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トマコと帝国の魔法使い  作者: ちくわ犬
第二章

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増えるトマコの家族4

「アンヌゥウウウウウ」


「どうせ会うなら声でもかければいいのに。」


「うぬぬぬぬぬ。それが出来れば……。」


トマコは「このへタレ。」という言葉を何とか飲み込んだ。大きい図体して絶対にはみ出ている柱の陰からサムスンは別居中の妻を見ていた。……皆さん、ストーカーがここに居ます。と思わず指さして叫びたかった。


「でも、思ってたのと違う感じでビックリでした。」


「何が?」


「サムスンお兄ちゃんのお嫁さんって勝手に気が強い美人を想像してたんで。」


「ちまっこくて可愛かっただろ?極度の人見知りなんだ。結婚してからもあんまり会話できてないしな。」


「へ!?そんなんでよく夫婦してましたね!」


「小動物みたいでかわいいんだ~。まあ、トマコもちんまいから可愛いぞ。」


「変なフォローいらないし。」と突っ込むのもためらってトマコは逃げられたくせにデレデレとその人を見つめる情けない男を眺めた。サムスン兄の逃げた嫁さんは確かに背が低い。(なんの影響か目が行ってしまったが)体の割には胸が大きい人で終始うつむいて歩いていた。なんていうか、「巨乳の心霊写真の女の人」というのがぴったりな形容詞に違いない。離れてみる限りでも暗い……ダークな感じだった。大柄で大雑把で脳みそにひまわりが咲いてそうなサムソンとは対照的。


「……なんていうかサムスンお兄ちゃんとの会話が思い浮かばない。」


サムスンは「人見知りの為にあんまり会話がなかった」と言ったが共通の話題が無かったんじゃないのかと疑ってしまうトマコだった。


「もう行きましょうよ。」


一向に声をかけるわけもなく、嫁さんが廊下に消えていくのをただ見つめていた情けないサムスン兄にトマコは声をかける。もう、めんどくせぇ。


「うう。アンヌ……。」


おいおい、名残惜しんだところでアンヌの姿はもうないだろう。溜息をつきながら待っていたトマコも15分ほど経過したところで諦めてシドのいる魔法省へ行くことにした。


「あれえ。こっちだった筈なのに。」


差し入れも重いし早く用事を済ませたい。けれども増築されたのか途中から入り組んだ迷路のような感じになっていてサムスン兄を置いて来てしまったことに今更ながらトマコは後悔した。


「せめてネズミを連れて来ればよかった。」


心細くなってきたトマコは薄暗い廊下でしゃがみたくなってきた。でも、しゃがもうにもなんか、埃っぽすぎて無理。



「……」


「……」


「!人の声だ!」


中腰になったのが良かったのか低い声がトマコの耳にはいってきた。どうやらこの曲がり角の先のようだった。人の声にちょっぴり元気になったトマコは早足になって先を急いだ。


「あれ?」


やっとその角をしたとき、トマコは水が流れてくるのを見つけて足を止めた。


「お水?」


するとさっきまで聞き取れなかった声がはっきりと聞こえてきた。



*****



「まったく生意気なガキだな……。」


「どうせ、ずぶ濡れになったところで魔法使ってすっきりした顔で部屋に戻ってくるんだろうよ?」


「へっつ。」


「何がカドーレだ。ゴミ生まれのくせに。」


「おい。これなんかどうだ?」


只ならぬ雰囲気にコソコソとトマコが角から覗けばそこにはずぶ濡れになって椅子に座らされたシドがいた。シドは目隠しされて両手は後ろ手に拘束されているようだった。三人いた男はどう見ても成人している男なのに明らかに子供のシドの口を開けさせて虫の死体を口に入れようと面白がっていた。


「な、なんだあれ!?」


ついさっきまで「シドのイビラレるところが見たい」と息巻いていたトマコだが今見た光景にそんな気持ちも吹っ飛んだ。


「大人のくせに苛めなんて!」


かっと血が上ったトマコはなんにも考えちゃいない。考えるより行動しちゃうタイプ。


「シドを放しなさいよ!」


「「「……。だれだ?」」」


裏返って甲高い声が廊下に響くと大の大人三人が啖呵をきったトマコを見た。


ここで、我に返ったトマコ。いや、ちょっとは考えてから飛び出そうよ。男の一人に簡単に摘み上げられて鬼気迫ったトマコが繰り出すパンチは風を切っただけに終わる。どう見てもコントだ。


「なんだ、このサル。笑える。」


この言葉にかっときて大胆になったトマコは体を揺り動かしてニヤニヤ顔の男の股間めがけて渾身のキック。



「~~~~~~!!!!!いっ、、、、、、、うう~~っ!!」


今度はクリーンヒットだった。


こんなチビに思っても見ない攻撃をされて悶絶した男はトマコを放り投げて床に這いつくばった。……股間を押さえながら。……女の子になっちゃえ。


放り出されたトマコは椅子の上のシドに落ちて、シドごと倒れてしまう。


ガタン!


「イテテテ。」


「トマコ、私の目隠しを取れ。」


一緒に転んでシドだって痛かったろうに冷静な声が耳に入った。後の二人が股間を押さえる男の心配をしているうちにトマコはシドの目隠しを取った。


「下がっていてくださいよ。」


その声はいつものシドの声には聞こえなかった。







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