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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第二章

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増えるトマコの家族5

瞬間、立ち上がったシドの背中をトマコが見た。助け起こす気は無いんだろうなと痛いので転んだまま。あれ、さっき、ロープで椅子にくくり付けられてたよなあとボンヤリ考える。


「今回はやりすぎですよね。先輩方。」


ゆらりと黒い煙のような立ち上がったと思える背中に冷凍庫かと突っ込みたくなるほど冷めた声。恐ろしい。


「ちょっと世間を教えてやっただけだろう?ビスローがそのサルにひどい目にあったんだ!お前も只じゃおかないぞ!」


未だもだえる男をさして一人が言った。トマコは良くわからんがやっとこさお尻を擦りながらしゃがんだ。シドの雰囲気からシドが勝てると確信めいたものが込み上げて、もっとヤレヤレ~やっちまいなって感じになっていた。


「……。これでも大事な妹なんですがね。」


少しだけシドが後ろを気にした気がした。すると油断しきったトマコの体がふわりと浮く。


「あれ、れ。なんだ!?」


気が付けばもう一人の男の腕の中。なんだかよくわかんない。


「妹?男だろ。これは。」


学習したのか大人……青年Bはトマコを摘み上げるがトマコの蹴りは空中で風を切るだけに終わる。男じゃないし!っていっても見た目少年のトマコが「妹」もくそもないのでその辺は八つ当たりに近い。


「まあいい。このサルがどうなってもいいのかな?」


「私がサルならお前はゴリラだろ!ウホウホ!」


後の二人はまだ整っている部類だがトマコを捕まえた青年Bはどう見てもゴリラ顔。ゴリラ顔に偏見はないがそんな人が他人の容姿をとやかく言うのはチガウと思う今日この頃。


「なんだとぅ!この!」


「ぎゃ~~!!痴漢!!」


ゴリラ男が真っ赤になってトマコを揺さぶる。その時青白い炎がゴリラ男の足元を通過した。


「ぎょえええええ!」


一瞬のうちに男の足は床に凍り付いていた。冷気が上がってきてトマコも思わず身震い。何これ。


「凍傷にになって足がもげないうちに妹を放しなさい。」


「くそっ!」


またもやポーイと投げ捨てられてクッションもないままシドの隣に落とされる。


「イテテテ。」


さっきよりも大袈裟にお尻を擦ってもシドはこっちなんかちっとも見ていなかった。


「おい、氷を何とかしろ!」


ゴリラ男が言うとシドはふっと笑って今度は紅い炎がシドをいじめていた三人組へと向かった。


「「「うわあああ!あっちっ!!」」」


シドは熱くて飛び跳ねる三人を見ながら楽しそうに炎を操っていた。


「今日はね。大人しく何てしてあげれません。私は怒ってるんです。」


そう言ってシドはまだ何かを仕掛ける様子だった。目の前の三人組はもう青い顔してあたふたしていて報復には十分すぎて見えた。これ以上は死んじゃうかもしれないとトマコは思った。


「シドおにいちゃん!死んじゃうよ!」


しかしシドは日頃の恨みなのかなんなのか引く気は無いようである。まずい。まずいんでないかい?これ以上は犯罪臭い。どうにかしてシドを止めなくては……しかし、トマコが言って止めるシドか?いやいや、それは無理だろう。


三人の叫び声と共に床が液状化して行くのに焦ったトマコは叫ぶ。


「か、火事だああああ!」


以前聞いたことが有る、暗い夜道で襲われたら叫んだらいい言葉。「助けて!」では無理かも知れなくても「火事」だったら誰もが気にかけてくれるという助けを呼ぶ奥の手だ。


あまりにトマコが騒ぐので聞きつけた魔法省の人が向こうからやってくるのが見えてやっとシドの詠唱が止まった。



******



「妹が私を庇ったのでけがをしてしまいました。……それが許せなかったのです。」


下を向いてしおらしくそう言うシドはなんていうか同情を誘うのになんの問題もない。モチのロンロン、トマコだってお尻が痛いのをアピールした。なんてこたあない、騒ぎを聞きつけた職員の後ろには置いてきたはずのサムスンにーちゃん。サムスンはトマコとずぶ濡れのシドを見つけると無言で怯える三人を睨んだ。今まで出ていたいい人オーラが「この人誰ですか?」くらい消えていた。いやん。この人もこわい。


「俺のかわいい義妹……アーキンス家の婚約者に手を上げるとは……。」


冷血の男の冷えた声も怖いが怒れる大男の低い声も怖い。サムスンは目の前の男たちにトマコがウルフの婚約者だとのたまう。なんで、今それ!?罰ゲームかよ、とトマコも同時に半泣きになった。


「「「あ、アーキンス!まさか、ウルフィファル様の……。」」」


狼狽えた三人がトマコを見て言った。なんか、ハズレくじ引いて落ち込んだ子供みたいな反応は止めて欲しい。カドーレはともかく、アーキンス家のウルフィファルの嫁に手を出したとなればいかにこの三人が上流貴族であろうとヤバイ。明日にも抹殺。サムスンは分かってて効果的な言葉を選んだのだ。


「今後の身の振り方を考えるんだな。……夜道は背後に気を付けろよ。」


そんなこと言ったってウルフはトマコが死んでも「ふうん。」で済ます男なんだよ!とトマコは叫びたかったがそんな脅しで聞くなら黙っておくことにした。


狼狽しきった男たちは今後の身の振り方を思い描いて絶望モード。後から来て話を聞いた魔法省最高責任者のコットランも三人に事情聴取後に罰則もしくは退職を命じると言ってくれた。正直アーキンスの事が有ったとしてもこんなに親身になって怒ってくれるとは思わなかったトマコはサムスンをちょっと見直した。


「ああ!」


「どうしたの?サムスンお兄ちゃん?」


「トマコ、お前、母さんが作った差し入れどこやったんだ!?」


「……え!?……あ。」


そこで廊下に戻ってメヌエット母の差し入れのお菓子を見に行ったのだが、シドの氷と炎攻撃に有ったらしく、水浸しの黒い塊が佇んでいた。


「うおっ。」


この日一番のサムスン兄の悲しい顔を見たとき、やっぱりちょっと情けないと思ったトマコだった。

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