14 気の置けない友人達 前編
12月の1週目の土曜日。4カ月ぶりに会った友人達。私には中学から腐れ縁のように定期的に会う友人達がいた。会う時はほとんどが飲みを伴っていた。
私達は女性が4名男性が5名のグループだ。なんで集まるようになったのかは覚えていない。高校だってみんなバラバラの学校に行ったもの。
女性の一人、香滝千鶴とは中学の部活が一緒だった。中2の時に一緒のクラスになり、そこからより仲良くなったと思う。
志岐菜穂子とは中学の3年間同じクラスで、出席番号が毎回前後だった。
周防華子は、中2、中3と同じクラスになった。
男性の方は佐藤恭介、鈴木智樹、伊藤修二、三浦隼人、渡辺和彦の5人。
彼らとの共通点はやはり中2の時に一緒のクラスになったこと。私はこの中では妹ポジになっている。気がつくと頭を撫でられていることが多々あった。身体的なことをいうなら、菜穂子の方が私より5センチも低い。だけど菜穂子は、みんなから揶揄われることはあっても、頭を撫でられることはなかったの。
何で私だけなんだろう。それがちょっと不満だった。
お店に入ってまずはビールで乾杯をした。料理が来て取ろうとした時に菜穂子が声を上げた。
「麻美、ちょっと待って。ねえ、よ~く見せて」
私はギクリとなった。そんな私の様子にお構いなしに、菜穂子は私の左手をつかんできた。
「これって・・・ねえ、麻美。この指輪ってどうしたの」
菜穂子はニヤリという感じに笑ってそう言った。その声にみんなの視線が私に集中した。
「なんだって、指輪?」
「気に入ったからしてきたとか」
「バーカ。今まで指輪なんてしたことがなかったろ、麻美は」
「じゃあ・・・」
「男から貰ったのかな」
冷静な華子女史の言葉にもう一度視線が私に集まった。その視線に居たたまれなくなった私は、小さな声で言った。
「えーと・・・はい。彼から貰ったの」
「「「「「ええっ~!」」」」」
そこから、みんなの質問攻めにあった。いつからのつき合いだとか、どんな人だとか。だんだん質問が答えにくいようなことになった所で、千鶴の鉄拳がみんなにおみまいされた。
そのあとはいつものみんなに戻って、お互いの近況などを話していった。会話の中心が私じゃなくなったことに安堵しながら、私はみんなの言葉に耳を傾けていたの。
◇
料理もほとんど食べ終わった頃、一人の男が席を移動して私の隣にきた。渡辺和彦だった。
「麻美、おめでとう」
「ありがとう、和君」
酎ハイが入ったグラスを掲げ持ったから、私も自分のアプリコットフィズのグラスを持って、軽く触れ合わせた。
「それにしても水臭いな。俺にくらい教えてくれてもいいだろう」
「それこそおかしいよね。和君に教えるなら菜穂ちゃんや華子女史に先に教えるわよ」
そう返したらニヤッと笑ってきた。
「俺と麻美の仲なのに」
「どんな仲よ。みんなの中でつき合いが長いだけじゃない」
目を細めて睨む真似をしたら、和彦も「おー、怖い怖い」と肩を竦めていた。
「まあ、冗談は置いておいて、本当に良かったよ。麻美が恋をする気になってさ」
「えーと、その節はご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないよ。それに麻美に世話をかけたのは俺の方が先だし」
「私は何もしてないってば。あの時は私が一番近い所にいただけだし」
「それでもだよ。それに俺は肝心な時に助けてやれなかったしさ」
「それもさ、もういいにしてよ。和君は大学を卒業して帰った後だったから仕方ないじゃない」
そう言って和彦と見つめ合う。和彦は真顔に戻っていたのに、またニヤッと笑った。
「あ~あ、こんな事なら立候補しときゃよかった」
「何に?」
「麻美の彼氏に」
「あー、それなら俺も~」
隼人も軽い調子で混ざってきた。
「悪いけど、ごめん被るわ」
「え~、なんでだよ」
「好みじゃないから」
私の言葉に隼人は「やられた~」と言って胸を押さえてから、ばたりと倒れた振りをした。それをみんなが笑って見ていた。
私は腕時計で時間を見てみんなに言った。
「そろそろ出ないと次の店の予約の時間になるよ。この唐揚げ。あと1個、誰が食べるの。タコ唐揚げは恭介がなくしてね。おでんの玉子・・・華子、任せた。菜穂ちゃんは大根、よろしく。そのフライ、智樹、修二、隼人で。千鶴は、ああ、それね。じゃあ、私はこのポテトを片付けるね」
残った料理とコップを空にした私達は、会計を済ますと、二次会のカラオケ店に移動した。
◇
予約してあった部屋は12人くらいが入れる、少し大きめの部屋だった。部屋に入ったら歌うのが好きな恭介と隼人と智樹でマイクの奪い合いになった。それを千鶴が諌めている間に、他のみんなが1曲ずつ選んで入れていった。
自分の分を歌い終わり、お手洗いに行った。戻るとまたみんなが移動していて、空いているのは和彦の隣だけ。座って菜穂ちゃんの歌を聴いていたら、和彦が話しかけてきた。
「麻美、次は何を歌う」
「う~ん、ここはみんながどんより暗くなるように中島みゆきにしようかな」
「なんで暗くさせようとするんだよ。そんなのを歌うよりデュエットしないか」
「・・・あまり知らないわよ、私」
「ここいら辺のやつは」
「銀恋・・・ありきたり。ラブゲーム・・・は、ヤダ。いっそ、枯れすすきにする?」
「枯れすすきは俺がヤダ。まだカナダからの手紙か、ロンリーチャップリンの方がいい」
「う~ん、じゃあ、ロンリーチャップリンで」
「了~」
予約を和彦に任せて私は修二の歌に手拍子を始めたのだった。




