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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
三章

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いざ学園へ7

えらそうに校長と話をするウルフがちょっと政治的な雑談に入ってしまったので、トマコはぼーっと窓の外を見ることに徹した。若葉がキラキラと光り、トマコのどんよりとした気持ちと正反対のように思える。実は今日も朝も早からシドに行ってらっしゃいをした。トマコ的には今日から寮生活になるのだから、一言くらいは有るだろうと思っていた。仮にも兄妹なのだ。だから、眠いのにいつもよりは頑張ってシドが来る前に起きた。が、いつものように「行ってらっしゃい。」とトマコが言うといつものようにシドはトマコを無言で凄んでから魔法省へと出かけてしまった。「いったい、なんなの、あれ。」思い出せばムカつくトマコ。と、何気なく見ていた窓の外に思いがけないものを発見した。


「おい、いくぞ。」


トマコが思わず窓に近寄ろうとしたとき、ウルフがトマコの首根っこを掴む。ぶらぶらと足が浮くトマコが抵抗できようものか。とほほなトマコ。


「ウルフィファル君が想い人に出会えてうれしいよ。」


学園長が部屋を出る時にウルフに声をかける。「重い人」に聞こえたトマコはぶらぶらと力なくゆれる自分の足を見ながら眉間にしわを寄せるしかなかった。




*******




「じゃあな。週末には来いよ。おい、任せたぞ。」


「おおおおお、お、お、お、お任せ下さい!ウルフィファル様!」


ウルフはそう言ってアランにトマコを任せると颯爽と帰って行った。アランはボーっとウルフの後姿を延々と見送っている。


「ちょっと、もう行っちゃったよ?」


「……。ああ、なんて凛々しいお姿!ウルフィファル様!あの!う、う、う、ウルフィファル様が!この、ぼ、ぼ、僕に!おサルを!」


「はっ!?」


頬を赤らめて情熱的に語るアランの最後の言葉に憤慨したトマコはアランに膝かっくんをお見舞いする。ウルフに見とれすぎていたアランは面白いくらいに前のめってふらついた。その姿に少しだけ気を取り直したトマコはアランに自分に与えられた部屋に案内してもらった。


「さて。」


ほぼ荷物も勝手に揃えられたためにトマコにやることはほぼない。せいぜい疲れたと言ってベッドに寝るくらいなものだ。トマコは意味深にドアに鍵がかかることを確認するとカチンと鍵をかけた。


「ねえ、どういう事か説明してよ。」


ベットの隙間に脅しをかけるトマコ。トマコの気が狂ったとか、人には見えないものが見えるとかではなく、話しかけたのはネズミであって。


ネズミは「チッ」とトマコから一旦背をむけると、恐る恐るトマコを伺いながら向き直った。



******



「……色々慣れないことも多いですが妹共々宜しくお願い致します。」



凛とトマコの隣に立つのはシド。

二学年上のシドは一年間はトマコと一緒に学園に通うことになっていた。ついさっきネズミから聞いたのだ。


ニッコリと笑って講堂に集められた全校生徒に堂々と自己紹介するシドはトマコの目から見ても美しかった。ホントにこの男は人を黙らせるだけのオーラがあると思う。カリスマ性があるって言うのだろうか。その髪の色と言い、顔の小ささと言い、パーツの美しさや、位置。なんだか作り物みたいに綺麗で。それでいてこんなにも好奇な目が自分たちを刺していても怯むこともない。


「なんだかな。」


トマコは小声でぽつりと言った。

「妹」としての立場に知らないうちにしがみついていたのかもしれないな、とトマコは思う。

こんなにも自分とかけ離れた人間が近しいなんて考える方がおかしかったと。一緒に通うならトマコの耳に入れたっていいじゃないか。なにも秘密にすることなんてない。そう、思ってしまった自分がおかしい。だって、シドにとってトマコは利用するものでしかない。


ちょっとは信用してくれたって、と思ったところで応えてくれる相手ではないのだ。


もうひとつ小さくため息をつくと、トマコはにこやかに笑うシドの後について講堂の少し上がった段の上から降りていった。この人は自分の目標に忠実な人なのだ。そんな気がしてならないトマコはシドの背中をぼんやりと見つめた。





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