141 結婚式の打ち合せ 両親と一緒に *
11月の3週目の土曜日です。沢木家、下平家の両親と共に結婚式場にいます。ここに来る前に、浩二さんの婿入り道具のタンスをうちに運びこんでから来たのです。泰浩さんと博美さん・・・ではなくて、お義父さん、お義母さんにも新居になる部屋を見せることになりました。何もない部屋にタンスが入って少し生活感が出た気がします。
来週には浩二さんが注文したオーディオが届くそうなの。そうしたらこの部屋も、もっと生活する部屋になっていくのでしょうね。
さて、丸山さんと共に、先ずは披露宴の料理の確認をしながら決めました。次に引き出物のこと。やはり浩二さんの住んでいるところが焼津ということもあり、鰹節は欠かせないそうです。他に浩二さんと意見が一致した小皿のセットと、あとはお菓子。これもこちらの地元のお菓子で秋月堂のあぱれいゆというお菓子に決めました。アーモンドプードルの入ったケーキにラズベリージャムをサンドしたものを、クッキーで包んであるものです。
なんかあっさり決まってしまって、これなら両親はいらなかったじゃないと思ったけど、この考えは甘かった。
結婚式は神式ですることが決まり、ここから着物選び。何故か母とお義母さんの気合が入りました。みんなで着物がある部屋に移動して見始めたのですが、早々に父親たちは脱落しました。もちろん、浩二さんも連れ出されましたとも。
白無垢は簡単に決まりました。決まらなかったのは色打掛のほう。お義母さんが張り切って柄について、ああでもないこうでもないと言いました。鶴が舞っている柄や御所車があるもの。他にもおめでたい柄がいっぱいです。その中からどれにすると言われましたけど、私は着物が着られるだけでうれしいので、どれでもいいです。
最終的にお義母さんは鶴が舞っているものか、前の下寄りに御所車があるものかの二択になりました。私にあてて見ていますけど、もうどちらでもいいので決めてください!
父たちも呼んでどちらにするか、決めることになったのよ。
「麻美さんは色が白いからどちらも似合うのよね」
お義母さんがそう言ってお義父さんのことを見ました。お義父さんは困って父に視線を向けました。
「お父さんはどう思う。私もどちらも捨てがたくてねえ」
母も父にそう言って見つめています。視線が集中した父は困って浩二さんのほうを見ました。私が何か言う前に浩二さんが訊いてきました。
「麻美はどちらがいいんだ」
「う~ん、私も決めきれないのよ」
家族みんなで困っていたら、係の方が「それではお嫁様にあてて見ましょうか」と言ったのよ。
その色打掛を私に着せかけてくれて、顔映りを確認します。どちらも試着したけど、みんなは首を捻っていました。私もまだ決めかねています。
「それではこうしましょうか」
係の方は私の右と左に両方の打掛をかけてくれました。両方を間近で比べて微かな色の違いが判りました。色味は鶴のほうが少し朱色っぽい感じで、御所車のほうがより赤く感じました。
「あら、こう見ると鶴のほうが麻美さんに似合うわね」
「そうですね。御所車のほうがどぎつい感じがするような気がします」
母たちが頷いているので、鶴のほうに決定するみたいです。
「麻美も鶴のほうでいいのか」
浩二さんの問いに私は姿見に移った自分の姿を見てから、にっこり笑顔付きでいいました。
「うん。私もこちらのほうが好きだな」
これで着物のほうは決定したから、今日の打合せは終わりよね。
・・・そう思ったのは甘かった。
「それでは着物に合わせて、こちらの髪飾りはいかがですか? それにこちらを付け加えますと、大名の姫君みたいになりますよ」
係の方が出してきたのは、櫛やかんざしのセットです。それから、付け髪として束ねた垂らし髪がありました。これを垂らした大名の姫君って、時代劇で居たかしら?
打掛を衣桁に戻した係の方は鬘と付け髪を持ち、「こんな感じです」と見せてくれました。それを見た母とお義母さんの目がキランと光った気がします。
「あら~、いいわね。麻美さんは私と違って背が高いから、これなら映えるわよ」
お義母さんは母とあまり身長は変わりません。つまり150センチないのです。私は158センチあるので、二人からしたら背が高く見えるのでしょうね。
えーと、この鬘は文金高島田で、その上から被るのが綿帽子。披露宴の時には綿帽子がなくて、角隠しもない状態で・・・。で、こちらのべっ甲などが綿帽子の下につける飾り。
それから、前櫛、前挿、中挿、後挿? これがそれぞれの名前ね。あっ、この花飾りの簪が可愛いな。下がって揺れているこれ。真珠がついているのもいいな。
あっ、付け髪って尾長っていうんだ。尾長もいくつかあるのね。色打掛に合わせて赤い布で纏めてあるものと、組み紐で纏めてあるもの、金色の布で纏めてあるもの等があるのね。そうねえ、金色が華やかじゃない?
そんな感じで、髪飾りも決まりました。これで着物は決定です。ドレスは私の好きにしていいと言われてしまいました。こちらはどうしようかな。今度千鶴につき合ってもらおうかしら。




