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123 下平家にお泊りの夜・・・

客間に入り困ってしまったの。灯りを消すスイッチの位置がわからない。それに布団は二つ並べてあって、どちらで寝たほうがいいのかしら?


困ったまま布団から外れて座り、持ってきた本を取り出した。


しばらく本を読んでいたけど、だんだん眠くなってきたのよ。昨夜はいろいろ気になってよく眠れなかったから。


意識が途切れて、次に覚醒したのは体を持ち上げられた気がしたから。うっすらと目を開けると浩二さんの顔が見えた。私が目を開けたことに気がついた浩二さんが、困ったように笑っていた。


「ちゃんと布団で寝ないと駄目だろう」


そう言って優しいキスをされた。すぐに離れたから、私はそのまま目を閉じた。瞼にあたっていた光が消えたので暗くなったから、目を開けてあたりを見回した。部屋の隅のほうに明かりを消した浩二さんのシルエットが見えた。


ああ、そこにスイッチがあったんだと思いながら、また目を閉じた。隣に気配を感じながら眠りに着こうと思ったら・・・?


「ちょっと!」


私は眠気をフッ飛ばして声をあげた。私の声に構わずに浩二さんの手が動く。


「何してんのよ」

「何って、前に麻美が言ったじゃないか。ブラをしていると眠りにくいって」


背中に当てられた手がブラのホックを外そうとしている。確かに言ったけど、今日は状況が違うじゃない。浩二さんはホックを外したら、Tシャツの袖からブラのひもを抜き取っていく。


「返してよ。というか、こんなこと、しないで」

「寝にくいって言っていたのに」


抱きしめられてキスをされた。手がTシャツの中に入りこんで、不埒なことを仕掛けてくる。

唇が離れたところで、私は浩二さんに抗議をする。


「駄目だってば、浩二さん」

「どうして、こんなにおいしそうな格好なのに」

「おいしそうって、普通にTシャツと短パンなだけじゃない。夏ならこういう格好で眠るでしょう。浩二さんだって似たような格好をしているわけだし」

「確かに夏だよな」


私の声に浩二さんが返事をしたけど、手の動きは止まらない。腿の辺りを手が滑っていく。


「夏はいいよな。Tシャツ、短パンで。でも、他の男に見せるのはもったいない」

「ん・・・浩二さん、もしかして酔っているの?」

「酔っているかもな。麻美の匂いに」


(・・・完全に酔っぱらいかよ)


また唇を塞がれて、私は思った。どれだけ飲んだのよと。というか、うちで飲んだ時って缶ビール1本だけだったような? 


「浩二さん・・・ねえ、やめようよ」

「どうして? 麻美も気持ち良くなりたくないのか」

「いや・・・今日はいい。・・・というかさ・・・んんっ・・・やっぱ、まずいでしょう」

「なんで?」

「だって・・・浩二さん。博美さんに・・・言われた・・・あっ・・・じゃない。子供を作るなって」


私の言葉に動きを止めた、浩二さん。でも、すぐに手が動きだした。


「こ、こら・・・うん・・・駄目だってば!」

「できないようにするから」


(だから、駄々っ子かよ。・・・じゃなくて)


「私が嫌なの!」


少し強めに言ったら、浩二さんがまた動きを止めた。今度は私から離れると背中を向けてタオルケットを引っ張って丸まってしまったの。どうやら拗ねてしまったみたい。


「浩二さん」

「・・・」

「怒ったの?」

「・・・」

「ああ、拗ねたのね」

「拗ねてない」


ガバッと起き上がって私のほうを向いた浩二さん。薄暗い中でやはり拗ねた感じが伝わってくる。可笑しくなってフッと口元を緩めたら、浩二さんが拗ねた声で言ってきた。


「笑うなよ」

「だって、子供みたい」


プイッと横を向いた浩二さん。本当に子供みたい。


「ねえ、何かあった?」


しばらく黙っていたけど、ぼそりと言われたの。


「親父が迷惑かけたし・・・その、久しぶりだから」


久しぶりっていうほど体を重ねてないけど、と思って、ああっと、納得するものがあった。この間の酔い潰されたことが気になっていたんだと。私より年上だからと、普段からいろいろリードしてくれていたのが、醜態を晒したと気にしていたんだ。


「あのね、明日は仕事よね。浩二さんは仕事に行く前に私を家に送ってくれるんでしょ。だから無理はしないでいいのよ」

「俺は無理してない」


すぐに言葉が返ってきたけど、まだ、拗ねたような言い方よね。


「あのさあ、忘れているようだけど、私のほうが疲れやすいんだけど」


そう言ったら浩二さんが弾かれたように動いて、私はその腕の中に抱きしめられた。


「そうだった。ごめん」

「ううん。だから、もう寝ましょう」


そうして布団に横になったけど、浩二さんに抱きしめられたままだ。


「動けないんだけど」

「・・・」

「それに暑い」

「・・・」

「ええ~い! 離れんか~!」


浩二さんが渋々という感じに放してくれて、今度は私がタオルケットを体に巻いて、背中を向けた。


「麻美~」

「・・・」

「怒った?」

「・・・」

「麻美ってば」

「もう、知らない!」


しばらく浩二さんも目を覚ましていたようだったけど、私の反応がないのでそのうちに眠ってしまったようで、寝息が聞こえてきた。


私はなんとなく釈然としなくてしばらく目を開けていたけど、そのうちに眠ってしまったのでした。


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