いざ学園へ1
おっす、おらトマコ。久しぶり過ぎて面目ねぇ。
おらのこと覚えててくれたか?
……ふざけました。ごめんなさい。
では、三章スタートです。よろしくお願いします。
戸籍も居場所もなんとか落ち着いてきたトマコはカドーレで心地よく暮らしていた。マナーのレッスンと歴史の勉強はキツイが他は何とかやっていけている。いざとなったらポケットの住人だってカンニングの手助けをしてくれていた。って、オイオイ。しかし、この数日が快適過ぎてすっかり忘れていたのだ。トマコがどうしてカドーレの養女になったのかを……。
「おい。」
「……。」
「いくらカドーレに馴染む時間が必要だからって俺のところに来るのを忘れていたんじゃないだろうな?」
恨み言を言ってトマコの耳を引きちぎらんばかりに引っ張るのはウルフ。久々に会ったウルフは不機嫌極まりなかった。その眼力も半端ない。今朝いつものようにシドに『いってらっしゃい』をさせられて朝食を取るとマナーレッスンの用意をして部屋から出たところで黒服の厳つい兄ちゃんたちに捕獲⇒連行された。連行先はウルフィファル邸のウルフの私室。屈強そうな男たちはトマコを部屋に投げ入れる時に「どうか、お大事に」と言っていた。え、どういうこと?なんで涙目なの?と、トマコの生存センサーがピコピコ鳴っていた。
「スイマセン、スイマセン、スイマセン……。」
取り敢えず機嫌が直るように謝っとけ!のトマコ。ガクガクブルブル。
「やっぱり手放したのは間違いだった。明日から俺んとこに戻ってこい。」
「へぇ?」
よくわからないが死刑宣告ではなかったので変な声が出たトマコ。
「ああ?随分不満そうじゃないか。」
「ごめんなさい……ごめんなさい。」
「取り敢えず俺の部屋に来い。」
強引にウルフがトマコの腕を引っ張る。傍から聞けばアラン、イヤンな俺様ラブラブ会話だがネジの外れたウルフの脳みそが求めるのは糖分でしかない。
「ウルフィーちゃん、待ちなさい。」
朝からかどわかされた状態で連れてこられたウルフィファル邸。こわもての黒服集団から解放されたと思ったらこわ~い美青年に怒られるトマコ。マレノのいきなりの登場はヒーローのポジションだ。
「どうして、ここに?」
せっぱつまっているウルフはギロリとマレノを睨む。しかし、マレノもマレノ。殺人光線も何のそのでニッコリ笑うとトマコを掴んだウルフの手を易々と外す。
「これから励んでもらうのは構わないんだけど、トマコは「嫁」にするのよね。ちゃんと育てないとそれこそトマコが社交界で嬲り者にされて数日で事故死だわよ?ウルフィちゃんの嫁にするんだから迅速に環境を整えちゃわないと。」
「くそメンドクせえ。」
「来週からセリベートに入れるから。あそこに入れたら文句ないでしょ。」
「おいおい。簡単に言うなよ。トマコがやって行けるのか?」
「大丈夫よ。その辺は考えてあるから。ふふふ。心配してるの?もーウルフィちゃんたらホントにトマコにぞっこんね。」
「……俺んとこに毎日寄越せよ。だいたいこいつは俺のモノなんだから。」
「あらあら。ウルフィちゃんのエッチ!でも毎日はムリよぉ。学生なんだもん。週末は約束するわ。」
「くそっ。」
「そう言うことだから。トマコ、頑張ってきてね!」
「ぬ、ぬおおおおおおおおおう!」
これをみよがしにマレノはトマコの頬を豊満な胸でぶるんと叩いて行った。それを間近に見たウルフが鳥肌を出して顔を歪めている。トマコは一瞬酸素を失ったが今しがたの会話を反芻していた。
あれ、結局逃げたはずが、ウルフの嫁のままだし、おかしい。
「……来週から?」
なんだったけ?
呟くトマコにウルフが珍しく答えてくれた。
「セリベート学院だ。お前を学校にやると言ってたんだよ。まったく、面倒だな。」
「すいません、私がウルフ様の「嫁」って……。ひぃいいい!」
こないだからちょっと不安に感じていたので思い切ってトマコはウルフに尋ねるがウルフにひと睨みされてトマコは生きた心地がしない。
「おい、ちょっとでも女臭さ出してみろ海に沈めるからな。お前は俺に糖分を運んで来ればいいんだ。」
「ふぁいいいいいい!」
そう言ってウルフがトマコを部屋に押し込むと今日も今日とてトマコにはお菓子地獄が待っていたのである。結局トマコの「嫁問題」なんてウルフに尋ねることさえ無理……。取り敢えずは前を向いて歩くしかないトマコであった。




