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119 私の友人たちは容赦がない! 中編

「浩二さん、麻美の隣に座ってください」


和彦が空いていた私の隣を浩二さんに勧めて、自分はその向かいに座った。


「浩二さん、何にしますか」

「ビールで」


そう聞いて和彦は店員に合図をした。店員がそばに来てビールを二つ注文した。


「お前らは、何か頼むか」


和彦の言葉にみんなも追加の注文をした。私もチューハイのレモンを頼んだ。店員が離れたところで和彦が口を開いた。


「予告なしで連れてきて悪かったな。でも、麻美の婚約者の下平浩二さんが、俺たちに会ってみたいと言ったから連れてきた。異論があるなら帰ってもらうけどどうする」


(どうするって、連れてきておいてどうするはないでしょう~)


私は和彦の顔を睨みつけた。他のみんなは顔を見合わせた後、代表して智樹が言った。


「急なことで驚いたけど、下平さんがよければ、一緒にどうぞ」

「ありがとう」


浩二さんは柔らかく微笑んだ。


「それじゃあ、改めて紹介するよ。彼は下平浩二さん。麻美の婚約者だ。二人は来年の4月に結婚が決まっているんだぞ」

「下平浩二です。これからよろしく」


浩二さんが軽く頭を下げた。


「それで、俺の隣が三浦隼人、その隣が伊藤修二、佐藤恭介、鈴木智樹だ。麻美の隣は志岐菜穂子、周防華子。香滝千鶴は知っていますよね」


みんなは和彦の紹介に「よろしく」と言いながら頭を下げていた。千鶴は自分が紹介された時に手をひらひらと振っていた。


紹介が終わったところにちょうど飲み物が来たから、みんなで改めて乾杯となった。


「それじゃあ、麻美と下平さんの婚約を祝ってカンパ~イ!」

『カンパ~イ!』


ここから私たちはみんなから質問攻めにあったの。どこで出会っただの、プロポーズはどうだっただの。私は言葉を濁しながら適当に答えていったのよ。千鶴と和彦は私が答えるのを笑いながら見ているだけだった。


程よく酔いが回ったところで、修二が和彦に絡むように言った。浩二さんがお手洗いに立っていない隙に。


「なあ、和彦よー。なんで麻美の婚約者なんて連れてきたんだよー。俺への当てつけか」

「そんなんじゃないぞ。俺たちの麻美に浩二さんと彼の友人が仕掛けて、麻美を酔い潰すなんてマネをしてくれたんだよ。だから同じことを返そうかと思っただけだ」


しれっと答えた和彦の言葉に、みんなは顔色を変えた。


「ちょっと待ってよ。本気で浩二さんを潰すつもりなの。ねえ、私もあの時は悪かったんだってば」

「麻美は黙ってなさい。私達が下平さんを許せないのよ」


私は和彦を止めようと言ったけど、千鶴にぴしゃりと言われてしまった。


「で、麻美は何をされたって」


普段馬鹿なことをしそうなときに、止める役の隼人がそういった・


「浩二さんの友人の家で飲んだ時に酔い潰されたそうだ。麻美の言葉を聞いてくれなかったらしいぞ」


かなり事情を端折っているけど、それで通じるものがあったのか、隼人の顔に笑みが浮かんだ。そして店員を呼ぶと彼がキープしているボトルを持ってくるように頼んだ。


「ねえ、やめてよ。浩二さんはそんなにお酒に強くないんだから」

「麻美もそういったけど潰されたんだよな」

「だけど状況が違うじゃない。あの時は家で、ここはお店でしょ」

「大丈夫。そこは加減してやるから」


恭介もいい笑顔で請け負った。どうしようかと思っていたら浩二さんが戻ってきた。


「下平さん、俺はここにボトルをキープしてるんですよ。よかったらこれを飲みませんか」


隼人がちょうどボトルと氷が来たので、浩二さんにそういった。いつの間にかみんなが移動をしていて、浩二さんが座っていた場所には華子女史が座っていた。華子女史の場所には恭介が移動して、恭介が座っていたところには修二が座った。ということで空いている場所は、修二と隼人の間だった。浩二さんは空いている場所を見て、何も言わずにそこに座った。


そして隼人が作った水割りを黙って受け取って飲みだした。隼人や修二が妙に愛想よく浩二さんに話かけている。私はハラハラと見守っていたけど、菜穂子と華子女史に話しかけられて浩二さんのことを見ていることが出来なかった。


気がついた時には浩二さんはかなり酔わされていた。体がフラフラと揺れている。そろそろこのお店を出る時間が近づいていた。


「そろそろ時間だな。下平さん、残りをぐーと空けちゃってくださいね」


隼人が浩二さんのグラスに残ったお酒を飲めと、強要している。浩二さんは頷いてグラスを持った。私はそれを見て手を伸ばした。


『麻美!』


みんなが驚いたような声を上げたけど、それを無視して浩二さんから奪い取ったグラスを一気に煽った。飲み干して、ダン! と叩きつけるようにグラスを置いて、男どもを睨みつけた。


「なんか文句ある!」


強い調子で言ったら、男どもは揃って首をブルブルと振った。


(もう! どうしてくれようか、この馬鹿ども。こんなに濃い水割りを浩二さんに飲ませるなんて。それに浩二さんも浩二さんよ。なんでおとなしく飲んでいるわけ。きっとバカ彦が何か言ったに決まっているんだわ)


私は和彦のことをギロッと睨みつけたのでした。


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