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139 今更気づいた本当の気持ち

「あの、近いから。・・・離して」


浩二さんの胸に手をついて懇願するように言ったけど、それをどう取ったのか浩二さんは震える声で言ってきたの。


「やっぱり麻美は・・・。そうだよな、俺よりよっぽどかっこいいし、麻美とは気心知れているし。いつ彼に対する本当の気持ちに気づいたっておかしくはなかったわけだし。顔を背けるくらい俺の顔を見たくないんじゃ・・・。えっ? 麻美?」


浩二さんの言葉に驚いて視線を浩二さんに向けたら、目がばっちり会いました。そして目が合ったとたん、私は顔から火を噴いたと思えるくらいに、顔を真っ赤にしたと思うの。浩二さんの右手が緩んだから、赤くなった顔を隠すために浩二さんの胸に顔を埋めるようにしたの。


「えーと、どういうことかな、麻美」


浩二さんが困惑した声を出している。わかっているのよ。自分でも過剰反応しているって。でも、どうしようもないのだもの。早くなった鼓動が少し治まるのを待って、顔を上げて浩二さんのことを見つめた。


「あのね、浩二さん。怒らないで聞いてくれる」

「怒るって・・・別れ話とか」


恐る恐る浩二さんは言った。


「なんでそうなるのよ。・・・じゃなくて、どちらかと言うと、浩二さんに呆れられちゃう話なんだけど」

「別れ話でなければ何でもいい!」


そこはあとで問い詰めようかしら。なんで私が別れ話をするなんて思ったのか。


「えーとね、本当に今更なことというか、自分のバカさ加減に呆れたというかね」


そうして私は、約ひと月前に元カレを見かけてからの、物思いについて話したのよ。元カレを見かけたことで心を揺らして、あの日は浩二さんと一緒にいたいと思ったこと。そのあと体調不良に陥り寝ているしかできなくて、いろいろ考えすぎてしまったこと。和彦が様子を見に来て、その時に父と和彦の話を聞いてしまったこと。そこからもう一度自分の気持ちを見つめ直して、ある結論に達したと話したの。


話を聞いた浩二さんは顔色を変えたのね。


「あの日、麻美の様子が少しおかしいなと思ったけど、そんなことがあったとは思わなかった。一人にしてすまなかった」

「ううん。私も浅井さんに友達との付き合いを邪魔しないよねと言われていたから、素直に言わなかったのが悪いのよ」

「・・・浅井のやつ、余計なことを」


浩二さんが舌打ちをしたそうな顔で呟いた。


「それで、結論ってどんなことかな」


浩二さんが促すように訊いてきたけど、若干声が震えている気がしたの。軽く首を傾げながら浩二さんのことを見たら、また目が合って私は顔が真っ赤になった・・・の。すぐに目を逸らしたんだけど、浩二さんが訝しそうに見ていたわね。


「えーとね、その、和彦が言った、浩二さんが父さんに似ているってことを考えていて・・・」


そうなのよ。あのあと、眠れなくなって和彦が言ったことや、今までのことを思い出して自分の行動を思い返したら、浩二さんに最初から気を許していたじゃないって気がついたのよ。それに家族として愛せる人だなんて言ったけど、もう実質家族みたいじゃない。一緒にご飯を食べて一緒の部屋で眠って。隣に浩二さんがいる安心感っていうのがね。結婚したらこれが毎日になるのよね。


そう考えたら、これが幸せなのかなって思って。そうしたら、なんか胸にすとんと落ちてきたものがあったのよ。


ああ、私は浩二さんのことを愛しているんだなって。


そうしたら、あんなにぎゃあぎゃあ言っていたことが恥ずかしくなってさ。気づくのが遅すぎていたたまれないというかね。


「というわけで浩二さんの顔を見ると、恥ずかしさといたたまれなさで赤面するようになってしまったのでした」


何とか説明を終えて、顔を赤くしたまま俯いていたの。浩二さんに呆れられているだろうなと思って、顔を上げることができない。前に浩二さんに告白されたときにも言われていたのにね。私の性格なら気を許した人でないとそばに寄せ付けないだろうって。それを納得しきれていなかったのよ。本当に頑固な自分が嫌になるわ。


浩二さんが何も言わないので顔をあげてみてみたら、何故か驚いた顔で動きを止めていたの。なんか少し涙目な気がするのはなんでかしら?


「あの、浩二さん?」


小首を傾げて覗き込むように見つめたら、浩二さんがハッとしたような顔をしてから、私のことを抱きしめてきたの。


「麻美、よかった。俺も愛しているよ」


そのまま口づけをされたけど、いつも以上に激しくて意識を飛ばしかけました。頼むから呼吸はさせてください。


って、口づけから解放されてぐったりしている私を見て「また、やりすぎた」はないでしょう。昼間から、何してくれんのよう!


さて、私の呼吸も落ち着いたので、浩二さんのことを問い詰めましょうか。

ん? 赤面はどうしたのかですって? 

浩二さんに話したからなのか、キスで意識が飛びかけたからなのか、赤面はどっかにいきましたけど、なにか?


「ところでね、浩二さん。さっき変なことを言っていたよね。私が本当の気持ちに気がついたとかなんとか。あれってどういう意味かしら」


ニッコリ笑顔で私は浩二さんに迫ったのよ。


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