136 薬に関する結末
11月の2週目です。咳もめまいも治りました。ク~、長かったです。
10月の最後の週の水曜日。薬の副作用でひどいめまいに襲われて動けなくなって・・・。
金曜日にもう一度その病院に行って、『薬のせいなのかひどいめまいを起こしました』と言ったら、医師は薬の本を取り出してパラパラと見て『本当だ。めまいの副作用がある。・・・でも珍しいな。滅多に出ないのに』と、のたまわった。そして、まだ咳が治っていない私にほかの薬を処方してくれたけど『これも弱いけどめまいの副作用があるんだよな。まあ、あまりひどいようなら飲むのをやめて、また来てください』と、言ったのよ。
結果は・・・前の薬ほどではないけど、めまいが継続されたのよね。翌週の火曜日に怒った父に連れられて、近所の医院に連れていかれたのよ。そこで先生にこれこれこうと父が話し、処方された薬、前回の薬と今回の薬を見せたのよ。(父は咳が治らないだけでなく、めまいを起こすような薬を飲むなと、取り上げたのよね)
その薬を見せられた先生は、やはり薬の本を取り出して、副作用について調べた。そして、おもむろに電話を掛けだしたの。おとなしく座って話を聞いていたら、私がかかった総合病院の医院長に繋げと言ってました。私は大事になってしまうと顔を青ざめさせたけど、先生と医院長の話を聞いていて、別の意味で顔を青ざめさせることになったのよ。
合わない薬を飲むことのリスクを先生が滔々と述べたら、医院長は慌てだしたらしいけど、先生は言いたいことだけ言って電話を切ってしまったのよね。
「沢木さん、後ほど医院長や医師が訪ねていくかもしれないけど、いいですか」
「今更こんでいいが」
「そう言わずに。ここはきっちり謝罪させるべきです。それを受け入れる受け入れないは、沢木さんが自由にしてくれて構いませんから」
「謝罪を受け入れなくてもいいんですか、先生」
「ええ、構いませんよ。それよりどうしますか。なんでしたら世間的に公表しても構いませんけど」
「世間的にとは?」
「メディアに匿名で情報を流すというやつです。この前も杜撰な対応をした病院がニュースになっていましたよね」
父が私の顔を見てきたので、私は頭を振った。それを見て父も頷いた。
「そこまでしなくてもいいです。娘も名前が出るような事態にはなりたくないようですし」
父の言葉に先生はにっこりと笑いました。
「沢木さんならそう言っていただけると思っていました。一応、今回のことの脅しとして今の話は使わせてもらいますけどね」
「いや、先生。それは」
「沢木さん、今回のことは医療従事者として、私からも謝罪させてください。麻美さん、辛い思いをさせてしまい、済まなかった」
真面目な顔になった先生が背筋を伸ばしてそう言うと、頭を下げてきました。
「いや、先生は何も悪いことはしてないじゃないですか。それよりもいつもなら先生に診てもらうのを、別の所に行ったわしらのほうが不義理をしたというか・・・」
父が慌てて先生に言いました。
「いえいえ。患者には医師を選ぶ権利があるのだから、別の病院に行くことは間違ってないのです。今回はあたった医師が悪かったと思います。まかり間違ったら最悪の事態になりかねなかったのです。麻美さんはアレルギーはないといっていましたけど、薬の副作用もアレルギーみたいなものなんですよ。だから、たまたまあたったで済ませていい話ではないのです。それにその医師はその後の薬の処方を間違えました。次の薬はめまいの副作用がないものを選ばなければいけなかったのですよ」
先生は語気を強めて言ったの。
「そこまでですか」
「はい。沢木さんはアナフィラキシーと言う言葉をご存知ですか」
「確か、スズメバチに刺された時なんかに使われてましたよね」
「そうです。薬の副作用も強く出れば、どんな状態になるかわかりません。今回はめまいだけで済みましたけど、意識が混濁するようなことになっていたら。考えるだに、恐ろしいです」
父の顔を見たら青ざめていくのがわかりました。私も同じようになっていることでしょう。
「とにかく、麻美さんがこの程度で済んでよかったです。いつもの咳の薬を出しておきますので、こちらを飲んでくださいね。あと金曜日の朝に、まだめまいが残っているようなら来てくださいね。三日あれば薬の影響から抜け出していると思いますけど」
そう言われて、私達は家に帰りました。念のために今日も寝ていなさいと言われて、私はおとなしく布団にもぐりこみました。午後に本当に病院長と医師とが謝罪に来たみたいだけど、父が冷たい対応で追い返したそうでした。
翌日にも来たそうだけど、やはり私に会わせずに追い返してました。
木曜日に来て、父はやっと謝罪を受け入れたそうです。私にも謝罪したいと言われたけど、私は会いませんでした。
咳のほうは先生から頂いたいつもの薬で、翌週の月曜日には治ったのよ。
そうして、この動けなかった4週間、結婚式の準備が滞ってしまっていたのでした。




