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142 友人たちとの飲み会 その1

12月の1週目の土曜日です。今年も去年と同じように忘年会を兼ねての仲間内の飲み会になりました。今日は浩二さんは来ません。浩二さんには『みんなによろしく』と『飲むのはほどほどに』と言われたのよ。


「さあ、麻美! 見せなさいよ!」


席に座って飲み物を注文し終えたところで、華子女史が早速私に言ってきた。私はその言葉にそっと左手を見せた。


「へえ~、これが麻美が選んだ婚約指輪か」

「ものほんだー!」

「綺麗ね~。ガーネットだったかしら」

「小さくねえ?」


智樹、隼人、菜穂子、修二の順に感想を言われたけど、修二! 失礼なことを言わないでよ!


「ああ、それね。なんか宝石(いし)を気にいったのがそれだったんだって」


選んだ時の事情を話している千鶴が、私が口を開く前にそう言ってしまったの。みんなの視線がまた集中してきた。


「ということは、麻美のことだから婚約指輪選びでなんかあったということだな」


恭介が代表するように訊いてきた。なので、頷くとあの時の事情を話したのよ。高くて素晴らしい宝石がついた指輪か、自分が思い描いていた色味の宝石の指輪か。やっぱり自分が気に入ったものにしたいじゃない。


そう言ったら、恭介がさり気なく訊いてきた。


「そんなに素晴らしい指輪ならすごく高かったんだろ」

「まあ、ねえ。きっと給料3カ月分じゃ無理だったんじゃないかな」

「へえ~。ちなみにいくらだったんだ」

「その指輪? 確か120万円だったかな」

『120万!』


みんなの声が揃ったのよね。


「ちなみにこれは?」

「これは・・・18万だったかな」


みんなして絶句してしまったのよ。だから、差額で真珠のネックレスを買ってもらったと言ったら、みんなの顔に苦笑が浮かんだのよ。


そこに注文した飲み物がきたのね。とりあえず乾杯をして、私もカシスソーダをごくごくと飲んだの。


「もう一つ聞いていいか。下平さんはその時なんて言ったんだ」

「何って、私の好きなほうを選んでいいって言ったわよ」

「じゃあ、高いほうを選んでいたら・・・」

「そこは気にするなとも言われたわよ」


私は浩二さんに言われたことをそのまま言ったの。


「くあ~。かっけーな。俺もそれぐらい言ってやりたかったけど、無理だわ」


恭介がぼやくように言った。その言葉に?となった私は聞いてみたのよ。


「なんか意味深な言葉が聞こえたけど、どういうこと」

「あっ・・・」


恭介はまずいって顔をした後、「へへっ」と笑った。


「実はさ、俺も結婚が決まったんだよ」

『ええっ!』


またみんなの声が揃った。ちなみに私は参加してないけどね。


「こいつ~。いつの間に」

「そういうことは早くいえよ」

「そうだよ。ほら、お前らもグラス持て! 恭介、おめでとう!」

『おめでとう!』

「おう、ありがとな」


恭介は照れた顔をしながら答えていた。このあと、みんなから質問攻めにあった恭介の返答はこうだった。


大学で知り合って、卒業後中距離恋愛をしていたそうなの。遠距離でないのは、会いに行くのに2時間くらいだから。私の結婚に触発されて、彼女にプロポーズをしようと決めたんだって。ただ、このプロポーズが締まらない結果になったらしいの。何があったのかは詳しく教えてくれなかったけど、びしょぬれになった恭介に「もう、しょうがないな。こんなんじゃ心配で離れていられないじゃない。そばで見張っているしかないわね」と、言ったそうなの。


これって彼女からプロポーズされたんじゃって思ったけど、みんな何も言わなかったわ。幸せそうな顔で笑っている恭介に、「ご馳走様」と言うだけにとどめたのよね。


幸せな気分で杯が進み「そういえば」と思い返していたら、「なんだ」と和彦に返された。みんないつものように席を移動して、今は和彦が私の隣にいた。


口に出したつもりはなかったのに、出ていたみたい。


「なんでもないよ」

「そうか~。なんか含みを感じたけどな」


和彦が笑いながら言ってきた。今日の和彦は機嫌がすごくいい。恭介の結婚話がうれしかったのだろう。真逆に見えるのに、なんか二人は気が合っていたのよね。


「う~ん、ちょっと思い返していただけよ」

「思い返していたって何をだ」


軽い調子で和彦が訊いてきたから、私も軽~く返す。


「んん、このメンバーで誰もくっつかないまま終わりそうだと思っただけよ~」


私の言葉にみんなの会話が止まる。あれ? 変なこと言ったかしら?


「おいおい麻美、何を言い出すんだよ。この中で恋愛関係ってないって」


恭介が笑い飛ばすように言ったけど、少し頬が引きつっているみたい。


「え~、私、知っているのよ。中学の時に千鶴と隼人がつき合っていたことを。二人は高校で自然消滅したんでしょ」


軽く首を傾げるように言ったら、何故か二人の顔から表情が消えた。


「有名だったのは華子女史と足達君だったけどさ。ああ、恭介もようちゃんとつき合っていたんだっけ」


思い出しながら指を折る。あとは


「そうそう、菜穂子と智樹もつき合ってたよね。私が向こうにいる間だから、高校を卒業してから。でも、一年くらいで別れたようだったし、二人は何も言わなかったから、けんか別れじゃないんだよね」


みんなの視線が菜穂子と智樹に集中して、二人は首を振り合っていた。


「それと和彦って、中学の頃に千鶴のことが好きだったでしょ。でも、高校の頃にはもう別の人のことを好きになっていたよね。・・・そういえば、この中で修二だけはわからなかったのよね」


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