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115 婚約指輪より真剣な・・・ *

・・・やっちまったい。浩二さんにもお店の人にも引かれてしまった・・・気がするの。

でも、後悔はない!(笑)


真珠のネックレスが欲しいと言った私に、店員の方はそのコーナーに連れて行ってくれたのよ。


ここからがお店の人と私との真剣勝負だった。(爆)

まずはざっと値段を見てあたりをつける。それから、真珠の粒の大きさ。


「この辺りの大きさのネックレスをお願いします」


私が選んだのはたぶん、7.5ミリ以上8ミリ以下の粒のもの。それと同じくらいの大きさのネックレスを、ケースの中から10本くらい出して並べてくれた。どれも色目が違う。まあ、あたり前なんだけどね。


「今はこちらの色が出ていますよ」


このコーナー担当の女性店員がニッコリと笑って勧めてくれたのはピンク色が強めのもの。


「ええ、今の流行りがピンクがかった色なのは知っています。でも、私が欲しい色はその色ではありませんから」


私の答えに店員の頬はヒクッとなった。


「そうですか。今は大変こちらなどが人気でございますが」


女性店員はなおもピンク色のネックレスを勧めてこようとした。


「私はこれやこれみたいなピンク系ではない色がいいのですけど」

「それでは、こちらはいかがですか」


女性店員が次に示してきたのは月の色のような淡い黄色がかったもの。私は軽く首を振りながら言いました。


「それも違います。私は冠婚葬祭に使える、銀白色に近い色を希望します」

「それでしたら、こちらやこちらなどですね」


店員が入れ替えてショーケースから追加で出してきたのは、私がサッとみて省いたものだった。


「そうですねえ、色は確かに白色ですけど、これは真珠に傷がありますし、こちらの物は粒にバラつきがありますよね。できることなら、傷がなくて、粒の大きさが揃っていて、真円(しんえん)に近いものがいいのですけど」


私の言葉に女性店員の顔が引きつっている。


「えー、それでは、こ、こちらなどでは」

「私が変わりましょう。あなたは他のお客様の相手をお願いします」


女性店員にそう言って、指輪でお世話になった男性店員の方が私の前に立ちました。女性店員は驚いた顔をして脇に移動しました。


「沢木様、今までの会話から候補としてはこちらとこちら、あとはこちらになりますでしょうか」


そういって私が希望する白い色のネックレスを取り分けてくれた。それからショーケースの端のほうにあったもう2つのネックレスを出してきた。


「こちらは少し小振りなものと大きめのものですが、いかがでしょうか」


確かにどちらも真円に近い粒がそろっていた。私はじっくりとその5本のネックレスを比べていく。


「これはこことここで色に違いが出ていますよね。それにこの粒がかなり楕円になっています。これは大体いいかな。その隣のも大体同じくらいに見えますね。小振りなのはほぼ真円ばかりなようだけど、やはり小物感が拭えない気がします。最後の少し大きめはやはり粒の形にバラつきが出ています。すべてを真円で揃えるのは難しいですよね」


私は顔を上げて店員を見たら、店員の顔には感嘆の色が浮かんでいた。


「おっしゃる通りです。ですが、それはネックレスを作る時にどうとでもできます。ですが、お客様がおっしゃるように真円だけで揃えますとお値段もそれなりになりますよ」

「やはり、そうですよね」


うん、そこはわかっているのよ。そういうものをこだわるのなら、10ミリくらいの粒のものでないと無理よね。そうすると値段も軽く3桁は超えるわけだし。でもねえ、妥協はしたくないわけよ。


「こちらは何ミリになりますか」

「少々お待ちください」


そう言って店員さんは道具を取り出した。これは何だろう? 定規のような、可変式スパナのような?

とにかく一粒一粒を挟んで何ミリなのか見ていった。


「これは7.8ミリ。次も7.8ミリ。これは7.7ミリ。その次も7.8ミリですね。隣のこちらも測ってみますね。7.7ミリ、7.8ミリ、7.8ミリ。ほとんど同じくらいのようですよ」

「そうみたいですね」


私は答えて二つをじっくりと見比べる。


「どうぞ、お手に取ってみてください」


そういわれたけど、真珠は弱いものだからおいそれとは触れない。金具の所を持って目の前に掲げてみた。もう一つも同じようにして「ん?」となった。台の上に降ろしてもっとよく見る。気のせいではない、気になる部分が目についた。


「決めました。こちらにします」

「承りました。ところで沢木様、こちらを選んだ理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「あー、はい。どちらも私が望む色目で巻きもしっかりしていますし、どちらも遜色はなかったのですが、そちらはここのところが巻きの不具合がでていました。少し乱れた模様になっています。あと、こちらの玉にもかすかに傷があります。隠れて表から見えない部分ですが気になりましたので」


そう答えたら、男性店員の方は「ほお~」と感嘆のため息を吐き出しました。


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