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愛していると言うのなら  作者: いち
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幸せ肥りに甘えるな

結婚して一月、条件面だけで選んだ旦那様との結婚生活が順調すぎて幸せだ。

朝晩の挨拶と夜のお勤め( まだ片手未満) 以外接点がないって素晴らしい。



…とばかりも言ってはいられなかった。

結婚して『次期男爵夫人』となった私には、社交という名のお仕事が待っていたのだ。


嫁いで最初のお仕事は、内輪へのお披露目と言う名の大品定め&ごますり大会in男爵邸。

可憐な(笑)新妻であるところの私は、慎ましく旦那様の陰に隠れて愛想笑いで乗り切る気満々だった。

が、ここで少々の計算違いが。

ご親族の方に


「近寄るな、鬱陶しい」


祝いを述べる夫人に


「心にもない世辞はいい。祝いの品は受け取ってやるから、帰れ」


隣の領地の子爵家子息に


「おい、お前。何か芸をしろ。詰まらなかったら罰を与える」


等々、平穏すぎて忘れていた暴君ぶりを披露してくださいまして。

父親である男爵の目の届かない所で、しかし威光はかさにきて、という悪知恵の働きっぷりはさすが貴族のボンボン様。

ちょ、相手も貴族であんたより年上の人だっているのになに言ってくれちゃってんの旦那様!?と内心どん引きしたが、それでもお勤めは果たしましたよ。

旦那様の横でニコニコするっていう、簡単なミッションだ。


こんなの、夜中にアイスを食べたがる結婚してメタボった誰かさんを叱って脅して宥めてすかしてやっとのことで寝かしつけたと思ったら翌日ループ、な日々と比べれば大したことない。

只でさえ帰宅が遅いから、食事の時間も深夜に近くて健康にも悪いからと、こちらも仕事で疲れた体に鞭打ってせっせと低カロリー高タンパクな一汁三菜を作成していた私の努力も気遣いもまるっと無視した無神経発言には常に殺意が沸いたさ。

さらに、頼んでない、とか言われた日には…

………やめよう。この思考は危険だ。思い出し怒りで笑顔が崩れたら今生に障る。


とにもかくにも、ヘル○アのCMみたいなお腹に、細身の人が好きだと常日頃言っていた私が離婚の二文字を殴り書きたい衝動を押さえつけた日々に比べれば、旦那様が何か仰ってるな~でも私に言われてる訳じゃないしこの人最初からビア樽だったしお祝いありがとうございますほほほほほ~、ってなもんだ。


あからさまな嫌がらせも横暴でしかないムチャブリも、今日だけ耐えればいいのだから楽なもの。

腹ン中で悪態ついて、一夜の恥はかき捨てて、さっさと安全地帯に帰ればよろしい。


かくいう私も

にこにこ

ニコニコ

何を言われても「恐れ入ります」で乗りきった。


旦那様が何をしようと

にこにこ

ニコニコ

『旦那様が何をなさっているのか、わかりません』

なバカな嫁の振りは見ているだけ、微笑んでいるだけの簡単なお仕事でした。

得意のジャパニーズ・スマイルは、馴染みのないこちらの人たちにはさぞ不気味に映っただろうけど、私にとってもこの人たちは年に数度しか顔を会わせない相手だ。

救いを求めるような視線も感じたが、気づかない振りでスルー。

下手な庇いだてして一緒に住んでる旦那様の不興をかって今の平穏が壊されたらたまらない。

離婚は望むところだが、DVにでもなったらどうしてくれる。貴族社会には案外多いんだよ?で、基本女は泣き寝入りなんだよ?

そうなったら助けてくれるの?くれないでしょ?

私は自分の身を自分で守っているだけですよ。

皆さんも自己防衛機能全開でがんばってくださいね~


という私の(投げ遣りな)祈りは届いたのか届かなかったのか、犠牲者は増えるばかりで、宴はソコココに暗雲をばら蒔いて幕を閉じた。


『あの暴君には似合いの嫁』


そんな称号を私に残して。

まぁ、ステータスアップはしないが状態異常でもないので、当方に問題はありませんが。


因みに子爵子息はお祝いの歌を歌って、音痴だと旦那様に大爆笑された。

罰は無しで良かったですね。

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