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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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利害の一致と兄妹と5

トマコは地味にクラメスラードに恨みを抱いていた。だって足の小指は地味に痛いし、紙で切れたとこもいたい。なんて嫌なことするんだ。で、どんな奴だとアランに聞いてみた。


「ああ……クラメスラードね。スワン家は呪術に長けた家柄で本人は何というか……不気味な感じ。それがどうかしたの?」


「ん?えっと。シドお兄ちゃんのファンみたいで。」


「はあ。厄介なのに好かれてご愁傷様。」


「そんな変な人?」


「刺激すると刺すタイプだね、あれは。」


「……。」


まあ、シドはシドだし、大丈夫だろう。トマコはそんなこと思って、小指は痛むが自業自得だと関わらないことにした。





*******



「あれー??」


またしてもトマコはシドの部屋に来たのだが、借りようと思っていた歴史のノートがない。シドがまとめてくれていた筈なのに。そう言えば、こないだのマナーの教本もない。反してテーブルの上には不気味な手紙が増えていた。おえぇ。


「持ってく筈ないしなあ。教室に置いているのかな。」


魔法科コースの棟は一番西だし、面倒だけど仕方ない。とはいえ、初めて行くアウェイの場所だからちょっと尻込み。心細いのでヘレナに付いてきてもらうことにした。


「え!?ヘレナって魔法学科だったの?」


うつむき加減のヘレナはさらに頷いたのか頭が下がった。多分、イエスって事だろう。


「……。……。」


「えっとぉ、Aクラスなの!?すごいね!」


ヘレナとの会話も慣れてきたのかトマコはヘレナの言っていることが聞き取れるようになってきた。いや、ほとんど読唇術かもしれない。モチロン、アーキンス家の婚約者についたアランとヘレナが普通のわけがない。女の子の数少ないとはいえ、ヘレナは魔法学科で女子の主席の成績の持ち主である。


普通容姿のトマコが地味なヘレナと連れ立って歩いたって別に誰も何も気づかなかった。トマコのクラスの筋肉だるまたちのほとんどはウルフ教だから、その分トマコは好奇な目にさらされてしまう。なんだかちょっと緊張して損したな、とトマコは思った。


が、


ここでは別の意味で好奇な目で見られることになった。


「し、シド様のロッカーを勝手に開けている子がいる!」


「誰?あの男の子。シド様の使用人かな?」


「でも、うちの制服だよね。」


「あ、そう言えば、ご兄弟がいらしたんじゃない?」


「そう言えば!」


何も考えずに豪快に机をあさり、ロッカーを開けたのがまずかったのかもしれない。ざわざわと一瞬にして教室の空気が変わり、トマコは注目の的となった。しかし、それよりも……。


「なんじゃこれ……。」


机の中……はまだしもカギがかかっていたロッカーにまでも例の手紙がどっさりと入っていた。ロッカーに入ってたのなんか、知らずに触ってしまったではないか!と青くなるトマコ。


「ひえ!また呪いかかってたらどうしよう!」


おびえるトマコに珍しく傍らにいたヘレナが動いた。


「……!……。」


「え!?そんなことできるの?」


ヘレナはトマコに「呪いがかかっている手紙は送り主に呪いごと返す。」といった。いや……多分そう言った。言うや否やヘレナは手紙に呪文をかけたようで机の中のものもロッカーに会ったものもきれいさっぱり消えてしまった。


「すごいね!ヘレナ!」


感激するトマコにヘレナもちょっと得意顔……多分。綺麗になって変な呪いもどっかいって良かった!とトマコが明るい気持ちでシドのロッカーをあさっていると、何かドヨドヨした空気が近づいてきた。


「お前はだれだ……。」


平穏のねっとりしたしゃべり声にトマコが振り向くとそこには先ほど送り返したはずの手紙などを抱えて立つ不気味な男が立っていた。頭には鳥の糞、転んだのか膝が破けていた……地味な呪いこわい。


「それ以上……近づくな……。」


意外にも男を制したのはヘレナの声だった。え、なに?そんな声出せるの?トマコびっくり。


「!!これはこれはロトウッド家のヘレナ様。」


「……。……。」


「えあ!?えーあー。スワン家の面汚しめ、……え?それ、言うの?……あー……トマコ様に近づくのは許さない……らしいです。」


最初の声以外はものすごっく声が小さすぎてトマコが伝える羽目になる。罵詈言葉とかは勘弁してほしい。


「僕の天使様の妹君に悪いことは致しませんよ……。ヘレナ様とお会いできるのでしたらトマコ様は僕たちのキューピッドでありませんか。」



ようやく顔を上げた男の顔がはっきり見えてきた。張り付いた前髪を無理やりに耳にかけ、青白い顔に青春のにきびをくっつけた痩せ細った男……メサイヤの親戚でなかろうかと且つてのサーカス団の上司を思い出すトマコであった。



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