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109 デートはお預け? 

6月の2週目の日曜日。本当なら今日は久しぶりのデートに行くはずだった。


何やかやと毎週会っていたけど、デートらしいデートをしていないことに気が付いたと浩二さんが言ってきた。なので、街ブラデートをすることにしたのよ。目的は婚約指輪を見に行くの。


丸山さんにジュエリーショップを教えて貰った時に、一度先に見に行ったほうがいいといわれたのよ。私の誕生石のガーネットはそんなにお店に置いてないかもしれないから、というのが理由だった。


それが駄目になったのよね。



軽くノックをしてから、浩二さんが扉を開けて部屋の中に入る。浩二さんのお母さんの博美さんが孫の真佑美ちゃんと中に入り、私もその後に続いた。


「佳恵さん、お待たせしたわね。私が隆政を見ているから、あなたは一度家に戻っていらっしゃい」

「すみません、お義母さん。それではお願いします」


佳恵さんが立ち上がったら、真佑美ちゃんが佳恵さんにしがみついた。その手を握って佳恵さんが私たちのほうを向いた。


「浩二君、運転手をさせてごめんね。麻美さんも、来てくれてありがとう」


私たちは病室を出て浩二さんの車に乗ると、下平家に向かったのよ。


下平家に着くと佳恵さんは私たちに麦茶を出してくれた。


「ゆっくりしててね。あっ、それとも少し出てくる? 支度に2時間くらいはかかると思うから」

「それなら、真佑美を連れて少し出てくるよ」


浩二さんが佳恵さんの後をついて回る真佑美ちゃんを見てそういった。


「そうしてもらえると助かるけど・・・いいの?」

「佳恵ちゃんも、真佑美がそばにいないほうが、いろいろといいだろう。こんなことくらいしかできなくてごめんな」

「浩二君、運転手してくれるだけでも助かるのよ。うちのが仕事でいない時と重なっちゃったから、タクシーを使うしかないかと思っていたもの。真佑美、おじちゃんとお出かけしてきてくれる?」


佳恵さんは屈んで真佑美ちゃんと目を合わせていった。真佑美ちゃんは佳恵さんと浩二さんと私を見比べてからコクリと頷いた。


「じゃあ、お願いね。でも浩二君、甘やかしてあれもこれもなんて買い与えないでよ」

「ウッ・・・気を付ける」


佳恵さんの言葉に浩二さんが顔をひきつらせた。


(・・・ということは前科があるとみた。そうか~、浩二さんは姪っ子に甘いんだ)


そんなことを考えていたら佳恵さんが私のことを見てきた。


「麻美さん、浩二君が余計に買い与えないように見ていてね」

「はい。気を付けています」


そうして2時間ぐらいショッピングモールに行って遊びながら、浩二さんが真佑美ちゃんに玩具を買ってあげるのを見守っていたの。


頃合いを見て下平家に戻り、佳恵さんを乗せてまた病院へと向かったのよ。



金曜日に仕事帰りにうちに寄った浩二さんから、日曜日に出かけられなくなったと言われたの。


甥の隆政君が水曜日に入院して、週末は仕事でこちらにいない兄の代わりに、実家の手伝いをしてくることになったと言ったのよ。容体はと聞いたら、言葉を濁すから大変な病気なのかと思ったら、詳しい病名を聞いていないとのこと。生まれた直後から内臓が弱いそうで、今回で3度目の入院なのだとか。入院して容体が落ち着いたから、前の時と同じに1週間くらいで退院できるだろうと浩二さんは言った。


浩二さんが帰ったあと、私は両親に日曜日の予定がなくなったことを告げて、隆政君の入院のことを話したら、お見舞いに行ってきなさいと言われたのよ。


なので、すぐに電話をしてお見舞いのことを告げたら、下平家の親戚にも話していないので、お見舞い金は遠慮したいと言っていたと言われたわ。でも、お見舞いだけなら大丈夫じゃないかともいわれたのよ。


土曜日に浩二さんから電話をもらい、日曜に私を迎えに来てくれると言ったの。私は自分の車で行くつもりだと告げて、しばらく問答になった。結局浩二さんのアパートまで私が車で行って、そこから一緒に下平家に行くことになった。


浩二さんのお父さんの泰浩さんは、同級生の親が亡くなってお葬式が入ってしまったと聞いたのね。下平家は男性しか車の免許を持っていなくて、病院に行くには一度駅まででてから、バスを乗り換えなくてはならないそうなの。それならタクシーを使ったほうが時間はかからないと聞いたのよ。


うちも私が免許を取るまでは父しか免許を持っていなかったから、いざという時の足に困る時があったの。まあ、大概自転車で行ける範囲は行っていたけどね。


とにかくそういうわけで、二人でお出かけデートは無くなったのよ。



佳恵さんと博美さんが入れ替わり、真佑美ちゃんを連れて下平家に戻る車の中で、博美さんがこんなことを言った。


「本当によかったわ。明後日には退院できるそうよ。これなら誕生日のお祝いができるわね」

「そういえばもうすぐ隆政の誕生日だったな」

「そうよ。忘れていたの。ああ、そうだわ。麻美さんもよかったら、次の土曜日にうちにいらっしゃらない」

「私もですか? お邪魔ではないですか」

「まあまあ、何を言っているの。邪魔じゃないわよ。それに誕生日のお祝いを一緒にするのよ。だからね、麻美さんにも是非来てほしいわ」

「退院祝いと一緒ということですよね」


博美さんの言葉に首をかしげながらそう言ったら、真佑美ちゃんが元気な声で爆弾発言をしてくれたの。


「ちがうよ、おねえちゃん。あのね、たかまさとおじちゃんは、いちにちちがいなの」

「えっ? そうだったの!」

「まあ、麻美さんは知らなかったの?」

「えーと、はい。誕生日の話はしたことがなかったです」

「そうだったのね。でもこれでわかったでしょう。ぜひ来て頂戴ね」

「は、はい」


私に頷く以外の選択肢はなかったのでした。


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