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138 結婚式の打ち合わせ 後編 *

出来ることなら披露宴は、なるべく会場に居たいけどそれは無理みたいね。お色直しをしないでずっといることってできないのかしら。そう思ったから聞いてみたけど、流れ的に間が持たないよと、言われてしまったのよ。そういえば従姉の結婚式に出た時にも、お色直しを何回かしていたものね。


悩みだしたら、丸山さんが苦笑を滲ませた声を出した。


「今すぐ決めなくていいですよ、麻美さん。それより浅井君、さっき言っていたBGMのことだけど、他に使いたい曲はあるのかな」

「スライド写真の時には下平が好きなアーティストの曲にしようとは思っています。他に麻美ちゃんが好きな曲があれば考えるよ」

「私が好きな曲ですか? そう言われると悩みますね。えーと、渡辺美里さんの・・・桜が歌詞に出てくる曲は?」

「麻美ちゃん、あれは結婚式に向かない曲だよ」


浩二さんの車で良く聞いていたから、思いついて言ってみたけど歌詞的に駄目みたい。それじゃあと考えて・・・。


「あの、ディズニーの曲でもいいんですか」

「大丈夫だと思うけど、曲にもよるかな。どんな曲かい」

「えーと、ディズニーのスタンダードな曲を、オルゴール調にアレンジされたものです。私はこの中の『星に願いを』がすごく好きなんです」

「オルゴール調か。それなら麻美さんが感謝の言葉を言うときに流したらいいんじゃないかな」


待って。それって私が泣いちゃうパターンじゃない?


「それはいいかもしれないな。静かな曲調で麻美が両親に感謝の言葉を読み上げる。感動するだろうな」


浩二さん、何を想像しているの? なんか妙な期待はしないでほしいな。


「それでは麻美さん、次の時にその曲を持ってきてください」

「わかりました」

「それじゃあ、これを持って帰ってご両親と相談してくださいね」


丸山さんが渡してきたのは料理のパンフレットでした。来週までにどうするか決めておいていうことでしょう。


結局打ち合せのはずなのに何も決まらないまま、結婚式場をあとにしました。来週に両家の両親と共に来て決めることになるのでしょう。


浅井さんも一緒に沢木家に来ました。私が言ったオルゴール調のディズニーの曲が、気になったみたいです。


「へえ~、ここが麻美ちゃんの部屋か~」

「あまり見ないでください」


浅井さんを案内したのは私の趣味部屋。カラーボックスに漫画や小説が並べてあるの。あまり物は置いてなくてすっきりとしているとは思うけどね。CDを取ってラジカセにセットして、『星に願いを』をかけたの。リラクゼーション効果があると謳ってあったから、聞いているとリラックスできるのよね。


「いいねえ、これ。これなら言葉を言うのに邪魔にならないよ」


浅井さんがそう言ったら、浩二さんも頷いていた。確認が終わったら浅井さんは早々に帰っていったの。

浅井さんを見送って部屋に戻った私は、落ち着かない気持ちで一度座ったのにすぐに立ち上がった。


「麻美、どこに行くんだ」

「あの、飲み物を持ってこようと」


そのまま歩き出そうとしたら、手を掴まれた。


「今はいらないから、麻美も座って」


引っ張られて浩二さんの横に座ることになりました。私が座ると浩二さんはカバンからパンフレットを取り出しました。それを広げて浩二さんは私に言ったのよ。


「麻美、このテレビとオーディオを購入しようと思っているけど、どうかな」


広げたのはテレビとオーディオのパンフレットです。ビデオデッキもあるわね。でもね、パンフレットのページを広げて言われても、私はあまりオーディオには興味がないの。テレビも見ることが出来るのなら何でもいいかな。


「えーと、私にはわからないから、浩二さんにお任せします」


そう言ったら浩二さんは「わかった」と頷いたの。それからそのパンフレットを片付けると、丸山さんから渡された料理のパンフレットを出したのよ。それを広げたから、私もそばに寄って一緒に覗き込んだの。


「コースは洋食、和食、和洋折衷に、あとセレクトできるタイプもあるんだな」

「本当ね。それならセレクトにして、ブライダルフェアで試食したローストビーフは入れたいよね」


横にいる浩二さんのほうを向いて答えて、目が合ったら私はパッと視線を逸らしたの。


「麻美?」


浩二さんが訝しそうに声をかけてくるけど、私は浩二さんの顔を見れずに顔をそむけたまま「やっぱり飲み物を持ってくる」と立ち上がろうとしたの。


「待った」


腕を掴まれて立ち上がることが出来ませんでした。浩二さんが顔を覗き込むように見てくるけど、私は目を合わせないようにしました。


「麻美、なぜ目を合わせてくれないんだ」

「えーと・・・」

「なんかやましいことがあるとか」


(そんなものはないけど・・・)


浩二さんの左手が腰に回り、身動きが出来なくなった。それから浩二さんの右手が顎にかかり、浩二さんのほうに向けられたのよ。


「離して、浩二さん」

「麻美。答えてくれないとわからないよ。それとも俺の顔を見るのも嫌なくらいになったとか」


視線を合わそうとする浩二さんを避けて右左と目を向けるけど、顎を掴まれているから逃げられないのよ。



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