表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/238

104 どう、責任を取らせようか

浅井さんはリビングに入ってくると、私の顔を見て苦笑を浮かべた。


「おはよう麻美ちゃん。辛そうだね~。薬飲む?」


浅井さんの軽い言い方にイラっとした。浅井さんは薬をいくつか持ってきてくれた。

けど、ムカムカして薬なんか飲みたくなかった。


でも、薬を飲まないと頭の痛みは改善されないことはわかっているから、仕方がないから薬を飲んだ。


「その様子じゃ何も食べられないかな?」


浩二さんの隣に座った浅井さんがそう言った。


「そうだな。それよりもここに座っているのも辛そうだから、向こうのソファーに横になるか?」


そう言って浩二さんが立ち上がった。


「くんな」


私の口から低い声が漏れた。


「「はっ?」」


一拍置いてから二人の声が重なって聞こえてきた。


「だから、そばにくんな。それより、言いたいことがあるから座れ!」


私のぞんざいな言い方に二人は動きを止めた。相変わらず私はテーブルに肘をついて手に額をつけた状態だ。少し俯いた感じから二人の事を睨むように見ている。

大事なのでもう一度言う。私は睨むように見ているのだ。断じて睨んではいない。


浩二さんは気が抜けたような感じに椅子に座り込んだ。なんか戸惑っているようだ。


多分私の言葉使いが悪くなったのが原因だろうけど、知るもんかと思った。


「ねえ、なんで私を酔い潰したわけ?」


気分も機嫌も悪いため、単刀直入に訊いた。というより、本当ならまだ口を利きたくないくらいなのよ。だから、余計な言葉を無しに話しをしたいのさ。


「酔い潰したわけじゃないよ」

「そうだぞ。麻美がカパカパ飲んでいたんだろ」


この期に及んで言い訳をしようとする二人。いっそ本気で()ってやろうかと、殺意が湧いてきた気がした。


「ネタはあがっているんだから、さっさと吐け!」


そう言ったら浅井さんが面白そうな顔をした。


「麻美ちゃんって口が悪かったんだな~。もしかしてこれが素なの?」

「んなわけあるか! それより、私の質問に答えてよ。でないと本気で浮上出来ないくらいに落とすことになるけど」

「へえ~。昨日途中になった占いの続きをしてくれるの?」


呑気にそんなことをいう浅井さんに腹が立った。


(もう、いいや。二人以外は知っていることだし、浩二さんには内緒にして株を上げるつもりだったのも、駄目になったから、ぶちまけてやる!)


私はなんとか背筋を伸ばして二人のことを見つめた。瞼が半分下りて半眼で睨んだようになっていることだろう。

大事なことなので、ここでももう一度言うぞ。私は二人を見つめたのだ。間違っても睨んではいないからな!


「あのねえ、昨日私はそんなに飲んでなかったのよ」

「・・・田川に作ってもらって、飲んでいたよな」

「そうよ。先に結花さん達には話してあったから、すごーく薄いバイオレットフィズとオレンジフィズを作ってくれていたのよ」


私の言葉に顔を見合わせる二人。


「でもさ、酔っていたよね。ピザを作っていたときは」


浅井さんが確認するように訊いてきた。


「そうですね。あの時はほろ酔いでいい気分でしたから」


視線を浩二さんの顔に固定しながら私は答えた。


「じゃあ、その後も飲んでいたんなら引き続き酔っていたんじゃないの?」

「だから、酔いを醒ますためにも、すごく薄いのを作ってもらっていたんです!」


私の言葉にまた顔を見合わせた浩二さんと浅井さん。その顔は少し気まずそうだ。顔を私のほうに向けた二人は、今度は浩二さんが口を開いた。


「どうしてそんなことをしたんだ、麻美。俺がいるから飲んでよかったのに」

「人を酔いつぶしたやつがどの口で言う!」


ジロッと睨むように見つめたら「ウッ」と言って黙ってしまった浩二さん。私はため息を吐き出してから口を開いた。


「あのねえ、浩二さん。昨日うちの父が私たちを快く送り出したのって、前日に浩二さんを家に泊めてしまったことが大きいのよ。強引に泊まらせるようなことをしちゃったなってね。私と浩二さんを一緒の部屋にしたのだって、私たちが結婚するからだと思っているからだったし。父さんも若い頃はいろいろやんちゃをしたって聞いているから、そこいら辺の事には理解があるというか、願望があるというか・・・」

「お父さんの願望って何かな、麻美ちゃん?」


つい言葉を濁したら浅井さんに突っ込まれてしまった。


「そりゃあ、あれですよ。早く孫の顔が見たいってやつです」


きっぱり言ったら、二人して目を丸くしていた。


「それっていいの? 大事な娘に婚姻前に手を出してって、怒らないの?」


浅井さんのもっともな疑問よね。


「いいえ~。泣いて喜びますよ。なんといっても、傷心の娘を体から落とせって、浩二さんに唆しましたから」


そう言ったら、浅井さんは浩二さんのほうを振り向いた。それに浩二さんが顔をしかめて頷いていた。


「でもさ、もし先に子供が出来たら、結婚式とか困らないの?」

「式が早くなる分には構わないと思いますよ、うちの親は! でも、浩二さんのご両親はそうなったらあれでしたよね」


少し意地悪な言い方をしてみる。案の定浩二さんは渋い顔をした。きっと浩二さんのご両親は順序を重んじるのだろうと思ったのよね。これが、妊娠しましたからの結婚話だったら違ったのだろうけどさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ