鷹と猟犬
「見つけた…!」
視線の先にはシルバーを基調として煌めくようなサファイアブルーで塗装された機体が写る。丸みを帯びたフォルムの軽量二脚、両肩には補助スラスターと黒い箱形の物体が見える。両腕にはマシンガンを二挺装備して疾駆している姿は、さながら銀色の猟犬のようであった。
「ここで殺す、お前はここで殺してやる!!!」
その姿を見るだけで全身の血が燃えるように熱くなる。早鐘を打つ心臓、その奥からドロドロとしたものが沸き上がってくる。
「コマンド、オーバードライブ!」
[ラジャー、出力制御装置を解除。オートからマニュアルに切り替えます。]
レクスはバーニアを全開にした。秒速百六十六メートルで稲妻のようなレモンイエローと闇に溶けるようなダークブラウンのツートーンカラーの機体が宵闇を駆ける。
「デルタスリー!デルタスリー!何をしている!一人で先行するんじゃない!おい、レクス!戻れっ!戻るんだっ!」
「デルタワン、デルタツーは持ち場をお願いします!奴はっ!《シルバーハウンド》は俺が仕留めます!!」
「くそっ!デルタツーは北西から近づいているMTを頼む。俺は東側を押さえる!」
「了解!ったく、ケツの青いガキの尻拭いなんてな…俺達はお前のママンじゃないぜ!!《ブービー》!」
青と赤の機体が左右に展開する。その速度は驚異的でリミッターを解除したレクスの機体に迫る勢いである。その秘密は脚部がレクスの駆る《イーグルアイ》の二脚と異なり、フロート脚と呼ばれる疑似反重力システムを搭載した特殊なパーツで構成されていた。
「デルタワン。こっちはMTが13、車輌が40。こりゃ少し骨が折れそうだ。」
「デルタスリー。良かったじゃないか。終わったら貯まってたCAのローンが払えるぞ」
「がははっ、ヴォルフのじっさんに支払いを急かされてるからなあ!」
赤い機体の肩から12発ものミサイルが白い尾を引きながら発射され、青の機体は右手のライフルの銃口から眩い閃光を迸らせた。
《イーグルアイ》と《シルバーハウンド》接触までのこり5000…