増えるトマコの家族8
きっかけは小さな集落の取り合いだった。
そこには特に二国間に置いて強い協定の末どこにも属さないとされた部族が住んでいた。どうしてそのような協定が結ばれたかと言えばその部族は極めて特殊な魔力を生み出すものが居る。彼らは野心もなく、元来戦いを好まない穏やかな部族だった。魔力以外はただの田舎者に過ぎない。それでも野心家はその村人を欲した。度重なる誘拐や小競り合いに仕方なく村人たちは身を潜めながら暮らすことを選んだ。
いつしか幻の一族と呼ばれるようになった頃、森に一人の軍人が迷い込んだ。戦火から逃れて怪我を負っていた軍人は幻の一族に助けられやがて傷が癒えると村を出て行った。その後部族は移動し、本当ならその場所は突き止められるものではなかった。……だが、部族の娘と恋仲になった軍人はまた会う約束をする。軍人は娘を裏切り、国王に進言し報酬を乞う。
噂は瞬く間に広がり、部族の争奪戦となった。協定は破られ、隣り合う二つの国は戦争を起こした。
そしてその戦いは隣国のコルトソップが優勢となった。その時。我がベルエン国の国王はどうしても隣国に幻の一族を渡したくないと……
森ごと爆撃……
……
……
一瞬で森は……
……
……
地獄となった……。
*****
「シドは両親が抱きかかえた状態で焼け野原の瓦礫の下から発見されたんです。ご両親が抱きかかえてなければ即死していたでしょう。一緒に居た妹さんは僅かな肩の差で亡くなられていたと聞きます。」
「……。」
「ここに来た時、シドの瞳には何も映らない状態でした。酷いショック状態で。」
「シ、シドお兄ちゃんがその幻の一族なら王様はシドお兄ちゃんを利用するつもりなの?」
「確かにシドは魔力をたくさん持っていますが他に魔力が多い人間がいないわけでもありません。王たちは女性を求めていたと聞きます。なんでもその部族の長となる女性には先見の力があると。」
「……一族を皆殺しにされた復讐。」
「シドが憎い王宮で務めているのはそう言うわけだと思います。でも、トマコちゃん。復讐ではシドは幸せになれない。あの子は幸せにならなくてはいけないんです。」
「いやいやいやいや。ホントに、私、他人もいいとこなんですよ。シドお兄ちゃんにとって、利用価値有りなだけの存在なんです。そもそも私の事人間として扱ってもらっていないんですから。」
「いいえ。シドがお芝居でも貴方に「お兄ちゃん」なんて呼ばせている事が特別なんです。」
「いや、だから、それはカドーレの養子になるために……。」
「シドにとって妹は特別な存在です。一族の結束はとても強いと聞きます。」
「え……と、でもそれはホントに作戦であって……。」
「トマコちゃん。シドをお願いします。あの子を助けて。あの子は本当に繊細で優しい子なんです。」
「……。」
「……助けてあげて……。」
最後の方オーレンは泣き出してしまってトマコは途方に暮れてしまった。年長者のオーレンでも無理なのにトマコにシドをどうできるって言うんだ。「絶対む~り」と力説できる。お姫様がうっかり召還しちゃったのがトマコ。ただそれしかないのに。なんだかややこしくなってきたなぁとトマコは考えることさえ嫌になってきた。
「だいたいさぁ……。」
そんな重い話聞かされたらシドのこと明日からどう扱っていいのかわかんないよ。とトマコ溜息。
「はやく元の世界に帰りたい……。」
そうトマコは切に願うしかなかった。
ムカつくしか思わなかったシドがかわいそうだなんて……
ちょと抱きしめてあげたくなったなんて……
考えたくもないトマコだった。




