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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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チーズケーキとシドの秘密1

さて、この週末はロマとの約束があったトマコはロマの出していた小さな店へと向かった。今週はウルフも忙しく、完全なる休みになって、トマコにとって嬉しい限りであった。モリスンはロマのところへ行くトマコにいい顔しなかったが「トマコの故郷の菓子を作ってもらうよう頼んだ」というウルフの言葉に従った。ならばうちの職人たちに……と言いかけたモリスンがうちの職人はお菓子なんぞ作るものはいないと唸って黙った。……ウルフは甘いものが苦手だと思われている節がある。お気の毒。


「4時には迎えにまいりますから。」


モリスンはロマの店にトマコを届けるとロマにもその両親にもくれぐれもよろしく頼むと半ば脅して去っていった。用事さえなければトマコを監視続けるつもりだったモリスンだったがモリスンは甘いものが苦手なためにその甘ったるい匂いに耐える自信はなかった。念押しされて少し困った顔をしながらロマはトマコに「ずいぶん大切にされているんだね」とトマコに言うものだからトマコは苦笑するしかなかった。


「それで、チーズケーキの話なんだけど。チーズってなんなのかな?」


ロマの店の奥の廊下の先は大きな調理台が沢山ある部屋につながっていた。大通りのロマの両親の店の厨房に繋がっていたらしい。ロマは自分の店が欲しかったので無理言って裏通りの面に店を出させてもらったと言った。


「チーズはこっちで言うノコタそっくりの乳製品で……えーっと、ケーキの作り方は詳しくはわからないんだけど、チーズが甘くて焼いてあって……。」


自分の表現力の無さにあきれるトマコだったがロマは根気よくトマコの話を聞いてくれた。ロマは特別美男子ではない。でも、清涼感のある顔だった。一重の細い目ののっぺり顔とこげ茶色の髪、茶色の瞳は東洋人を思わせる。今までかつてない親近感がトマコに湧いた。正直言って、ハリウッドスターのようなウルフやシドは雲の上の他の人種であり、自分とは一生会いまみれないものだとトマコは思う。簡単に言うと現実味がないのだ。


「気にしなくっていいんですよ。材料が分かれば嬉しいけど、トマコ様の思い出す限りでも十分にヒントになりますから。」


そのうえ、ロマは紳士で優しかった。今までのトマコの人生で座るときに椅子を引いてくれた男がいただろうか!いや、無い!とトマコは拳を固くして熱弁できる。


「あの、私の方が年下だし、トマコって呼んでください。敬語もいりません!」


「あ、いや、カドーレ家のお嬢様を呼び捨てには……貴方はウルフィファル様の大切な方でもあるし。」


「ク、クラスでだって後輩です!ほら、私はロマ先輩と呼ばせてもらいますし!」


「……じゃあ……トマちゃん……」


「え?」


「あ、ごめ…調子に乗って!ちっちゃくてかわいらしいものだから……。」


「いい!いいです!トマちゃんで!」


「あ、でも、二人の時だけね……秘密……。」


そんなこと言ってロマがトマコに微笑むものだから、トマコの心臓が飛び跳ねた。

ロマは丁寧にトマコに話を聞いた後、今度は色々な材料を出して考え出した。トマコがかろうじて思い出したので下地にはクラッカーに似たこちらの菓子を砕いて引き詰めることにした。一つ目はそれに砂糖だけを加えたノコタのクリームをのせて焼いたが甘いだけのものとなった。トマコが酸味が欲しいというので果実の汁を加えて二つ目を焼いてみる。二つ目はなかなか近い味わいになってきた。


「すごい、こんなケーキ食べたことがないよ。トマちゃんすごいよ!」


きらきらと目を光らせてロマがトマコに言う。褒められてトマコも嬉しくなった。


「でも、まだちょっと、足りないんですよね……。色がもっとオレンジ色で焼き目がついてたし……。」


「今度はじゃあ、卵黄を足してみよう。」


ロマは頷くと使用した材料を細かく記してまた焼く作業に入った。ロマは大変熱心で、トマコの好感度は上がりっぱなしだった。


「これでどうかな?」


3つ目のノコタのケーキが出てきたとき、切り分けたお皿を渡されてちょっとロマの指がトマコの指に当たってしまった。普段、ウルフにつままれようがシドに小突かれようがアランに引っ張られようが何も感じないトマコがびくっとなってしまった。


「熱かった?ごめんね、お菓子のこととなると夢中になっちゃって、ダメなんだよね……。」


「い、いえ!ぜ、全然だめじゃないです!」


差し出されたノコタのケーキを口に入れると、トマコの口に懐かしいチーズケーキの味が広がった。



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