第一章 異世界遭難 第16話「人の存在、ヒーローの存在」
※残酷な表現が一部含まれています。
むかしのヒーローものの中には、結構恐ろしいものがありました。敵に村人が操られていて敵を倒すと、村人が泡になって消える。実は、操られていたのは村人の死体。そう、ヒーローには初めから村人を助けることができないという残酷な話。
村一つ皆殺しにするような敵が当たり前のように雑魚として出てきていたことが何より恐ろしい。
現代ヒーローは日常的にそんな相手と戦うことはあまりないのは、やはり子供のトラウマ防止なのかなと現代の子供番組の配慮に若干のありがたみを覚える今日この頃です。
日乃達は砂丘の前で止まり、砂丘の周りを迂回しながら進むことにした。そして、しばらく進むとそこに何匹かのアリが列を作って砂丘の中心を目指していた。
「アリたちは、砂丘を突っ切っていくのか?」
『主よ。恐らくあれはアリの巣ではなかろうか?』
「あの砂丘がアリの巣なのか!東京ドームくらいはあるぞ!」
『アリの大きさを考えると不思議じゃないわね。』
『気付かれぬように、気を付けて進みましょう。』
「そうだな、大量のアリが出てきたらたまらないしな。」
アリの巣の巨大さに驚きつつも、慎重にアリの巣を避けながら進んでいく。しかし、アリの列が近づいた時、その目に映ったものが日乃の歩みを止めた。アリが運ぶものが人の腕と胴体であることに気が付いたのだ。
「おい、あれは人の体じゃないのか・・・。」
『確かに人の体の一部のように見えますな。』
「人がいるのか?」
『日乃様、アリが来た方に進めば人のいる所に着けそうですね。』
「そうだな、これでひとまず進む方向は決まった。だが、その前にあのアリの巣を潰すぞ!」
『主よ。それは危険です!アリがどれほどいるかもわからないのに巣に向かうなど!』
俺は人が食われていることに少し気持ちが悪くなったが、同時に人がいることに少しの安堵を感じた。だが、それ以上に人が危険にさらされているのが許せなかった。別にアリ悪くはない。生きるために餌を確保してるだけなのはわかっている。しかし、人々の生活が脅かされていると知ってそれを放置することはできない。たとえ死ぬかもしれなくとも、俺には引けない理由がある。それは、俺が『ヒーロー』だからだ。故に俺は行かねばならない。人々の平和を守るために!!
「悪いな。俺は、ヒーローなんだ。アリたちが人を襲うのならそれを止めるのが俺の役目だ。」
『ならば、我もお供します!』
『日乃様、私も行きますからね!』
「お前たちまで危険な目に合わなくてもいいんだぞ。これは俺のわがままだからな。」
『主よ。我は主の忠実なる僕。どこまでもお供します。』
『パンダモン』はいつの間にか忠実な僕の地位についていたらしい。
『私はストーカーだから離れませんよ。』
こちらは笑顔でとんでもないこと言うなぁ。二人には、引く気が全くないことが分かる。ならば、連れていくしかない。正直二人は俺より強い、断る理由がない。
「一緒に行くなら、絶対に死ぬなよ。俺のせいで死んだりされたら、ヒーローやめるしかないからな。」
『主よ。我が主を貶めることなど決してありませぬ!』
『日乃様のご寵愛を受けるまで、決して死なないから任せて!』
「なら不死身だな、お前は。」
そんな彼女の言葉に軽く笑いながら返して、目の前のアリの列に向かって再び歩き出した。
「さぁ!アリ殲滅戦開始だ!!」
主人公 次野 日乃
性 別 男
年 齢 18
職 業 ヒーロー(イエロータイガー)、高校生
ジョブ テイマーLv.2(7)
パッシブスキル 精霊視、野生の感、多重出撃Lv.1
アクティブスキル 機獣召喚、精霊変身
装 備 変身ブレス、私服、靴
持ち物 リュックサック(勉強道具、ジャージ、ティッシュ)、テイムカード(5枚)