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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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トマコの誕生日7

さて、トマコの誕生日当日、授業が終わるとアランがトマコを部屋にと急がせた。もう、なんなのよ。と、トマコ。何も知らされていないトマコはいつものウルフィファル邸訪問と変わりないので急ぐ言われもないし、急いだってウルフが早く帰ってくるとも思っていない。


「今日は手ぶらで来いって言われたけど……。珍しい。」


ロマとの共同開発の予定はまだ先なので、もう近辺のスイーツは飽きてしまったのかも、とも思う。と、すればウルフは肩が凝っているのか……トマコの想像はそんなところだった。


黒塗りの車に乗っていつものいかついお兄さんに促され、ウルフィファル邸に着いたトマコはモリスンに着替えるように言われる。トマコの部屋とされるラブリーな部屋の丸テーブルの上には衣装ケースと見られる箱がある。


「嫌な予感しかしない……。」


ぐるぐるとテーブルを回ってみても状況が変わるわけでもなく、仕方ないのでカバンから取り出した削られていない鉛筆で箱の端を押し上げてみた。……何に対してのこの行動かは本人にもわかっていないのだろう。かぱっと開いた上蓋は斜めにずれて中から濃いグレー色のものが見えた。


「???ひらひらじゃない?」


そこでやっとその物体がピンクでないことに安心して近寄って箱を開ける。


「……ま、……なんていうか。」


取りあえずひらひらピンクの服でないことは確認してほっとしたが、中から出てきたのはかっちりとしたスーツでそれもなんというか、トマコ的にウキウキするものではない。しかしながら穴も開いてなければ芸人使用でもなさそうなので素直に着ることにした。


「……。」


箱の奥には触れてはならない白の輝くばかりのヒラヒラのぼりゅーみーなブラウスが入っていた。それはそのままに、召使時代のブラウスを出しきた。せめてものモリスンのこだわりだがトマコにとっては危険信号でしかない。もちろん、お笑い系の……。


「どっかお出かけすんのかな。」


鏡に立派な背の低い男の子が映ると、トマコはため息しか出ない。間違いなく男装だ。しかも程よくついてきた筋肉がいい感じにマッチしてしまっている。とほほ。


「ご用意お済でしょうか?」


「ああ、はい。」


扉の向こうからはモリスンの声が聞こえてきた。この屋敷にはトマコの着替えを手伝う人はいない。いや、そもそも女性というものがいない。かといって手伝ってもらうほどの着替えは無いし、髪もなでつけたら終わりだ。世の中は実にうまくできている。


「あれ……。まあ……。ウルフ様がお待ちです。」


明らかにブラウスが普通なのを講義したげな視線をトマコはかわすことにした。モリスンの趣味はいただけないのだ。


「今日はウルフ様、早いんですね。」


「ええ!特別な日なのですから!」


ちょっと張り切るモリスンにトマコは不思議顔だった。なんだ?このモヤモヤ感。


「それでは。ウルフ様!トマコ様がお着きですよ!!」


ウルフの私室の扉にいつもよりハイテンションで声をかけたモリスンは扉を開けてトマコを中に押し込めた。そんなことしなくたって自分で行くのにと前につんのめりながらトマコが中に入るとなぜだかおめかししたウルフが皿を持って立っていた。


「……。今日はイケメン度3割増しですね。ウルフ様」


ご機嫌な様子だったのでトマコはウルフに言ってみる。室内は甘い匂いに包まれていた。


「誕生日らしいな?」


「へ!?」


「そこの机の上にプレゼントだ。」


なんだかわからないが誕生日を祝ってくれるらしい。フォークの先でプレゼントを差された。ちょっとケーキの破片が飛んで行ったが二人は動じなかった。


「???あ、はい。ありがとうございます。」


なんで知ってるのか、とかよくわからないトマコは部屋の様子をやっとキョロキョロ見回した。風船で色とりどり飾られて「トマコ様!お誕生日おめでとうございます!祝14歳」と書かれたプレートが設置されていた。あの、黒服のおっさんたちが考えて用意したと思えば涙ものの可愛さだが急いで乾かしたのか字を書いた絵具が垂れていてちょっとしたホラーにも見える。赤字で描かれた「祝」の字が特にいい感じに「呪」に見える不思議。正直、喜んでいいのか受け止め方に困るシュチィエーションだ。


「あの~。主役、ボク、なんですかね?」


中央のホールケーキはトマコ様おめでとうのプレートが無残に追いやられて穴が開いている。もぐもぐ食べているのはもちろんウルフだ。これは、私の誕生日にこじつけて甘味三昧していると受け取っていいのだろうと悟るトマコ。正解だ。


「気にするな。」


「はあ。」


長テーブルに置かれたお菓子を端から味見しているウルフを横目で見ながらトマコはプレゼントの包みを開けることにした。手のひらくらいの箱には華奢な金の鎖の付いたペンダントが入っていた。モリスンが選んだとは思えないシンプルさ。


「正直、意外だった……。」


ポソリ。つぶやくトマコだったがこれなら普段に使えそうかもと思ってペンダントトップを指でつまんだ。細かい鳥の絵が彫ってある金色の3センチほどの丸いペンダントトップ。普通に可愛いぞ。とトマコはマジマジと観察した。すると、側面に突起を見つける。


「なんだろ?」


突起を押すと貝殻のようにペンダントトップがパカッと開かれる。


「……。」


ロケット型になっていたペンダントトップの中には微笑む美男子の絵姿が入っていた。うん、目の前でケーキ貪ってるその人に間違いないだろう。「愛するトマコへ」ってのもキモイし夢見が悪そうなペンダントだ……絶対、モリスンだと断言できるとトマコは確信した。


その様子をどうでもよさそうに見ていたウルフは


「気にするな」


と気の毒そうに声をかけた。


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