113 婚約指輪選び *
7月の2週目の土曜日。今日はジュエリーショップに来ています。6月の3週目にこちらに寄った時にお願いしていた、ガーネットの指輪がいくつか届いたということなの。
ところで最近私は困っているの。あれから浩二さんが今まで以上に甘やかしてくるのよ。本当にね、どうしたものかしらね。
あの浩二さんの誕生日の夜。初めて浩二さんと体を重ねて、気持ちよさを教えてもらえたのね。だけどこの時にちょっとしたことがあって、浩二さんに心配をかけてしまったの。
乱れた息を整えるために口で息をしていたら、喉が渇いて咳が出たの。それもすぐに止まらなくてしばらくコンコンと咳をしていたのよ。
水を飲んで喉を湿らせたら咳は治まったけど、浩二さんが必要以上に心配するから、私は持病の話をすることになったの。
私は喉が弱い。右扁桃腺肥大という病気を持っているから。扁桃腺が肥大したままというだけなんだけど、これで今まで特に困ったことはなかった。この状態だと熱を出しやすいらしいけど、私は特にそんなことはなかったの。風邪をひくといつまでも咳が治らないくらいだけなのよ。
そう説明したのに、浩二さんには体が弱いと思われてしまったの。
心配なのはわかるけど、あれから家に頻繁に寄っていくようになったのよ。
日曜に家に帰る時について来ようとして、しばらく問答をしたの。結局は私が家に帰ったら到着の電話をすることで落ち着いたのだけどね。
そうしたら、翌日の月曜日。仕事帰りの浩二さんが家に来た。顔を見に来ただけと言われたけど、浩二さんが来たことを喜んだ父が夕ご飯を食べて行けと言って、一緒に食事をしたのね。まあ、浩二さんが一人暮らしをしているって知っているからだろうけどさ。食事の後に二人の時間をくれるのはいいけど、それってどうなのよ?
一日おいて水曜日。また浩二さんが家に寄って、夕ご飯を一緒に食べた。この時父がビールを勧めてしまい、飲んだ浩二さんは泊まることになってしまったのよ。・・・いいのか、これは?
また一日おいた金曜日。浩二さんは着替えを持って家に来た。父は喜んで食事の間中、上機嫌に話していた。片付けも母がするからと、私は台所を追い出されて自分の部屋へ・・・。当たり前のように布団を並べて敷くのを手伝う浩二さん。なんかおかしくない?
土曜の朝はいつもの時間に起きれなくて、両親も声をかけてこないって・・・。何かが違うよね。
次の週。月曜から毎日浩二さんは家に来た。夕ご飯を食べた後少しまったり? してから帰っていったけど、絶対何かを間違えている気がするのよ!
水曜から金曜までは家に泊って行ったのよ。飲ませる父が悪いのか、飲む浩二さんが悪いのか? 着替えをちゃんと3日分持ち込んでいたから、確信犯よね。もう、何も言う気にならないわ。
・・・じゃない。一言文句はある。私の読書タイムを返せ~! 浩二さんがいるのに本を読めるわけないじゃない。せっかく新刊を手に入れて、日曜日に半分まで読んで月曜に続きを読むのを楽しみにしていたのよ。昼間に読めばいいって思うでしょ。だけどね、昼の休憩の時には、何故か昼寝してしまうのよ。私はどちらかというと夏に弱いほうだもの。昼寝をしないとやってられないわ。
そうだった。もう一つ文句はあるのよ。どうも私は眠る時にひっついていると眠れないみたいなの。寝返りを打とうして動けないとか、どんな拷問よ!
でも、浩二さんは今週は泊まっていかなかったのよね。夕ご飯を食べに来たのも月曜日の1回だけ。何故かというと、浩二さんはお母さんの博美さんに怒られたのよ。週に2回は夕食を取りに実家に顔を見せていた浩二さんが、この2週間来なかったから、博美さんが浩二さんの所に先週の水曜日に電話したのですって。電話に出なかったから、この日は友達とでも夕ご飯を食べているのだろうと思ったそうよ。そして翌日の木曜日に電話をかけて、またでない。金曜にもかけてでない。母親の勘でピンと来たらしく、土曜日に浩二さんに電話が繋がったところで、実家にお呼び出し! そこで問い詰められてうちに来ていたことを話したそうなの。
ここで博美さんから雷を落とされたのですって。
『まだ婚約もしていないのに、今から入り浸るとは何事なの? それも泊まるだなんて! 恥を知りなさい!』
だそう。
・・・そうなのよね。まだ私たちの関係って結婚を約束した恋人同士だったのよ。結納が済むまでお泊り禁止と、博美さんに言われてしまったらしいのね。博美さんにはもう一言きつい小言を言われたのですって。
『こういう状態で出来ちゃったから結婚式を早めますや、式の時に麻美さんのお腹に子供がいますなんてことになったら、わかっているのでしょうね。あなたは自分の立場をよーく考えなさい!』
お義母さま、素敵です。一生ついていきます。
と、いうことで、我が家に来るのを自粛することになった浩二さんでした。
回想終わり。(苦笑)




