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110 浩二さんの誕生日 前編

6月の3週目の土曜日。私はまずは浩二さんのアパートへ車で行ったのよ。


先週の日曜日。浩二さんのお母さんの博美さんと姪の真佑美ちゃんの爆弾発言のおかげで、浩二さんの誕生日がわかったの。


二人を下平家に降ろして、すぐに帰ろうと浩二さんは思っていたみたいだったけど、あのあとスーパーへの買い物に付き合い、そのまま夕食を一緒に食べることになったのよね。座っていてと言われたけど、もちろんお手伝いをさせていただきましたとも。


浩二さんはお父さんの泰浩さんから電話が来たので、駅まで迎えに真佑美ちゃんを連れて出かけていった。帰ってきた泰浩さんと祖母の登美さんと共に私たちも一緒に食事をしたの。顔合わせをした時とうちに挨拶に来てくれた時以外に皆さんとは会っていなかったから、食事の間に質問攻めにあったのよ。でも、和やかに食事は終わりそろそろお暇しようとしたところに、お兄さんの泰一さんが帰って来たの。そこからしばらく泰一さんと話をして、気がつけば20時を過ぎていたわ。


浩二さんが私が帰るのが遅くなると言って、下平家をあとにしたのよ。そこから浩二さんのアパートまでの10分間に、お互いの誕生日を知らなかったことについて笑って話をしたのね。浩二さんのアパートに着いて、私は自分の車にすぐに乗って家に帰ったのよ。心配性の浩二さんに家に着いたら電話をするようにと言われたから、家についてすぐに電話をしたの。



浩二さんのアパートに私の車を置いて、浩二さんの車で出かけることになっていたの。結局今日までに浩二さんへの誕生日プレゼントは買えなかったから。


デパートに向かうところで浩二さんが訊いてきた。


「今日は何を買うつもりかな」


そういえば言ってなかったなと思ったから、素直に答えた。


「浩二さんへの誕生日プレゼントを買いたいと思っているの。本当は用意して渡したかったけど、一緒に選ぶのもいいかなって思ったのだけど」


そう言ったら、浩二さんは口元に手をもっていって隠してしまった。


(これはどちらかな? 緩んだ顔を見られなくて隠したのか、憮然とした顔を見られないように隠したのか)


そんなことを考えていたら浩二さんが近づいてきて囁いた。


「別に物でなくてもよかったのに」

「欲しいものがないの?」


チラリと浩二さんの顔を見上げたら、私のことを見ていた浩二さんと目が合った。そうしたら浩二さんは苦笑を浮かべたの。そして一層声を低めて囁いてきた。


「麻美って本当に鈍いの? こういうときって麻美が自分にリボンをつけて『プレゼント♡』で、よかったってことだよ」


そう言われて、私は何も返せなかった。想像したことに、顔は赤くなっていったのがわかる。それに、ここでその、私の好きな低い声というのがまた悪い。


(ちょっと待て! まずは場所を考えろ。こんなところで言うなよ~。それはね、プレゼントの相談を千鶴にしたら、同じことを言われたのよ。私が裸でリボンをつけて『プレゼントは、わ・た・し♡』ってしたら、男なら喜ぶだろうって。でも、そんなことができるかい! どこのエロ漫画の発想なのよ。千鶴ってば時々親父思考になるんだもの。いやいや、最初は何か物をプレゼントでしょう)


と、心の中ではいっぱい突っ込んではいたのだけどさ。

横で浩二さんがクックッと笑いだした。


「本当に麻美って純情だよな。こんな言葉に真っ赤になるなんて」

「誰のせいですか」


何とか小さな声で言い返す。だけど浩二さんは余裕で返してきた。


「いや、麻美が赤くなったってことはエロいことを想像したんだろう。想像力が旺盛ってことなんだな」

「そ、そんなことないもの」

「そうかな~。実はそうしようと思っていたとか。麻美って純情エロ小悪魔だったんだな」


浩二さんの言葉に耳まで真っ赤になっているのがわかる。


(なんなのよー! こんな意地悪言うことないじゃない。あと、さっきも心の中で言ったけど、場所を考えて~! 誰かに聞かれたらどうすんのよ~!)


「もう、知らない!」


そう言って私は浩二さんの前を少し速足で歩いて行ったの。


デパートの紳士用品の売り場で、やはり困ってしまったわ。定番ってネクタイよね。でも浩二さんは車で職場まで通っていることと、制服があるからスーツをほとんど着ないと言っていたの。だからって腕時計みたいなものは違うような気がするし。ハンカチじゃ味気ないもの。


しばらく悩んでいたら浩二さんはバッグのコーナーに行ったの。そこでバッグを手に取ってみていたけど、そのうちにお財布の所に移動したわ。熱心に見始めたから聞いてみたの。


「お財布を欲しいですか?」

「そうだな、ついズボンのポケットに入れてしまうから、擦れてしまうんだよな」


後ろのポケットから取り出した財布は折り曲げるタイプの薄い感じのものだった。確かに折り曲げる部分が擦れて剥げかかっている。


「色はどうします。今までと同じ茶色がいいですか」

「そうなんだよな。黒にすると擦れて剥げると目立つんだよ。そうなると無難な茶色ばかりになってしまって」


浩二さんはそういって今までと似たタイプのお財布を選んだの。私はそれを店員に渡して「プレゼントですか」と聞かれたので「はい」と答えて、プレゼント用に包装してリボンを掛けてもらったのでした。


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