第一章 異世界遭難 第11話「二日目、レベルアップのススメ」
レベル、ゲームなどではお馴染みですが現実の世界では数値などのレベルはなく何となく高そうだなとか思うくらいしかありません。ですが、高そうに見えるだけで実際は低いということがよくあります。
よくあるのが、新人として入ってきた人の仕事ぶりが冴えない見た目だったのに仕事ができるとか、背が高くてイケメンだったのにいるだけでかえって仕事の邪魔になるとかです。正直、レベルの表示とか面接の段階でされていれば、同じ職場にはならなかったと思わず済んだのにと思ってしまいます。
正直、学歴とか資格とかのレベルはまったく意味がない。ヤル気や理解力と応用力と常識のレベルが重要。ヒーローはこの辺のレベルが高いからやっていけるのだろう。どう見ても、高学歴や資格とは縁があるように見えないものが多いから。だから、思ってしまう。うちの職場も助けて、ヒーローと。
『クヮァ~~~~ル、クヮァ~~~~ル。』
カラスに似た鳴き声が森のいたるところから聞こえてくる。そのうるささに、なんか体がだるく感じるものの何とか耳を塞ぐ。
「うぅ~~ん、うるしゃい。むにゃむにゃ・・・。」
そして、寝返りを打って、むにゅっ。暖かくて柔らかい何かに顔が突っ込んだ。甘い匂いと安心感を得てもう一度眠気に誘われそうになる。しかし、柔らかい何かにさらに顔が沈みこんだあたりで息ができなくなる。息苦しさに耐え切れず顔の前の柔らかい何かを両手で押し退けた。
「・・・ぷっはっ~~~!!」
『あんっ、いきなり強く掴まれると刺激が強くて・・・。でも、乱暴なのも悪くないですよ。』
「死ぬかと思った。って、お前は少し黙れ!」
『なんか冷たいです、日乃様。さっきまで、あんなに幸せそうだったのに・・・。』
目が覚めて目の前にいた『クイーン・ランジェリーナ』を見て、異世界に来たことが夢じゃなくて現実だったことを再確認させられた。そして、今、手に掴んでいるものも確認してしまった。物心ついてから、始めての感触が手に広がっている。頭に血が上って鼻血が出そうになるが、その前にクラクラとして軽い貧血が襲う。
『っ!日乃様、大丈夫ですか!?昨日、結構な量の血を流してたから貧血かもしれません。何か栄養のあるものを摂らないと・・・。』
「それなら、『ファイトモン』を呼ぶから一度カードに戻ってくれるか?」
『?私が戻らなくても、そのまま、呼べばいいんじゃないですか?』
「?」
どういう意味だ?幹部とは別に他のも呼べるのか?まあ、今は考えるのも怠いしとにかく呼んでみるか。
「出撃」
『ん、兄貴・・・!!そいつは何もんだ!!!兄貴と寝るなんて、なんてうらやま・・・、いや、幸せなやつなんだ。』
『んふっ。いいでしょう。譲らないわよ!』
『ぐぬぬぬぅ~~~。』
出てきていきなり、何やらよくない感じだがとにかく呼び出せたようだ。
「そういうの後でいいから、『ファイトモン』。貧血みたいなんだ何か効きそうなのくれよ。」
『兄貴そういうことなら任せてくれ、このすっぽんベースの栄養ドリンクさえあればすぐに二回戦目もいけるぜ!!』
「・・・、まぁいいや。とりあえず、貰うよ。」
なんか、不穏な単語が聞こえたが、とりあえず効き目がありそうなんで飲むことにした。飲んで少し横になっていた。時間にして30分位したくらいで、効き目が出たのか頭がスッキリし始めた。そこでやっと気が付いた。なんで布団で寝てるんだ。森の中だし、布団など持ってなかったはずだ。だが、気になって上半身を起こして確認した掛布団だと思っていたものは、何か詰まったキャミソールをつなぎ合わせたものだった。詰まっていたのは毛糸のパンツだった。そして、敷布団だと思っていたものも大量に敷き詰められた多種多様の下着だった。
「・・・。いや、俺を助けようとしてくれていたのはわかっているんだ。でも、これはさすがに、これじゃ俺、変態にしか見えない。」
『大丈夫ですよ。日乃様が下着マニアでも私は気にしませんよ。』
『そうだ!兄貴下着が好きなら俺のランニングもやるぜ!』
「違う!!俺は、下着マニアじゃない!ランニングもいらん!!」
そう言って俺は立ち上がると、掛かっていたキャミパン布団をぶん投げた。
『ああ、せっかく全部はいてから詰め込んだ愛情布団が・・・。』
「・・・・・・。」
残念そうな声を上げる『クイーン・ランジェリーナ』を無視して、気になっていたことを聞く。
「そういえば、さっきの口振りだと、なんで二人呼べるのかる理由を知っているようだったがどういうことだ?」
『?だって、日乃様、レベル上がったんですから当然じゃないですか?』
「レベルが上がったって、ゲームみたいな・・・。」
いや、待てよ。確かにこいつらが仲間になった時も、ゲームみたいな感じだったし、あるのかレベル!?
「レベルとかってわかるものなのか?」
『兄貴、ステータスは見たことないのか?』
『え~と、『ステータス』と頭の中で念じると頭の中に浮かびますよ。』
二人に少しあきれ顔で言われ、少し腹が立つが、当たり前のように言うということはもしかするとツクモン達は向こうにいた時からステータス確認ができていたのかもしれない。
「悪かったな、俺たちの世界ではそんなことできなかったんだよ。」
『ごめんなさい。でも、拗ねた感じの日乃様も可愛い。』
『兄貴、ステータスは自分のは全部確認できるけど、俺たちのはレベルによって見れる範囲が変わるはずだから、レベルを上げとくことを進めるぜ!!』
「とりあえず、右の黙れ。他にレベル上がるといいこととかあるのか?」
『はうっ!日乃様、冷たいです。』
『う~ん、仲間にできる数と呼べる数が増えるとか、命名スキルとか、指揮スキルとかも取れたと思うぜ、兄貴。』
「そうなのか、『ファイトモン』教えてくれてありがとう。」
『兄貴の役に立ててうれしいぜ!』
思ったより、まともな会話ができる『ファイトモン』のおかげでレベルは上げた方がいいことはわかった。そして、嬉しそうな『ファイトモン』と対照的に、少し涙目でいじけている『クイーン・ランジェリーナ』を見て、いじけた感じの麗さん、可愛いなあと思ったことを何とかポーカーフェイスを保って誤魔化した。
ふと周りを見て気付いたが、辺りは明るくなっており夜が明けて日が変わっていた。『そうか、一日たったんだな。早く帰らないとみんな心配するだろうな。』そんなことを考えて、早く帰る決意を新たに、もう一度、今の自分の状況確認から始める。
「それじゃ、初のステータス確認からしてみるか!」
主人公 次野 日乃
性 別 男
年 齢 18
職 業 ヒーロー(イエロータイガー)、高校生
ジョブ テイマーLv.2(7)
パッシブスキル 精霊視、野生の感、多重出撃Lv.1
アクティブスキル 機獣召喚、精霊変身
装 備 変身ブレス、私服、靴
持ち物 ペットボトル:スポーツドリンク(飲みかけ)、リュックサック(勉強道具、ジャージ、ティッシュ)、テイムカード(5枚)