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130 美味しいお店にお出かけです

9月の3週目の土曜日です。今日は夜に浩二さんの友達とお店で飲み会です。なので、今日は私が浩二さんを迎えに行って、結婚式場に行ってからバスで駅前の繁華街へと向かいました。


結婚式場ではこれからのタイムスケジュールを言われました。と、いうことで、ここから結婚式までは寸刻みのスケジュールです。

・・・まあ、少し大げさに言いましたけど。

でも結婚式までに、ここまでに何を決めるとか、招待状をここまでに書いて出し、返信はこの日までにするなどの具体的な話をされて、いよいよ結婚が現実のものになってきました。


先週の結納まではなんとなく他人事みたいな感じでいたのよ。どうしても実感が湧かなくて・・・。

それが結納を交わしたことで、本当に結婚するのだと思えて来たの。


駅前でバスを降りて、浩二さんと並んでお店があるほうに歩いていきます。そのお店は有吉さんが大学時代にアルバイトをしていた時に、知り合った方のお店だそうです。その方は有吉さんが大学を卒業した年に、それまで勤めていた店を辞め自分のお店を持ったそうなの。本当においしいお店らしいから、私も楽しみなの。


前方の信号が赤で、歩道にはかなりの人が、信号が変わるのを待っていた。その中に見たことがあるような後ろ姿を見つけたの。私と浩二さんがその交差点に着くところで信号が変わり、待っていた人たちが歩き出した。


私は浩二さんが指し示すほうに歩いていく。その数歩先を先ほど見つけた人も歩いていた。私は距離を開けたかったけど、浩二さんは早くお店に行きたいのか、少し速足で歩いていた。


彼らが曲がってホッとしたら、浩二さんもそこを曲がった。彼らとの間には他に人はいない。このままだと追いついてしまうと思ったら、浩二さんは曲がってすぐのビルの中に入っていこうとした。


私はそのことにまたホッとしながらも、もう一度彼の後ろ姿に目をやった。


「麻美、こっちだよ」


浩二さんが私を呼んで、私は浩二さんのほうに向かおうとした時に、彼が振り返った。私の姿を見て驚いたように目を見開いたのが見えた。


私は視線を逸らすと浩二さんの後を追うようにビルの中に入っていった。浩二さんは一番奥の店の前で待っていたの。


「どうかしたのか、麻美」

「ううん。知り合いに似た人をみたと思っただけよ」


そう答えて私は笑顔を見せた。引き攣った不格好な笑顔になった気がする。浩二さんは何か言いかけて、結局は私の肩を抱くようにしてお店のドアをくぐったの。


お店の中にはもう有吉さんと結花さんがいた。二人はもうビールを頼んで飲んでいた。


「もうはじめてるのか、有吉」

「ちょっと早く着いちゃったんだよ。それに、手持ち無沙汰だったからな」


悪びれずに答える有吉さん。隣で結花さんも苦笑をしているけど、結花さんもしっかり飲んでいるものね。席に着いたら店員さんがおしぼりとお通しを持ってきた。


「俺はビールを。麻美は何にする」

「ウーロン茶をもらえますか」

「あれ~、飲まないの。麻美ちゃん」

「少し風邪気味なので、今日はやめておきます」


店員さんは飲み物の注文を取って離れていった。本当は少し迷ったの。お酒を飲んでさっきのことは忘れてしまおうかと思ったから。でも、出てくる前に風邪薬を飲んできたのよ。私は薬を飲んだ時には、お酒は飲まないようにしていたの・・・。


コン


意図したわけじゃないけど咳がでた。そうしたら浩二さんは少し心配そうに聞いてきた。


「大丈夫か」

「うん。大丈夫」


いつものことだと笑って見せた。


浅井さんと新屋さんが来て全員揃ったの。藤ヶ谷さんは、今日は仕事で来れないらしい。とりあえず二人もビールを頼み、有吉さんと結花さんも2杯目を注文した。飲み物が来て、みんなでグラスを持つ。


「そんじゃあ、乾杯!」

「違うでしょ!」


と、有吉さんが言ったら、隣の結花さんが速攻で背中を叩いて突っ込んでいた。なんか二人のこの感じはいいな~。


「わかってるって! えー、下平と沢木さんが先週結納を交わし、正式な婚約を済ませたそうだ。目出たいじゃないか~。おめでとう~! かんぱ~い」

『おめでとう~』


みんなでグラスを合わせたら、後ろからもグラスが差し出された。


「おめでとう!」


満面の笑顔でいう赤ら顔の男性がいた。私はその人のグラスと触れ合わせた。そのテーブルの人たちも目が合うと、口々に「おめでとう!」といってくれた。カウンター席からも「おめでとう」という声が聞こえてきた。それに私と浩二さんは「ありがとうございます」と返したの。


この店はカウンターに6席、4人座れるテーブルと8人座れるテーブルがあるだけだった。私達が座っているのは4人のほう。椅子を二つ足して6人で囲んでいるのよ。


注文した料理が来たと思ったら、有吉さんがお店の人に声をかけた。


「マスター、これ頼んでないよ」

「ああ、お祝いだよ。この人たちから」


マスターと呼ばれた男の人は40代前半くらいの人。その人はカウンターに座っている人を指し示して教えてくれた。お皿に載って出てきたのは串付きのフライ。串揚げかしら?


「ありがとうございます。いただいていいんですか」


浩二さんがその人に聞いた。


「おめでたいことを聞かされて気分がいいから食べてくれ」


ダンディな50代後半くらいの男の人はそう言ってくれたの。その後も、他のカウンター席の方から焼き鳥の差し入れを頂いたし、お隣からはボトルを1本プレゼントされて有吉さん達は喜んでいたね。


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