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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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トマコの誕生日6

さて、明日が誕生日、トマコには朝からウルフィファル邸に来るように数日前から言ってある。ケーキの準備も部屋の装飾もセッティング済みだ。


が、ここに迷える子羊いえいえ個執事が……。


「トマコ様がお喜びになるものが皆目見当つかなくなったのです。不甲斐ない私めをお叱りください。」


蒼白の顔のモリスンはここ数日(ウルフからの)トマコへの素晴らしいプレゼントのことばかり考えてきた。婦女子が一般的に好むという人気の店に連れていってもトマコの反応は薄い。しかも私室を探ろうともシンプルすぎて考えれば考えるほど訳が分からなくなっていた。元々トマコの生まれ育ったトマコの部屋もプー〇やナ〇キ、運動部の子にふさわしい某ブランドのカバンやタオルで彩られるだけのシンプルな部屋だった。可愛いものといっても文具くらいでほとんどは部活の備品に誕生日プレゼントが充てられていたくらいだ。


「なんでもいいだろ?」


呆れて言うウルフ。そんなに悩んでいるモリスンに不思議顔。しかし、そんなこと言ってるウルフは実はトマコに女の子用に改良した練習用の模造短剣を用意していた。ついでだ、ついでにな。と自分の心に言い訳しながら。そんなウルフにモリスンは熱く続けた。


「なんでもなんて、いけません!いくらウルフ様とトマコ様がお互いに強く結ばれていようとも、女性の誕生日に対する思い入れを蔑ろにしてはいけません。それは、それは手痛い出来事が後で待ち構えているのです!「いいのよ、気にしなくて」「何もいらないから」なんて、言葉をうのみにした日には!!それは!……それは!……グェホ!グェホ……!」


熱弁しすぎたモリスンが咳き込みながら訴えるのはカナリ怖い。過去に恐ろしい何かがあったのだろうモリスン……。


「……そ、そんなものなのか?」


「そんなものなのでございます!!」


最早目まで血走るモリスンにウルフも絶句である。


「……一応用意してるんだろ?」


「はい……。しかし、考えれば考えるほどわからなくなってしまい……。宝飾品はトマコ様を女らしくさせてしまいますでしょう。……洋服もしかり、ウルフ様の為にもそんなものはいけません。ですから、身近におけるものをと思いましたが、トマコ様はご興味がない様子で……。私の頭を絞り出して思い至ったのが人気店のオーナーにアドバイスを受けたこれです。」


「……。」


恐る恐るモリスンがウルフに見せてきた箱をウルフは黙って覗いた。しかし、コメントは控える。モリスンがこんなに悩んで出した答えに「ど~でもいいのに」という想いが合わさって究極にどうでもいい気分にウルフが落ち着いていた。


「モリスン、完璧だ。包んでくれ。」


「仰せのままに!!」


モリスンがとても安心した顔になるとウルフもほっとした。それをトマコが喜ぶとは思えないがまあ、どうでもいい。そう思ってメンドクサイこの問題を軽く片づけた。モリスンは嬉々として品物を抱え込む。


「実は、アランにトマコ様が「練習用の模造剣」を欲しがっているとも聞いていたのですが、それではあんまりだと思いまして!そんなものは備品であって、プレゼントなどではないですからね!ご婚約者にそんなもの与えたとなるとウルフ様の名前に傷がつきます!ああ、良かった!これで私の肩の荷もおります!さっそく包んでまいりますので首尾よく明日、お渡しください!」


その言葉にちょっとウルフが固まってしまった。ウルフが用意した模造短剣には「トマコへ」と裏にさりげなく彫られている。急ぎで外商に持って来てもらったものだが、女性用だと説明した地点で誰に贈るものかばれており、気を利かせて名前を彫り込んで来てしまったのだ。


言いたいことだけ言って軽やかにドアの向こうに消えていったモリスンの足音が聞こえなくなってからウルフは机の引き出しを開けた。


「……チッ。」


これでは恥ずかしい上に、的外れのプレゼントになりそうな予感にウルフは乱暴に包装を剥がすと中の模造剣を取り出し、証拠隠滅とばかりに「トマコへ」の文字を削ってからゴミ箱に放った。


ガゴン。


丈夫で軽い木で作られたそれは音をさせながらウルフの私室のゴミ箱に入っていった。

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