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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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チーズケーキとシドの秘密2

それからロマは急いでホールのチーズケーキを3つ焼いてくれた。一つはウルフに。一つはトマコに。もう一つはロマのものだ。


迎えに来たモリスンは結局、ケーキが焼けるのに1時時間は待たされることとなったが、研究熱心なロマを見て、トマコには「無害」という結論を出せた。出来ればこのむっとする甘い匂いは御免こうむりたいのが本音だ。一つを渡すとモリスンは「ウルフ様は食べられないかもしれせんよ」と言ったが今日の成果であって、見てもらえるだけでいいと届けてもらうことにした。もちろん、ウルフは食べる。間違いなくホールで。でも、それはいっちゃあイケないお約束。


もう一つはどうしようかと思って、半分はアランとヘレンとネズミにあげようと考える。あとは?週末だから……カドーレに久しぶりにかえってメヌエットお母さんとミハイルお父さんにあげよう……そして残ったら……残ったらシドにあげよう、そう、トマコは思った。



********



寮に帰ったトマコはアランとヘレンにチーズケーキを振舞ってからカドーレにいくことにした。急に週末帰ることとなってもカドーレからは文句ひとつ無しにすぐに馬車が手配された。今からなら夕食を一緒にできるだろう。辺りがすっかり暗くなってトマコがうとうとし始めたころで、馬車がカドーレに着いた。


「トマコちゃん!!」


温かい光を背に受けながらメヌエットはトマコを抱きしめた。


「全く、ウルフにはあきれるわ!あなたをちっとも離してくれないんですもの!」


屋敷に入るとミハイルも出てきてトマコを抱きしめてくれる。西洋式には馴れないものの、こんなのも悪くないとトマコは思う。すると思いがけない大きな影が見える。


「あ……!」


ニコニコしているサムスン兄に、トマコは「ケーキの取り分が!」とサムスンのことなど一つも考えていなかった失態に気付き、思わずケーキの包みを抱えた。思っていたよりもトマコはシドにケーキを食べさせたかったらしい。


「おかえり、妹よ。」


そう、迎えてくれる兄に対して


「ただいま、…サムスンお兄ちゃん。」


とだけ言ったトマコは正直ちょっと動揺していたが、サムスンの手に促されるまま、屋敷へと入っていった。




********



本当なら、出来たばかりのチーズケーキを振舞いたかったトマコだが、サムスンの分を考えるとどうにも一切れが小さくなってしまうので言い出せなかった。アランにあげるんじゃなかったとか、ネズミ>アランの図式が分かるようなことを考えてグルグルして夕食が終わり、ちょっとしたおしゃべりも終わり、今はカドーレのトマコの自室のベットの上だった。


「あ~あ。なにやってんだろう。」


結局、シドは帰って来なかった。この頃、新しい魔法の研究に一生懸命らしく週末の休みも惜しみ、魔法省に寝泊まりすることもあるそうだ。


「半分も残ってる。」


明日の朝、また朝食時に出すなんてことはできない。これは勿体ないので食べないといけないだろう。ロマの努力の賜物でもある。


「太るかも……。」


今更でどうもこうもなのだが一応はトマコも気になるのだろう。そうはいっても甘いものをこんだけ食べても太らないのは物凄い運動量をこなしているからである。なんだかんだ言ってもウルフだって毎日の鍛錬は欠かせない。トマコが諦めてチーズケーキの包みを開いたとき、下の階から物音が聞こえた。


「シドお兄ちゃん!?」


トマコは座っていた椅子から飛び上がって部屋を出た。二階の手摺から下を覗っていると使用人と言葉を交わしてシドが階段を上がってくるところだった。


「……。」


相変わらずの愛想のない顔でトマコを一瞥するシドとトマコに沈黙が流れる。


「おかえりなさい!」


止まっていたシドはその言葉が合図であったように動き出した。相変わらず人には挨拶させておいて、自分はしない徹底ぶり。が、慣れてきたのかトマコにはそれさえ久しぶりでなんとも思わなかった。


「帰ってきたばっかりでなんだけど、後で話をしに行っていい?」


自室のドアに手をかけたシドはトマコの申し出に


「手短にしてくださいよ。」


とだけ言って、ドアを開けてトマコを招き入れた。







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