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151 洗いざらいぶちまけてみようか

浩二さんに真剣な目で覗き込まれて、私はふいっと視線を逸らした。口に出すつもりはなかったのに、出てしまっていたようだ。


「麻美」


浩二さんの問うような声に視線を戻して、浩二さんの目を見つめる。


「あのね、浩二さん。私はね、ずるい人間なの。傷つくのは嫌だし、怖い思いとかしたくないの。本当は人付き合いだってあまりしたくないのよ。めんどくさいこともごめんなの。それなのに気がつくと面倒ごとに巻き込まれているのよ。一度そういったものが嫌になって、リセットしたくて地元から離れたの。結局は戻ってきてしまったけどね」

「それって、就職先を地元にしなかった理由かい」


私はコクリと頷いた。


「前に話した資格を取るためにというのも、嘘じゃないのよ。でもねえ、あの頃は息が詰まりかけていたのよ。大体さ、彼らと私につき合いがあること自体がおかしいのよ。彼らは兄に傾倒していたから、高校までは仕方ないかなと思っていたのよ。それ以降はなんでつき合いが続くんだろうと思っていたわ。そうしたら、私の占いのせいだった理由(わけ)なのよ。当たるんだか当たらないんだかわからない占いにひかれてくるって何よ。私にそんな力がなかったら、見向きもしなかったってことよね。男女間でも友情は成り立つと思っていた私がバカみたい。あー、本当に腹が立つ~」


自嘲気味にそう言って笑ったのに、涙がまたポロリと零れ落ちた。わかっていたかのようにまた浩二さんに抱きしめられた。


「麻美は十分魅力的な女の子だよ。彼らだって占いだけでそばにいたいだなんて思わないだろう」

「そうかな・・・私があの兄の妹でなければ、見向きもされなかったと思うけど」


浩二さんの胸に甘えるように頭を擦り付ける。


「そんなにすごいお兄さんだったんだな。そういえばまだお兄さんと会えてなかったな」


浩二さんの言葉に顔を上げて浩二さんのことを見上げて言った。


「ごめんなさい。なんか今年はいろいろなところに行っていたそうで、夏休みもまともに取れなかったの。うちに顔を出したのも移動の途中の2時間ほどだったし。お正月には休みが取れると言っていたわ」


浩二さんの口元に笑みが浮かんで、顔が近づいてきた。軽く唇が合わさってすぐに離れた。


「大丈夫だよ、お義父さんからも話を聞いているから。お兄さんと会えるのを楽しみにしているよ」


もう一度顔が近づいて唇が触れ合う。さっきより少し長めに触れて離れた。そして私の頭を抱え込むように抱きしめる。


「駄目だよ、麻美。そんな潤んだ目で見上げたら、別の会話をしたくなるだろう」


耳元で囁くように言われて、背筋をゾクリとしたものが駆け抜けた。口から変な声がでそうになって、私は唇をかみしめた。


これはわざとだわ。私が浩二さんの低めた声が好きなのを知っているから、わざと耳元で言ったんだわ。


それに今更ながらに気がついた。いつもの癖でスウェットに着替えた時にブラをつけていないことに。眠る時には外すのがいつもの事だったし、起きてから着替えのことなど考えずにいたのもまずかったと思う。


どうにか浩二さんの腕の中から抜け出して着替えをしないと、と思ったの。だけど余計なことを言って浩二さんをその気にさせるのはまずいし。


・・・って、手が。


「浩二さん、キャッ」


背中に回った手がスウェットの裾から中に入り素肌に触れたから、私は抗議の声をあげようとしたけど強い力で押し倒された。そのまま炬燵の中に潜り込むように布団を引っ張る浩二さん。


「ほら、体が冷えてる。麻美は体が丈夫じゃないんだから、ちゃんと温まらないと駄目だよ。本当はこんな風に炬燵に入らないほうがいいのだろうけどな」


えーと・・・はい。すみません。私の頭の中のほうがえっちいでした。


「だけどこうやって麻美のことを抱きしめていると、ついいろいろなことをしたくなってしまうよ」


・・・浩二さ~ん。これは目を合わせちゃいけないわよね。目を合わせたらその場で食べられてしまうんだわ。


「というわけだから、そうならないように話の続きをしようか」

「話の続き?」

「だってそうだろ。麻美が腹立つっていうくらいに、彼らのことが嫌いなんだろう」

「嫌いなわけじゃないのよ。ただ、よく集まるようになったきっかけが納得できないというか」

「だから、それを話してくれよ。そうしたらこれから彼らとどう付き合っていけばいいのかわかるかもしれないだろう」

「まあ、そうね。もともとそのことも話すつもりだったもの。それじゃあ、どこから話そうかしら。そうね、やはり小学校のころからかな」


そうして、私は浩二さんに小さい頃から兄とどういった関係だったのかを話し始めたのよ。


まずは彼らの中で和彦と修二が同じ小学校だったわね。小学校の時には二人とはあまり話したことはなかったの。中学に上がって1年の時に菜穂子と恭介と同じクラスになったの。千鶴とは部活が一緒だったわ。そして2年の時に千鶴に華子女史、智樹、隼人、修二と和彦とも同じクラスになったわね。


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