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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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利害の一致と兄妹と4

「これは!もしや!チョコレート!?」


トマコの目の前には諦めかけていたチョコレート(に似たもの)があった。ウルフの命令でいろんな菓子屋に行ったトマコだがチョコレートだけは似たものを見つけていなかったのだ。


「匂いも……そっくり。」


ごくりとトマコの喉がなる。ちょっと味見してもいいだろうか。そう思ってひとつまみしてから……

やっぱり、ダメかと箱に戻す。それはやっぱりシドに聞いたほうがいいと思ったトマコだった。





******



「で、人の部屋にあるものを勝手に捨てるということには罪悪感はなかったんですね。」


次の日、ネズミに部屋に有ったお菓子をもらっていいかとシドに聞いてきてもらったところ、シドが部屋にやってきた。そして、ゴミ箱を一瞥してそう言った。


「え、ダメだった?自分で捨てるのがおぞましかったのかと思って。なんか毛の入ってる編み込みぬいぐるみとかカビの生えた変な色のクッキーとか。」


仕方ないなあ、戻す?とトマコはシドに見えるようにゴミ箱を傾ける。眉間にしわを寄せたシドは「ダメでないです。」と言ったが深いため息をついた。


「ダメではないですけれどね……。非常に残念な行動です。」


「手紙は重ね直しただけで捨ててないし。」


そう言うトマコに視線を向けてパラパラと手紙を見たシドは


「何枚か読んだんですね。」


とあきれ顔でトマコに言う。トマコの目は思いっきり泳いでいた。


「まあ、いいですけど。処分に困ってたものですから。」


その言葉にでへへと可愛くない笑いをしてトマコはごまかした。


「お兄ちゃんは手紙読まないの?」


「はあ。だいたい内容は同じです。よく見てごらんなさい、色々あるのもほとんど同じ送り主ですから。」


「え?」


トマコが改めて見てみるとシドの言う通り、手紙の送り主のほとんどクラメスラード.Sである。こえぇぇ~~~とトマコ。


「大丈夫?この人。」


「……まあ、私はここにはあまり来ませんし。クラスも離れてますからね。それに、奴に何かされるほど私もやわではありません。」


「え?奴?男!?」


コクリとシドが頷く。しかも、男かよ!おえぇえ~~とトマコ。


「そんなことより、まずかったのはこの品々を貴方がゴミ箱に入れてしまったことです。」


「へ!?」


「この品々には呪いがかかっていたんです。」


「呪い!?」


「一週間ほど経ってますから、少しは薄れてるでしょうけれど、捨てるという行為に対して呪いがかけられていて、それをした人に呪いがかかります。」


トマコの顔が面白いように青くなった。なにそれ、コワイ。


「わわわ……!!それ、解く方法ないの!?」


「大した呪いではないんです。時間が経つと消えるんですが、その分解けないのが厄介なんです。ですから私も一か月ほど経ってから処分しようかと思っていたんです。」


「……。」


「まあ。呪いと言ってもそう強いものではありませんから。せいぜい角で小指打つくらいだと思いますよ。」


「なにそれ、地味だけど想像するだけで痛い。」


まあ、頑張れよ、的な感じでシドがトマコの肩を二回ほど叩く。トマコは涙目になるしかなかった。恨めしやクラメスラード。


「……まあ、それはもう仕方ありませんので。で、お菓子の件ですね。」


「ああ、うん!それ、それ!」


豪華な箱を引っ張り出してトマコはシドに見せた。丸い箱には二センチくらいの茶色の丸い粒が5こ入っていた。見た目トリュフ!とトマコは大興奮。呪いも忘れる現金さ。


「……なんか、ここら辺に歯形が付いてますけど?」


「気のせい!気のせい!」


「多分、これは一週間ほど前に王女に貰ったものです。」


「へ、へえぇ!王女様から!」


「ええ。腐ってないならトマコに上げます。どう言っていたか、たしか異国の行商人から買い取った珍しい菓子だと。」


うーん。敵が送ったものなのか……と思いつつもこれをロマ先輩に見せて再現できないだろうかというトマコの食欲の方が勝る。


「一個いる?」


「いえ……。」


初めから王女からもらったものは食べる気が無かったのであろうシドはあっさりと箱ごとトマコにチョコレート(?)を渡した。


「一応、腐らない魔法をかけておきます。でも、食べるなら早めに食べるんですよ。」


「ありがと、シドお兄ちゃん。」


「今週末も……アレのところに行くんですか?」


「??……ああ、ウルフ様のところ?」


「……変なことはされていませんか?」


「変な?」


マッサージとお菓子を食べること以外にウルフとしたことなどはない。頭を巡らせてからトマコはシドに返事をした。


「なんもないよ。」


「もしもの時の為に。」


そう言うとシドはトマコに手を出すように促して、トマコの指の爪に魔法をかけた。


「何かあったら、ひっかきなさい。相手が眠ります。ですが、一回だけの魔法ですから気をつけて。」


「う、うん。」


今までウルフ邸に行くのにシドに心配されたことなどなかったトマコはうろたえる。トマコが思うよりシドはずいぶんトマコのことを気にかけているらしいと。槍が降ってもおかしくない。


そうしてシドと別れたトマコはドアの角で地味に小指を打って、廊下で何もないのに転んだ。宿題のプリントは何故か張り付いていて慎重に剥がしたつもりが破れてしまった。極めつけは紙の束で指を少し切った。


「く……クラメスラード.S……許さん……。」


余りの地味な攻撃の連続にトマコはまだ見ぬ敵を恨んで……つぶやいた。

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