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111 浩二さんの誕生日 中編

プレゼントを買うのが終わり、その後は昼食を食べに移動した。千鶴と和彦が教えてくれた和食のお店に行ったのよ。予約をしておいたから二人で食事を楽しんだ。もちろんここの支払いは私だ。浩二さんは何か言いたげだったけど、おとなしくお金を出させてくれたの。


食事が終わり先週に行けなかったジュエリーショップ巡りをしたの。意外とお店が多くて、でもリーズナブルなお店はそれなりのものを、高級店といわれるお店はそれに見合ったものを置いていることに驚いた。お店の格というのかな、高級店と呼ばれるお店は店の雰囲気からして違っていたもの。


丸山さんに紹介をされたお店にも、もちろん寄ってみた。入口寄りには少しリーズナブルなネックレスや指輪があった。その斜め向かいくらいに真珠のネックレスのコーナーがあって、その奥にダイヤモンドのコーナーがある作りになっていた。ほかの誕生石の指輪はそこより奥に置いてあったけど、やはり数はダイヤモンドに比べると少なかった。


見入っていたら店員に話しかけられた。なので、浩二さんが丸山さんにこちらを紹介されたと話した。今日はまだ決めるつもりはなかったから、紹介状も置いてきてしまったけど、店員の方はそれでわかってくれたのよ。


私の誕生石のガーネットは今は三つしかないと言っていた。見せてもらったものは、あまり色が好きではなかった。なので、前に浩二さんと7月になったら婚約指輪を選びに来ると決めていたので、それを伝えてお店をあとにすることにした。店員は次回までに私の希望に沿うものを用意しておくと言ってくれたの。


私はあまり宝石に興味はないの。でも、宝石に関しては決めていることが三つあった。


一つは婚約指輪は誕生石で。最近は誕生石は関係なしで、婚約指輪はダイヤモンドという風潮になっている。でも、それは嫌だから、絶対誕生石のガーネットにすると決めていたの。それも、ガーネットらしいガーネットを。最近赤以外のガーネットが出てきていると聞いていたわ。でも、これも嫌。ガーネットは赤でないと絶対嫌だ。あと、色もルビーの色味に近い赤黒い感じの色がいい。日本語名は確か柘榴石だったはず。これを言ったら店員さんの表情が引き締まった。婚約指輪をダイヤモンドにせず、わざわざ誕生石を買うもの好きみたいに見られていたのが、私が色を指定したことで宝石に詳しいと思われたみたい。


二つ目は必ず真珠のネックレスを手に入れること。もちろん真珠にもこだわりはある。でも、これはそのうちでいいから、今は関係ない話。


三つめは紫水晶のものを何か持ちたい。アメジストと呼ばれるこの石に何故か小さい頃から心を惹かれていたから。でもこれも婚約指輪には関係ないことだから、いつか必ずという話ね。


ジュエリーショップをあとにして車に乗って浩二さんのアパートへ行った。まだ下平家に行くには1時間くらい時間があった。


冷やしたペットボトルのお茶を出してくれたから、それを飲んで一休み。


の、はずなのに、何故か浩二さんに抱きしめてられているのって、なんで? キスをするのはいいのだけど、手の位置がね。


不埒なことを仕掛けてくる浩二さんの手から逃げようとしても、離してくれないの。


「麻美、今は二人きりなんだし、いいだろう」

「いいわけないでしょう。下平家に行くのに1時間もないんだから」


そう言ったら「チッ」と舌打ちが聞こえてきた。抱きしめたまま耳元でぼそりと声がした。


「柔らかいのに」

「・・・」

「ちょうどいい大きさなのに」

「・・・(おい!)」

「いっそ行くのはやめて二人でいることにするか」

(駄々っ子かよ)


口には出さずに心の中で突っ込みは入れておく。代わりに後ろから抱きつかれているから、向きを変えて浩二さんと向かい合って、軽く額をコツンと合わせた。


「浩二さん、それは駄目でしょう。それよりも、浩二さんはお父さんとお兄さんとお酒を飲むのでしょう」

「・・・親父も兄貴も飲むからな。麻美に運転手させることになってごめん」

「そこは気にしないでよ。ちゃんと浩二さんをアパートまで送ってあげるからね」


そう、今日私が浩二さんのアパートに車で来たのは、浩二さんにお酒を飲んでもらうため。車で10分の距離を歩いてアパートまで帰るのはねえ。それに私を家に送るためにまた飲まないというのも申し訳ないじゃない。だから私が自分の車で行って、下平家まで送り迎えをすればいいと思ったのよ。


だって浩二さんの誕生日なのですもの。


それにもう一つ。浩二さんにはまだ話してないことがあるの。それはまたアパートに戻ってきたら言うつもり。


結局時間になるまで私は浩二さんに捕まっていた。不埒な手の動きは無くなったけど、耳元で低い声で囁き続けられるってどんな拷問よー!


下平家に着いてお兄さんの泰一さんに「お前なんか今日すごく生き生きしてないか」と言われるくらいに、浩二さんの機嫌はよくなっていた。


くっそ~。「好き」っていうのはいいんだけど、「愛してる」なんて素面で言えるか~! それを私が言うまで言葉責めかよ。


「麻美さん、なんか疲れてないかな?」


泰一さんが少し心配そうに聞いてきた。私は笑顔を浮かべて答えた。


「大丈夫です。なんでもありませんから」


もう~! 後で覚えてろ~!


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