お題「後悔」「除湿器」「まな板」
「とうとうできたぞ。長年、頑張った甲斐があった」
「どうしたんですか、所長。偉く喜んでいらっしゃる」
「聞いてくれ、テンジロウ君。このたび私は、全自動まな板を開発することに成功したのだ。今後世のなかから包丁は消え、全ての料理の下ごしらえを、このまな板がやってくれる」
「それはすごいですね、所長。是非、特許を取り、世のなかに売り出しましょう。儲かることこの上なしですよ」
「そうか、そんなこともできるのか。テンジロウ君、僕はお金には興味がないから、そういうことはやっておいてくれるかね」
「わかりました、所長。所長は本当に開発がお好きですね」
その後全自動まな板は飛ぶように売れた。全国の主夫達は、料理の際に手を怪我することも無くなり、みんなが幸せになった。所長のところにも、テンジロウのところにも、一生働かなくてもよいほどのお金が転がり込んできた。
それから三年が経った頃。
「できた、できた。やはりお金があると開発が捗る。今回も素晴らしい出来だ」
「所長、また何か開発されたのですか」
「よくぞ聞いてくれた、テンジロウ君。今度のものは、世界除湿器と言うんだ」
「へえ、世界、ですか」
「これがあれば、世界はもう湿気にも、干ばつにも悩まされることはない」
「それは素晴らしいです。是非とも政府と掛け合って、世の平和のために動かしましょう」
「そうか、そんな使い道があるのかな。僕は開発以外のことに興味はないから、あとは頼んだよ」
その後、世界除湿器のおかげで、世界は平和になった。そして、次々と出される所長の発明により、人々は満たされ、悩みも全て無くなった。
所長は独り、研究所の中をぐるぐると円を描いて歩き回っていた。
「困ったなあ。世のなかの不満がなくなると、開発する物がなくなってしまう。僕はもう、活きている意味が無いのだろうか」
時計の針が三本とも12を指した頃、所長はポンと手を打って「そうだ、昔の方が良かったと思わせる発明をすれば、また世のなかに不満が生まれるはずだ」満足そうにニッコリ笑うと、全世界後悔機の設計に取りかかった。
初回は、全てで30分かかりました。




