと言ったのよ。


それで、たまに会うようになったんだけど・・・まあ、これは口実で私の兄目当てだったのよね。兄にしては珍しく和彦のことを気に入ったのか、和彦が来ると話をするようになったの。このまま、何事もなければよかったんだけど、和彦にとって嫌なことが続いたのよ。


最初は高1の秋だったわね。たまたま本屋でばったり会ったのよ。前日に発売された本が行きつけの本屋になくて、学校から5分ぐらいの本屋に寄り道したの。そこは通学路とは逆の方角だったのね。和彦も通学路とは違ったけど、同じ理由でそこの本屋に寄ったそうだったわ。


お互いに本を買った後、一緒に帰ることになって、車の多い表通りじゃなくて、住宅街の中を抜けて自転車を走らせていたの。その時にある家のところで和彦が止まったのね。どうしたのかと思って私も止まったんだけど、すぐに「なんでもない」って自転車を走らせて。


それからひと月ぐらいして、また私はそこの本屋に寄って、前に通った道で家路についたのよ。そうしたら、その途中で和彦を見つけたの。私に気づいた和彦はバツの悪そうな顔をして、何も言わずに行ってしまったのね。わけが判らなかったけど、和彦がいたところが、前回彼が止まったところだと気がついたわ。


それから3~4日後かな。その日はいつも通りに学校を出て、いつもの本屋に行く道で家に帰ることにしたの。その途中で和彦が待っていたの。話があると言われて戸惑ったわ。深刻そうな顔をしていたし、相談に乗れる自信はなかったから。いつも行く本屋のそばに少し大きい公園があってね、本を買った後そこの公園で話を聞いたの。


和彦の話は・・・父親の浮気のことだったの。前回の時に父親に似た人があの家に入っていくのを見たんですって。その後も気になって、時間がある時にあそこの家のそばに行ってみたそうなの。それで私が和彦を見かけたあの日、和彦の父親があの家に入るところを見たのね。そのことに茫然自失していたら私が通りかかり、気まずくて何も言わずに立ち去ったそうなの。


私は何と言っていいのかわからなくて黙っていたのね。そうしたら和彦は本当に苦い笑いを浮かべて言ったのよ。


『悪い。麻美に話してもどうしようもないことだよな。忘れてくれ』


とね。


その後は、たまに兄のところに顔を見せに来る時か、みんなと集まった時くらいにしか会わなかったのよ。まあ、うちに来た時には妹のために漫画や小説を借りていくから、その本を返すためという理由があるから、また顔を会わす機会は多かったと思うのよ。だから、和彦が変わっていくのがよーくわかったんだけどね。


和彦って小中学校の頃はおとなしい感じだったのよ。自分から中心になるような人間じゃなくて、その周りで笑っているような子だったの。それは高校でも変わってなかったんだけど、う~ん、なんていうのかな。暗さが加わったのよね。えーと、陰気になったのとは違って、闇に落ちていくような仄暗い感情を持っているような・・・。そうね、危うい感じかな。


あの後は何も話してくれなかったから、何が彼に起こっていたのか知らなかったの。でもね、やっぱりさ、みんな心配はするわけじゃない。彼の変化って目に見えてわかったからね。だけど、男子にも何も言ってなかったみたいで、和彦がいないところで話したりしたのよ。


高2の7月・・・ではなかった気がするから6月かな。珍しく日曜日に話があるってうちに来たのは。私は兄に話があると思っていたのに、私にも聞いてくれとかいうから聞いたんだけど・・・聞いて気分がいい話じゃなかったわ。


和彦って今みたいな顔になったら、父親にそっくりになったのよ。ということは、和彦の父親もモテる人だったそうなのね。ただ、仕事関係では女性にそっけなかったらしいの。前に浮気相手って言った人は、言い方が悪いけどお妾さんだったのよ。子供もね、いたそうよ。そのことを父親とやりあったらしいの。一応父親は認知していることを認めていて、それから母親もその女性のことを知っていたんだって。だから、両親の間ではそのことは決着がついていたらしいのよ。


和彦は納得できなかったようだけどね。でも、どうしようもないことと諦めたみたい。ただ、父親とは距離を置くようになったといっていたわね。それでもしばらくは平穏だったそうよ。


だけど、これ以上のことが彼に起こったのね。


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