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126 稲刈りに集まったのは・・・

9月も下旬です。今日もいい天気で、絶好の稲刈り日和です。私は集まった面々を見回してこっそりとため息を吐きました。どうしてこうなった?


父と叔父とが稲刈りの話をしている時に、たまたま浩二さんがいたのよね。叔父が手伝いに来ると知って、自分もと言ってくれたのよ。そこから何故か和彦に伝わって、和彦も参加表明をして、おまけで千鶴まで来たのよね。


おかげではんだいを作って束ねた稲を干すのがはかどったけどさ。ありがたや~。

いつもは一日かかるのに、午前ではんだいにかけ終わったの。


あっと、忘れるところだった。実はもう一人来た人がいたの。それは浩二さんの友達の浅井さん。この前宣言した通り、稲刈りの写真を取りにきたのよ。


・・・って、本気で農作業をしている写真を結婚式の会場で流すつもりなのかと思ったわ。他にも私の子供のころの写真があればと言われたけど、実はうちは火事に遭い、高校までの写真はすべて焼けてしまったのよ。だからないと言ったのだけどね。


「なんだ、そんなことなら早く言ってくれれば、今日写真を持ってきたぞ」

「そうよ、麻美。私だったら中学の部活の時の写真もあるじゃない」

「そうだっけ? でもさ、和彦の所に私の写真なんてあるの? 小学校の時に一緒のクラスになってない気がするんだけど」


二人の言葉に、まずは和彦に余計なことをするなという意味で、口撃を加える。こう言ったら、和彦が一瞬デコピンをしようと手を出しかけたのがわかったので、私は浩二さんの影に隠れた。それを舌打ちしつつ、眼を細めながら和彦が言ってきた。


「お前、忘れてんのか。1、2年と5、6年一緒だったろ」

「え~? 5、6年だけだと思ってた」

「覚えてんじゃねえかよ」


軽く和彦に睨まれたけど怖くないも~ん。


「それじゃあ渡辺君。アルバムを見て麻美ちゃんの写真が在ったら、貸してもらっていいかな」

「ええ、もちろんです。他にもみんなで集まった時の写真などを見ておきますよ」


和彦が安請け合いするのを、私は浩二さんにくっついて聞いていたの。


ああっと、また言い忘れ。午後の作業は落穂ひろいや雨除けのビニールを掛けたり、スズメ&鳩除けのネットを張るのよ。これは父と叔父がやるからと、私はまた午後の作業を免除されたのね。


今いる部屋は床の間がある部屋。ここに浩二さんと浅井さん、和彦と千鶴と一緒にいるのよ。あと、ついでにお昼も一緒に食べたのよ。昨日から煮込んでおいた筑前煮や菜っ葉の炒め物、お味噌汁、お新香くらいだったけどね。口に合ったのか、それとも普段はしない肉体労働をしてお腹がすいたのか、お代わりをしてくれたのよ。作った甲斐があるってものよね。


「それじゃあ、私も麻美の写真を見ておくわ」


千鶴も浅井さんににっこり笑いながら言ったのよ。


「香滝さんもお願いするよ。それにしても今日来たのはラッキーだったな」


浅井さんもニッコリと笑いながら言ってきた。なんか嫌な予感がするんだけど・・・。


「渡辺君、香滝さん、麻美ちゃんの学生時代のことを教えてくれるかい」

「ええ、いいですよ」

「何から話します? 私は中学のことならかなり話せると思いますけど」


二人はニヤリという感じに笑ったのよ。・・・おい。


「浅井さん、私が自分で話すけど」

「いやいや、そこは友達からのほうがおもしろいことが聞けるだろう」

「おい!」


私のジト目を気にせずに三人は額をつきあわせるように話しだしたのよ。


結局私はみんなから離れてどこかに行くこともできずに、そばで話を聞いていたの。だって私がいないところで余計なことを言いだすんじゃないかと気が気じゃなかったんだもの。


一通り話を聞き終わった浅井さんは、そのメモを片手に私たちにプロフィールを聞いてきた。まあ、答えにくいこと(体重とかね)は、曖昧にしたけどね。


それが終わったところで私は飲み物を取りに台所に行ったの。戻ってきたら浅井さん対千鶴、和彦という感じになっていて驚いたわ。どちらが先に仕掛けたのかしら?


とりあえず気にせずに麦茶をみんなの前に置いていく。浩二さんのそばに戻ろうとしたら、千鶴に手招きされた。なんだろうと千鶴のそばに行ったら、千鶴と和彦の間に座らされたのよね。なんで?


「ねえ、浅井さん、その言葉ってこいつはどうでもいいけど、麻美に失礼だわ」


私が座ったら千鶴が口火を切って話し出した。ねえ、話が見えないんだけど~。


「俺は思ったことを言っただけだよ。渡辺君の麻美ちゃんに対する感じが、ただの幼馴染みに見えなかったらさ」


・・・なんとなく見えたかしら。午前は私は千鶴と和彦と仲良く話しながら作業をしていたのよね。稲刈り機を浩二さんがやっていた時とか。チラリと和彦の顔を見たら、うっすらと笑っている。


・・・わざとだったのかよ。続けて千鶴の顔を見てみたら、やはりうっすらと笑っている。つまり、前に私を酔い潰したことをまだ怒っていたのかい。どうしようかな。止めたほうがいいかな。それとも黙ってみていようかしら。


私も浅井さんのことはまだ許しきれていないもの。


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